戦争映画の一方的評論
 
「マスター・アンド・コマンダー 評価★★★ ナポレオンに対抗する少年士官候補生の活躍 
Master And Commander
2003 アメリカ 監督:ピーター・ウィアー
出演:ラッセル・クロウ、ポール・ベタニーほか  
139分 カラー

 英軍と仏軍(ナポレオン軍)の対立が激しい1800年代初頭の海戦アドベンチャー。パトリック・オブライエンの海洋冒険小説「オーブリー&マチュリン」 の中の一節を映画化したものだ。特撮も活用し、近年の映画らしく迫力ある映像が魅力的。深夜に自宅の小テレビで見たため音響は判断できぬが、伝聞に寄れば 映画館では腹に響く大音響であったとか。激しい戦闘と、相次ぐ死者にも関わらず、勇敢な少年を初めとする艦長、士官、水兵の活躍ぶりは、戦争映画の悲壮感 はなく、むしろアドベンチャー活劇的なノリである。単に、海戦にとどまらず、医者で博物学者のスティーブン医師の行動を随所に織り込むことで、単調な流れ を断ち切っているのも好感。公開当時のキャッチコピーで、いかにも戦場にかり出された少年兵というお涙頂戴型のように紹介されていたが、そういったことは 全くない。海の男気あふれるガチンコ映画なのであった。
 戦闘シーンでは、大砲による弾そのものの破壊力と白兵戦に尽きる。また、帆船ならではの繰帆技術やチェイスも見物。
 
(以下ネタバレ注意)
 1805年、イギリスはナポレオン率いるフランス軍と戦っていた。南太平洋の制海権も重要な争点であり、イギリス海軍の老艦サプライズ号の物語である。 イギリス軍はナポレオン軍との戦いで疲弊しており、若干12歳の士官候補生までも実戦に駆り出す始末であった。しかし、伝説の名艦長ジャック・オーブリー を筆頭に、若き士官候補生、水兵共に士気は盛んであった。
 ある霧の深い日に、サプライズ号はナポレオン軍の武装船アケロン号に待ち伏せされ、甚大な被害を受ける。アケロン号は砲を20門も持つ最新鋭船であっ た。劣勢の身を霧の中になんとか逃げ切ったサプライズ号だが、この戦いで12歳の士官候補生ブレイクニーは片腕を失ってしまう。
 応急修理を施したサプライズ号だが、二度アケロン号に急襲される。今度は士官候補生の捨て身の活躍で何とか逃げ、逆に虚を突いて逆襲をかける。しかし、 折りからの嵐で船が損傷し、船員の一人が海上に流されてしまう。水兵らは当直士官ホロムの無能さを罵り、気の弱いホロムは海上に身を投じてしまう。艦長は 海上での上下の規律を厳しく叱責する。
 南太平洋の島々で停泊していたサプライズ号だが、軍医で博物学者のスティーブン医師は未知の生物に興味津々であり、上陸を望んだ。ブレイクニーも協力的 であったが、アケロン号追撃に燃える勇敢な艦長は出航を命じる。しかし、出航直前に事故でスティーブン医師が重傷を負う。友人でもある艦長はアケロン号追 撃をあきらめ、医師の療養のため上陸する。
 上陸して生物の収集をしていたスティーブン医師は、反対の海上にアケロン号の姿を見つける。ただちに、サプライズ号は出航し、民間貿易船に偽装してアケ ロン号の海賊行為を待った。見事罠にかかったアケロン号に船長や士官候補生らは乗り込み、拿捕に成功する。しかし、航海長や船匠、士官候補生らが戦死す る。それでも意気揚々とサプライズ号は航海を進めるのであった。
 
 艦長は豪快で、勇敢な伝説的男。士官候補生や水兵らはそんな船長を信頼している。しかし、若干12歳の士官候補生らと老練の水兵との間には若干ぎくしゃ くとしたものがある。しかし、いざ戦闘となれば、士官も水兵もなく勇猛果敢に戦う兵士達。そんな姿を軽快な冒険タッチに描いている。
 戦史的に見ると、ほとんど背景が描かれていないうえ、ナポレオン軍が海賊まがいに描かれていたりと、興味本位の構成となっている。この時代の海戦を描い た映画はこれまでにほとんどないので、そういう視点では新鮮ではあるが。登場する備品や機材等はかなり検証したとか。それだけでも見物かも知れない。
 
(2004/10/30)

興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★★★
感涙度★

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