戦争映画の一方的評論
 
「ブラックバード・ライジング 評価★★☆ コソボの国連平和維持のイタリア軍 
SOLDATI DI PACE
2003 イタリア 監督:クラウヂオ・ボニヴェント
出演:
ジョルジョ・パソッティ ほか  
119分 カラー

 
  イタリアのテレビ用映画で、コソボ紛争後の国連平和維持活動に出動したイタリア軍の話。レアな題材を取り上げた興味深い作品だったのだが、相変わらず DVD製品化パッケージのコピーに騙された。大体において、「ブラックバード・ライジング」などとはいかにも「ブラックホーク・ダウン」を連想させるタイ トルだが、内容的には共通点はない。また、パッケージコピーでは「・・・ある日、解放軍の武装解除に向かった部隊は、ゲリラの襲撃を受ける。やむなく反撃 に転じた彼らは、混乱と殺戮の泥沼に足を踏み入れていった・・・」などと、いかにも激しい戦闘を伴ったかのように想像できるが、実際にはたいした戦闘はな く2名が戦死した程度。実際、そんな大規模な戦闘があったらもっと新聞等を賑わしているはずだものな。
 ということで、期待ほどの戦闘アクションはない。そのうえ、コソボ女性とイタリア兵の恋愛まで取り入れているので、何を描きたかったのか主眼が不明瞭。 登場人物の顔がとてもわかりにくいこと、映像のカット割りが良くないこと、個々エピソードの関連性が薄いことなど、映画としては期待はずれの部類か。
 ブラックバードとは、イタリア軍がヘルメットにつけている黒い鳥の羽のこと。現代においてもイタリア軍はちゃらちゃらしたイメージを払拭し切れていない のが笑える。あと、映画はイタリア語なのだが(当たり前だが)、なんだか軟派なイメージが強くて、戦争映画にはかなり違和感を感じてしまう。
 
 と、酷評を続けたが、戦争映画として興味深いのは登場する兵器類だ。軍の協力を得たと思われ、かなりの実機が見える。航空機ではC-130ハーキュリー ズ輸送機、ヘリコプターではUH-60ブラックホーク(改)、バートルCH-47チヌークという米製のほか、アグスタ・マスタングというイ タリア製対戦車・偵察ヘリも登場するのがレア。地上車輌ではドイツ製の若干の増加装甲を施したレオポルトI戦車が登場する。イタリア製最新戦車アリエテの 姿は見られなかった。イタリア製では8輪式105mm砲を搭載したB1チェンタウロ偵察装甲車が登場する。こうした、イタリア製兵器の姿を 見ることができただけでもヒットだ。
B1チェンタウロ偵察装甲車 アグスタ・マスタング

興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★★
感涙度★


(以下あらすじ ネタバレ注意)
 
  ヘルメットに黒い鳥の羽をつけたイタリア軍は、1999年6 月のコソボ紛争停戦を受け、国連平和維持軍としてコソボに駐留することに。任務はコソボ系アルバニア人のセルビア人武装勢力からの保護であった。
 新兵のデブラシは、恋人から離れることが嫌で、派兵を嫌がっていたのだが、モルティ少佐率いる先遣隊員として派兵されてしまった。
 1999年6月12日コソボ、マケドニア国境地帯にイタリア軍は、兵士1,750人、レオパルトI戦車等600台の車列で進軍。その途中でセルビア人武 装勢力「灰色のオオカミ」による殺人、レイプ、拷問の惨劇が所々で行われており、アルバニア系民間人の救出を図りながら進む。
 イタリア軍はコソボの町ぺーヤに駐屯し医療活動に従事することとなる。イ タリア軍の通訳を務める女性の故郷でもある。デブラシはイタリアの恋人マリーナに電話をするが、マリーナは他の男と寝ていた。やけになったデブラシは喧嘩 など問題を起こす。
 アルバニア人で構成されるコソボ解放軍の武装解除を進める中、セルビア人武装勢力の襲撃を受け、イタリア兵2名が戦死。通訳の女性も撃たれて負傷する。 看護するデブラシは次第に彼女に惹かれていく。
 コソボ解放軍の司令官は、イタリア軍の言うことを聞き入れず、民間人から金を巻き上げるなどの悪事をはたらいた上、ゴルラツのセルビア人孤立領土の襲撃 を図る。襲撃でセルビア人の子供らが犠牲となる。復讐を試みようとするセルビア人武装勢力に対し、イタリア軍の隊長はボスとの面会を求め、調停を図ろうと するのであった。
 一方、通訳の女性の妹エスマとセルビア人のミロシュは恋人同士であった。地雷除去活動に従事するエスマの危機に、ミロシュが駆けつけ、二人は人種の憎し みを超えて結婚するのであった。
 セルビア人武装勢力のボスはついに、イタリア軍の説得に折れ、武装解除を受け入れる。が、それも束の間、セルビア人ボスは部下に射殺されてしまうので あった。
 デブラシはもはや帰国したい意志はなく、コソボにとどまる決意を持つのであった。

(2005/04/11)

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