戦争映画の一方的評論
 
ティアーズ・オブ・ザ・サン」 評価★★☆ ナイジェリア内戦下でのシール救出作戦
TEARS OF THE SUN
2003 アメリカ 監督:アントワーン・フークワ
出演者:ブルース・ウィリス、モニカ・ベルッチ、コール・ハウザーほか
118分 カラー


 内戦下のナイジェリアを舞台に、アメリカ海軍特殊部隊シールの8名がアメリカ人女性医師を内戦下から救出する作戦を描いたアクション映画。内容はもちろ んフィクションだが、前半部は意外にもシリアス、ヒューマンドラマタッチの雰囲気がある。ナイジェリアに限らずアフリカ内戦は部族間の抗争という側面で、 血を血で洗うような凄惨な虐殺劇が知られている。本作もそうした社会的側面を重視したタッチなのかと思っていたが、中盤以降からはブルース・ウィリス主役 のアクション映画に変貌した。一部評論には、人間性を問う問題作などとする向きもあるが、前半部の凄惨なシーンはともかく、結果的には単なるアクション映 画でしかない。本編視聴中から、本作の位置づけはどちらなのだろうと悩まされた。
 はっきり言って、ブルース・ウィリスのための映画であり、彼の個性が際だちすぎる。シールの隊長らしい強面、強靱さは出ているが、命令完遂か、人命優先 かに揺れ動く人間的な表現力にはいささか疑問を感じる。あまりにお手本調で完璧すぎるのが鼻につく。また、救出される女性医師役のモニカも豊満で美しすぎ る顔立ちが、逆にシリアス感を削いでいる。シールの7名の部下は、軍人らしい良い演技だった。しかし、ブルースに食われていて、その個性が全く表現されて いないのが残念。もっと性格付けをしてあると深みが出ただろうに。ちなみに、語学スペシャリスト、シルク役の役者は本物の元海兵隊員だそうだ。
 本作の舞台はジャングル戦が主になっている。撮影はハワイで行われたそうだが、なんだかアフリカぽくはない。ただ、ナイジェリアのイメージを知らないの でなんとも言えないが。
 戦闘シーンはまあまあの部類で、特に激しいわけでもなく、臨場感があるわけでもない。反乱軍の追跡を受けるシーンもさほど緊迫感もない。迫撃砲やロケッ ト砲?の攻撃シーンも今ひとつ。ただ、唯一リアルだったのは空母シーン。本物の原子力空母ハリー・S・トルーマン(CVN-75)を借りての撮影で、本編 中も実名登場する。甲板を離陸していくF−18ホーネットが格好いい。対地攻撃をするホーネットの編隊飛行も素晴らしいけど、実写かな?。ただ、画像中に 写るホーネットは尾翼マークがAF(VFA-201or204)なので、ト ルーマン艦載機ではなく、Reserve ForceのVFA-201or204を用いていることがわかる。また、海軍ヘリのシーホークや陸軍ヘリのブラックホークも登場する。全て海軍の協力だそ うだ。
 

興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★
感涙度★


(以下 あらすじ ネタバレ注意)

 ナイジェリアは内乱でヤクブ将軍の反乱軍が全域を掌握。国連や各国大使館員は国外退去を始める。一方、イボ族は反乱軍に虐待され、各地で虐殺が行われ、 難民となるものも出てきていた。
 そんな中、アメリカはナイジェリアの布教センターに残っていたアメリカ国籍の女性医師リーナ・F・ケンドリックと神父、尼僧らの救出作戦を、アメリカ海 軍特殊部隊シールに命じる。隊長のウォーターズ大尉は部下の7名とともにナイジェリア国内に降り立つ。
 布教センターには現地人傷病者70名がおり、女性医師ニーナは彼らを置いていくことを拒否する。空母のロード大佐と連絡を取った大尉は、ニーナに歩ける 者28名を連れていくことを伝える。神父と尼僧は残ることを希望する。一行はヘリによる回収地点までの12kmの道を急ぐ。しかし、途中で反乱軍兵士の小 隊に遭遇。息を潜めてやり過ごすが、遅れていた1名は間一髪のところで大尉が殺害する。もはや、一刻の猶予もない。
 ヘリの回収地点には2機のシーホークがやってきた。しかし、大尉はニーナ医師だけを乗せて飛び立つ。もともと、大佐の命令はニーナ医師だけだけであり、 現地人は置き去りにするつもりだったのだ。怒り狂うニーナだったが、一行は飛行途中に眼下に虐殺されまくった布教センターを目撃する。大尉は悩んだあげ く、ヘリを元の地点に戻すのだった。
 大尉は命令に違反し、現地人の婦女子12名をヘリに乗せ、シール隊員とニーナは地上を歩いて脱出することとする。カメルーン国境まで60km。ところ が、一行の後を反乱軍の小隊が追いかけてくる事に気づく。何故つけてくるのか訝しがる大尉だったが、ニーナは知らないという。
 途中で反乱軍の虐殺現場に出会う。大尉は交戦禁止の命令を無視して、部下に反乱軍殲滅の命令を下す。子供や女性への残酷な虐待現場に一行は呆然とする。 レイプはもとより、女性の乳房切除など人とは思えない残酷さだ。
 正確に追ってくる反乱軍に疑問を感じた大尉は、身体検査を命じる。すると、ギデオンという男が発信器を持っていることが発覚。家族を人質に取られていた のだ。さらに、その原因が一行の中に混じっていた元大統領の息子アーサーの存在であったこともわかる。空母のローズ大佐は内政干渉に当たるとして、大尉に アーサーの保護を止めさせるが、大尉は聞こうとしない。
 反乱軍は一行がカメルーン国境に逃げると予測し、待ち伏せを行った。大尉ら一行は待ち伏せ攻撃で甚大な被害を出す。偵察のスペシャリスト、スローが撃た れ、スナイパーのフリーなどが戦死する。アーサーやニーナらはなんとかカメルーン国境にたどり着く。そこには難民が列をなしていた。反乱軍兵士との交戦に 取り残された大尉は、自分も巻き添えになる危険を冒してホーネットの対地攻撃を要請する。ホーネットの対地攻撃は反乱軍を一掃し、無数の銃弾を受けた大尉 らはようやくカメルーン側に越境することができたのだった。

(2006/1/1)

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