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戦争映画の一方的評論
 
MY FATHER マイ・ファーザー 死の天使 アウシュ ヴィッツ収容所 人体実験医師 評価★★★ アウシュヴィッツ収容所戦犯 医師ヨゼフ・メンゲレの息子の苦悩
MY FATHER, RUA ALGUEM 5555
2003 イギリス・ブラジル・ハンガリー  監督:エジディオ・エローニコ
出演者:トーマス・クレッチマン、チャールトン・ヘストン、マーレイ・エイブラハム
ほ か
112分 カラー 

 

  ドイツ軍武装親衛隊SSの医官大尉だったヨゼフ・メンゲレは、ドイツ軍のユダヤ人収容所アウシュヴィッツにおける、遺伝学実験、特に双子の 子供に対する 常軌を逸した残虐な人体実験を行ったことで知られ、重要戦犯として手配されながらも死ぬまで南米の地を転々として逃げ回った実在の人物である。その異常な までに固執したゲルマン民族優位性を証明するための人体実験により、表題にもある「死の天使」と呼ばれるに至る。
 本作は、その息子ヘルマンの告白等を元にペーター・シュナイダーが小説化したものであり、多少の脚色はあるが大筋としてはノンフィクション仕立てと言っ ていいだろう。ヘルマンは父メンゲレの南米逃亡後もドイツに住み、級友や教師からのいじめに会うなど不遇の生活を送り、その後父親に会うために 南米に移る。そのメンゲレは国際的な捜査にもかかわらず、1979年に海水浴中の心臓発作で死去するまで、約35年にわたって逃亡に成功するのだが、余り に謎が 多かったため、その事故死には疑問が投げかけられ、1992年の遺骨DNA鑑定という事態にまで至ることとなる。当時の日本でも新聞記事になった事件であ る。ちなみに、こうしたナチ戦犯の逃亡を手助けした 組織として「オデッサ」の存在が知られており、本作でもその一端が見え隠れする。

 本作は、メンゲレの悪行たるアウシュヴィッツ収容所の惨劇が主題ではない。多少の記録映像等による虐殺シーンも含まれてはいるが、むしろメンゲレと息子 ヘルマンの人間性に重点を置いたヒューマンドラマが主体となる。ほとんど会ったこともない卑しむべき罪人の父親と再会し、自首を促すべきなのか、父を理解 するべきなのか、という葛藤がヘルマンを悩ませ続ける。ゲルマン 民族至上主義・進化論淘汰主義の思想に凝り固まった父メンゲレと、ユダヤ人虐殺の反省史観の上に育ったヘルマンの間にある大きな溝。お互いに理解しようと 試みるが決し て歩み寄ることのできない絶望感。そして憎しみや愛情の入り交じった切っても切れない親子の絆と言ったものが、複雑に絡み合ってくる。メンゲレの行為が悪 行であったか否か、ヘルマンは父親を赦すべきか否か、などといったごく普通のヒューマンドラマにありがちなレベルをはるかに超越している。
 「私の仕事を理解してくれるとは思わない。しかし、正当化するつもりもない」と言いつつも自己の理論から決して脱却できない父親メンゲレ。父親を理解し ようと努めるも、戦後史観の呪縛から逃れられない息子ヘルマン。一筋縄ではいかない断絶があるが、むしろそこにあるのは、宿命とか血の絆といった不可避な ものであり、それにどのように対面していくかという過程でもある。いずれにしても、余りに深遠で複雑なこの親子関係を理解することは、我々視聴者には到底 不可能なことであると思われ、単純化されている映画ですら実に難しい内容となっている。
 映画はサスペンス調に謎解きモードで展開していくが、実話であり実際はもっと複雑なものであったことを考えると、決して謎解きは明快ではない。メンゲ レ、ヘルマンのどちらに心情移入することも難しく、それだけに映画としての盛り上がりや完成度という点では劣るものがある。一緒に見ていた家内などは、メ ンゲレの死の裏にまだ大どんでん返しがあるだろう、とサスペンスドラマ的深読みして期待していたほどだったが、どうやらそんなことはないようだ。あくまで ノンフィクションに こだわった作品と言っていいのだろう。

 映像は現代、近過去、遠過去の場面によって彩度を落とした映像で違いを示しており、それなりにわかりやすい。ただし、かなりの頻度で現代、過去が行った り来たりするのでちょっと慌ただしい感がある。時代背景等の知識がなくても理解は出来るが、やはりユダヤ人問題、オデッサの存在くらいは知っておいたほう がいいだろう。
 ロケはブラジルがメインでハンガリーでも行われているようだ。俳優には「戦場のピアニスト」のクレッチマンや「ベン・ハー」のヘストン、「アマデウス」 のマーレ イ・エイブラハムなどの大優を用いてはいるが、大がかりなロケという風には見えない。役者で魅せようという意図がはっきりしている。それぞれの役者の 表情は見事で、演技に深みがあるのはさすがだ。この辺りに安物作品では出ない重みを感じる。

