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戦争映画の一方的評論
 
「コマンダンテ 評価★★★ キューバの雄フィデル・カストロ最期の?ドキュメンタリー
COMANDANTE
2003 アメリカ・スペイン  監督:オリヴァー・ストーン
出演者:
フィデル・カストロ、オリヴァー・ストーンほ か
100分 カラー 


 ベトナム戦争映画「プラトーン(1986)」「7月4日生まれて(1989)」、「セイヴィア(1998)」などを手がけた社会派監督オリヴァー・ス トーンが、謎とされてきたキューバ共和国国家評議会議長兼閣僚会議議長だったキューバ革命司令官フィデル・カストロに直接インタービューを敢行した、ド キュメンタリー作品。本編全てが30時間に渡るインタビューで構成され、一度足りと撮り直しのない(やらせのない)、カストロの生の声を聞くことが出来る 貴重な映画である。随所に記録映像等も織り込まれるが、カストロの生涯伝記という物ではなく、2002年のオリヴァー・ストーンの取材インタビュー記録と いったほうが良い。従って、映画としての面白みには欠けるし、キューバ革命から現在に至るまでの歴史的、政治的背景についての知識を多分に必要とするもの であるが、ある程度知ってさえいれば、カストロという独裁政権者の持つカリスマ性、そしてキューバ国民の置かれた境遇と内在する功罪が自ずと浮き彫りに なってくるのが興味深い。ちなみに、本作は「不快」「批判的」であるという理由でアメリカ公開が禁止されたいわくつきである。私個人的には、映画自体はい かようにも解釈できる作りとなっているので、非公開にするほどのものではないと思ったが。
 フィデル・カストロは1926年生まれで、弁護士業の傍ら、1953年親米のバティスタ政権打倒のための武装蜂起をはじめる。以後逮捕や武装攻撃失敗な どを経ながらも、ついに1958年にキューバ革命を成し遂げる。その後、アメリカの経済制裁や武力制裁などを受けたため、ソヴィエトと近しい関係となり、 結果社会主義国家として西側諸国と対立を深めていく。1962年のキューバ核ミサイル危機や中南米、南アフリカ諸国への武力支援など、テロ支援国家として 認定される反面、ラテンの血の明るさから、地上の楽園とも評される謎の国家体制が話題を呼んだ。深刻な経済危機を抱えながら、スポーツや音楽など世界に発 信する力の秘密は、カストロのカリスマ性に負う所も多分にあると言われる。また、1967年革命の盟友チェ・ゲバラがボリビアで処刑されたり、2000年 のゴンサレス少年返還事件なども話題となった。2003年重病となり、弟のラウル・カストロに暫定的に全権を委譲している。

 本作では、忌憚のないオリヴァー・ストーンのインタビューに、髭を蓄えたカストロが質問を遮ることなく答えていく。武装蜂起や革命時の裏話に始まり、 チェ・ゲバラとの関係、対ソヴィエト、特にフルシチョフやゴルバチョフとの関係、さらにケネディ、ニクソンとの対立、ベトナム戦争参加など、推測の域を出 なかった事件の真相をカストロの口から聞き出しているのが凄い。また、カストロの私生活の話にまで話題は及び、好きな映画や女優、さらには結婚関係までが 語られている。だが、これらの会話はオリヴァー・ストーンがインタビュアーとして投げかけているのだが、国家元首として事実を答えることができないことも 当然あるはずで、先の事件の真相にしてもどこまでが本当で、本音なのかは疑わしい。
 聞き手のオリヴァー・ストーンが、時に優しく、時に威圧的に語るカストロの口調や現実主義的な内容に、巧妙に丸め込まれていっているのが良くわかる。い つの間にか、質問事項ですらカストロに操作されているような気までするのだ。カストロの語っている内容については、話半分程度で聞いておくべきであろう が、本作で注目すべきは、むしろカストロの語り口調の奥にあるカリスマ性とキューバの未来にあると言えるだろう。
 カストロは、インタビューの中で自らを共産主義者ではないと言っており、国家体制を社会主義化したのはアメリカに対抗するために必要だったと表現してい る。彼の言う理想の新しい秩序は未だ完成を見ておらず、インタビューの中でもこれまでの政策が正しかったとは言っていないのが興味深い。奥ゆかしくも「他 のラテンアメリカの国よりは多くのことをしてきた」というに留まり、世界の未来について「早く新しい秩序に到達すべきだ。到達が遅れれば、人類は滅亡の危 機に陥る・・」「軍事力で平和は訪れない」といった悲観的な発言は、カリスマ的な人物とは思えないほど現実的だ。
 革命家というのは、高い理想と強い意志、そして時には鬼のような残虐性が求められるものだ。盟友だったチェ・ゲバラはむしろその傾向が強い人物のように 思えるが、カストロの場合はいずれもが実に薄い、普通のおじいさんといった印象が強い。インタビューの端々に、やや疲れたような敗者的な発言が印象的だっ たのだが、実はカストロのカリスマ性はここにあるのかもしれないと感じた。無神論者であるカストロは、極端なまでに現実主義者なのであり、無駄な理想や片 意地を張ることの無意味さを知り尽くしているのかもしれない。
 唯一、インタビューの中で知りたかったが出てこなかったのは、側近体制のこと。無神論者で自らを「自分自身の独裁者であり国民の奴隷」と呼ぶ彼は、生涯 誰にも相談したことがない、と言い切る。世界各地の独裁者は、ほぼ例外なく疑心暗鬼となり、側近の粛正が始まっていく。謎に包まれるカストロの場合はどう であったのか。本作ではカストロの残虐性については一切触れられていないが、生涯孤独の男がここまで国体を維持できた背景に何があるのか、気になる点であ る。

 ドキュメンタリーとしては、恣意的な点は感じられず、ドキュメンタリーとしてあるべきセオリー通りの良作。だ が、冒頭にも書いたが、映画としてはストーリー性、映像ともども面白みはないに等しい。単に伝記を期待した人には、100分が恐ろしく苦しいものとなるだ ろう。本作は、世界に名だたるカリスマ的独裁者の生声を聞き、彼のカリスマ性に魅入られるか、はたまた騙されないぞと言動の裏を探るか、そこに楽しみ方が あると言ってもいいだろう。はっきり言って、オリヴァー・ストーンは骨抜きにされちゃった感はあるけれど(笑)。

興奮度★★★
沈痛度★

爽快度★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

なし

(2007/06/10)

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