「ウインドトーカーズ」 評価★★★
通信暗号兵ナバホ族の活躍
2002 アメリカ 監督:ジョン・ウー 主演:ニコラス・ケイジ、ア
ダム・ビーチほか
134分 カラー
(2002/08/16映画試写会で視聴)
(以下ネタバレ含む 注意)
2002年8月16日 「ウインドトーカーズ」の試写会に行ってきました。太平洋戦争のサイパン島での日米決戦を題材に、通信用暗号
に生きた暗号(ナバホ族)を米軍が使用するという話。日本軍に解読されないよう、前線のナバホ族が捕虜にされそうなときは、抹殺すべしという命令を受けた
軍曹が面倒をみることになる。
大体において、こういう映画は日本軍が悲惨に描かれているだろうことは想像できていた(シンレッドラインで実証済み)ので、そういう観点では見ないよう
覚悟していった。とはいうものの、日本好きなニコラスケイジが主演と言うこともあり、その辺がどう反映されているかも見物であった。
さて、映画は壮大な風景から始まり、スケールの大きな映画(かなりの巨費を投じたとのこと)でありそうな雰囲気を醸し出していた。
と、いきなりその静けさを破り、戦闘シーンに!はっきりいってびっくりするよ。しかし、この時点で、日本軍の戦闘方法になんだか違和感が。やたらめった
ら機関銃を乱射。そんなに機関銃をもっていたのか。白兵戦ではいとも簡単に米兵にやられる。まるで、機会仕掛けの人形のようだ。もっと泥臭い戦い方をする
んじゃないかな日本兵は。
その後、ウインドトーカーズ(ナバホ族)を前線に引き連れたニコラスケイジらの偵察中隊が日本軍サイパン守備隊と戦闘に入るのだが、これまた日本兵が変
だぞ。果たして日本軍はどのように戦ったかはよくわからないが、偽装もしないで野砲や戦車が丸見え。兵隊は白兵戦にもっぱら弱い。弾に向かっていって銃剣
で刺せばいいのに、待っていて撃たれる。しかも、拳銃弾1発で倒れる。そういう意味では戦闘シーンにリアルさが欠ける映画だ。最近の戦争映画はかなりリア
ルにその辺を描くようになってきたのに逆行するかのよう。
極めつけは、無線を奪取するため日本軍陣地にナバホとニコラスが潜入するシーンだが、あやしい日本語で「捕虜だ」とか言って接近するが、すぎばれるぞ。
それと、どうやって背後に回ることができたんだ。それができるなら、全員で攻めた方が早くないか?これは史実なのか?
ナバホの男にはかわいい子供と妻がいる。写真を眺めるシーンなど、これで戦死すればお涙ものかと思いきや、彼は死なない。死ぬのは他の人間(これ以上は
ネタバレなので言わないが)。しかも、死に方もお涙が出る死に方じゃない。じゃあ感動するかというとそうでもない。ラストシーンも含めて、戦友の友情と
か、悲しみとか、怒りとか、この映画は何を求めているかが不在。結局、どこでも泣けず、笑えず、喜べず。
サイパン島に入ってから、ナバホ族らは日本軍と4度の戦闘シーンがあるが、2度目のシーンが終わった段階で、もう映画終わったらという感じをもったほ
ど。
日本軍に関しては、なんら感情を持つことができない作り。ただ、劇中の日本語はしっかり日本語だった(笑)。ニコラスケイジは、やはりちゃっかりと日本
語をしゃべり、いい人ぶりをアピールしてた。
ということで、近年の戦争映画としては良くない出来。映像的にも、音響的にも映画館じゃなきゃだめというものでもなかったので、点数は70点
と厳しい点数とします。
(その後)原作本も読みましたが、訳が悪いのか、もともと悪いのか、あまりにリアリティに欠ける上、アクションものっぽすぎる。あまりに、戦争を知らな
い人間が書いたということがわかりすぎて、読んでいるうちにいやになった。特に、会話のシーンがあまりに劇画調。作りすぎ。まあ、この原作あってこの映画
ということかな。まあ、映画は頑張ったほうかもしれない。 (2003/02/15)
公式HPはこちら
興奮度★★★
沈痛度★★
爽快度★★
感涙度★★
原作翻訳本
ウインドトーカーズ(新潮文庫 552円)。
書評:太平洋戦争中、米国海兵隊は〈日本人に解読できない暗号〉としてナヴァホ族の言葉を使っ
た暗号を採用した。各隊には通信員としてナヴァホの兵士が同行し、彼の安全を守るために精鋭の海兵隊員の護衛がついた。その任務はただ一つ、暗号の秘密を
守ること、いかなる犠牲を払ってもナヴァホの兵士が生きて敵の手に渡るのを阻止すること…。名誉と友情に引き裂かれる、男と男の魂のドラマ