 題材が題材だけに、直接我々に問いかけてくるような命題は無いに等しい。共感できる場面も少なく、糧となる内容でもない。しかし、実話が持つ人生の重み と、波瀾万丈の凄みだけはひしひしと伝わってくる。時代に翻弄された人間の脆さというのものを実感できる佳作である。

 余談だが、映画中のメンゲレの墓の隣は日本人となっている。「YANIRO OGATA KIOTO1926 MANAUS1976」とあるので京都出身のオガタヤニロウさんという設定なのだろう。


(参考) ヨーゼフ・メンゲレ(wikipedeia)
      オデッサ(wikipedeia)

興奮度★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★

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 (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1985年6月、アマゾン州マナウス市で、あるナチ戦犯の墓が暴かれる。それはアウシュ ヴィッツ収容所の医師で死の天使と呼ばれたヨゼ フ・メンゲレのものであり、顧問弁護士とオーストリア人夫妻の自宅で、墓の場所を示唆する手紙が発見されたことが切っ掛けであった。そこに立ち会っていた メンゲレの息子ヘルマンは、取り囲むユダヤ人群衆から非難の声を浴び、老婦人に「犯罪者の息子も人殺しだ」と首をつかまれるのだった。
 ユダヤ人原告団の弁護士であるミンスキーは、メンゲレの死と遺骨が本物かどうかに疑問を感じており、ヘルマンに真実を語るよう迫る。何故今頃公表された のか、1979年に海水浴の事故で死んだとされる証拠など、謎が多いのだ。一部にはメンゲレがまだ生きていると見るものもいた。しかし、ヘルマンは頑なに 口を閉ざす。
  ホテルに戻ったヘルマンは、ホテルを取り巻く群衆の罵声に恐ろしさを感じ始め、ミンスキーを呼び、8年前に父に再会した時からの話をしはじめる。
 
 1976年5月29日、ヘルマンは南米ブラジルに逃亡中の父ヨゼフ・メンゲレと面会するために、ブラジルへ旅立つ。父メンゲレはユダヤ人収容所アウシュ ヴィッツの医師であり、残虐な人体実験をした罪で問われていたが、支援組織により南米に逃亡中の身であった。
  幼少時からいじめを受けて育ったヘルマンは、父の罪の重さに苦しみ、父親の口から真実を聞き出してみたくなったのだ。母や伯母の制止を振り切ってブラジル へ向かったヘルマンは、アマゾン州マナウス市のスラム街アルゲン通りで、オーストリア人夫妻の支援により、ひっそりと暮らす父を見て驚く。ナチ戦犯として もっと威厳に満ち、悪 玉と想像していたヘルマンにとって、年取った実際のメンゲレは近所の子供にも優しい普通の老人だった。父を糾弾し、自首を促そうとまで考えていたヘルマン だったが、父の姿を見てそれを切り出すことが出来ずにいた。頑なに自らの行為が間違いではなかった、「誓って言う。一人も殺していない」と主張する父メン ゲレと、メンゲレが極悪犯罪人と教育されてきたヘルマンの間には深い溝があった。ドイツ民族の優越感のために戦い、望んで親衛隊に入った父メンゲレのこと を理解しようにも理解できない。だが、ブラジルで近所の子供の病気を治し、慕われる父の姿も真実である。次第に、ヘルマンは父親の言葉(声)に苦しめられ 始める。メンゲレに銃を向けてもみるが、撃つ事は出来ない。
 しかし、ヘルマンが婚約者の話を父メンゲレにした際に、ゲルマン民族至上主義の言動に怒りが爆発する。ヘルマンは警察署に通報しにいくが、結局話せな かった。そこで、ヘルマンはドイツの親友ロベルトを呼び寄せる。ロベルトは親身に相談に乗ってくれるが、父親メンゲレの存在を知り、写真を撮り警察に通報 しにいってしまう。 ところが、メンゲレの支援者たちの工作で、逆にロベルトが逮捕される。ヘルマンは父親を救おうと遠くに逃げようとするが、父親の白人 種至上の考え方に反意を感じ、結局ブラジルを去る事にする。
 ロベルトは解放されたが、2年後、メンゲレが海水浴中に溺れて死んだとの報を受ける。オーストリア人夫婦から遺品を受け取ったヘルマンは「博士の支援者 を守らねばならない」と言われ、封印を決意した。

 話し終わったヘルマンに、ミンスキーは、70歳代のメンゲレが何故海水浴を一人でしたの か、溺れたメンゲレを女一人で引き揚げられるのか、棺や墓がすぐに用意されていたのは何故か、そして墓の場所を示唆する手紙が家に残されていたのは何故 か、などの疑問を提示し、ヘルマンがメンゲレの余生を確保するための偽装ではないかと疑う。
 そこに、電話が入る。発見された骨はDNA鑑定の結果メンゲレのものと確定された。
 改めてヘルマンがミンスキーに感想を問う。ミンスキーは、死んでもなお一族の絆があり、罪を背負って生きていくヘルマンに対し、自分がヘルマンの立場に なることは耐えられないと述べる。ヘルマンは、父の遺品を全てメンゲレに預けて去っていく。

(2007/02/01)

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