戦争映画の一方的評論
 
「Uボート最後の決断 評価★★★ Uボート内での独米兵士の命をかけた協力 
IN ENEMY HANDS U-BOAT
  2003 アメリカ 監督:トニー・ギグリオ
出演:ウイリアム・H・メイシー、ティル・シュバイガー、スコット・カーンほか  
98分 カラー

 潜水艦映画にはずれなし!という触れ込みでの公開であったが、いい意味で取れば「はずれではないね」、悪い意味で取れば「えーっ こんな程度」という出来具合。潜水艦映画にもいろいろあるけれど、アメリカ制作ものはどうしてもある一線を超えられない感がある。
 パンフでは、この映画はアクションやスペクタルではなく、ヒューマンドラマであるとも書いてあるが、どちらかというとアクション的要素が強い。むしろ、 ヒューマンドラマ的な部分は要素としてはあるのだが、ストーリーや描写で十分に生かし切れていない。従って、アクションやサスペンス的な部分に目が行って しまうのだ。まあ、それはそれで楽しめるのだが。
 映像的には最近の映画らしく、海中の戦闘シーンなどにCGを用いている。それなりの出来だが、水中戦闘で魚雷があんなに敵潜水艦に当たるのはいかがなも のかとは思うが。艦内の映像は特筆すべきほどではなく、これまでの潜水艦映画並と言える。しかし、ドイツ軍兵士はきちんとドイツ語を話しているし、艦内の 行動シーンで手抜きらしいミスはない。
 問題はやはりストーリーであろう。アメリカ映画としては合格点なのだろうが、ドイツUボート士官の考え方や行動という点ではいささか違和感が残る。 ちょっとそれはあり得ないだろうという筋書で、アメリカ人に都合のいいように話が展開していくのも、アメリカ至上主義的な雰囲気がしてやや不愉快。ドイツ 兵は色々と妥協していくのに、アメリカ兵は最後まで妥協しないのもいやな感じ。また、ヒューマンドラマということで、登場人物の心理描写が大事となるが、 この点もやや甘さを感じる。ドイツ兵の心情の変化などもう少し、個人を掘り下げても良かったのでは思う。それにしても、生き残るための理由が、ドイツ兵は 部下の命を救いたいためと言うのに対して、アメリカ兵は奥さんのためというのも、さすがアメリカンスピリットって感じです。
 登場する兵器はもちろん潜水艦だが、U−429が主役艦となっている。ただし、ほとんどがCGであり実写部分はないと思う。映像からはVII-C型と思 われ、途中登場する同僚艦も劇中で「VII-C型」と呼ばれている。米軍側の潜水艦「ソードフィッシュ」のほうは登場時間がほとんどなくよくわからなかっ た。このほか、アメリカ軍の駆逐艦が随時登場する程度。

(以下ネタバレ注意)
 1943年の5月。連合軍の徹底的なUボート対策により、ドイツ軍Uボートにとってはそれまでの輝かしい戦績から一気に厳しい暗黒の時代へ落ち込んでいく転機となった。
 アメリカ海軍の潜水艦「ソードフィッシュ」は新任艦長ランド少佐、チーフのネイトらが乗り込んで出撃する。しばらくは訓練に明け暮れるが、ついに敵U ボートに遭遇。見事撃沈するが、付近にいたもう一隻のU-429に撃沈されてしまう。U-429の艦長ヨナスは生き残った8名のアメリカ兵を救助するが、 部下らはそれに不満を抱く。
 運悪く、アメリカ兵が疾病していた伝染病「髄膜炎」が次第にドイツ兵にも伝染し始め、多くの兵士が命を落とし始める。加えて、遭遇した米駆逐艦との一戦 でアメリカ兵捕虜が反乱を起こし、逆に駆逐艦に襲撃されるはめになる。残り燃料も少なく、兵員数も減った中、ついにヨナス艦長は、アメリカ軍チーフのネイ トに和議を持ちかける。足りなくなった兵員の代わりをアメリカ兵が務め、アメリカ沿岸まで行ってから潜水艦を廃棄してアメリカ捕虜となるという作戦だ。部 下の命を救うためだと説く。アメリカ兵らはなんとか納得するが、ドイツ兵の一部が反乱。ヨナス艦長は刺されて死亡してしまう。しかし、艦長の意をついだ副 長のクレマーがネイトと協力することとなる。
 沿岸まで達したとき米駆逐艦に遭遇。浮上して降伏するつもりだったが、反乱分子がドイツ本国に通報したために、U-429を撃沈するためのUボートが接 近。米駆逐艦、Uボート2隻の三つ巴の戦闘となる。追撃のUボートは米駆逐艦に撃破される。なんとか米駆逐艦との交信に成功し、救助(降伏)するが、駆逐 艦からの「潜水艦を捕獲せよ」との指令をネイトは無視して沈没させる。死んだドイツ軍艦長との約束を守るためだった。

(2005/02/25)

興奮度★★★★
沈痛度★★★
爽快度★★
感涙度★★

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