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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「クリミナル・トレンチ 〜地獄の塹壕〜 評価★★★☆ イ・イ戦争、イラン軍塹壕 内での兵士の確執
LEFT FOOT FORWARD ON THE BEAT
2004 イラン  監督:カゼム・マ・アスーミ
出演者:ハミッド・ファラネシャド、ホセイン・マハジョウブ、アリ・アーマディ
ほか
76分 カラー 

 
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 イランが製作した映画と言うだけでレアな作品だが、本作は1980年から1988年にかけて勃発したイラン・イラク戦争を題材にした、ヒューマン系シリ アス戦争映画である。製作経緯等は良くわからないが、世界的に孤立するイランの映画事情を知るうえで、なかなか興味深い。国策面等から映画に対する検閲も あるそうだが、本作は戦争に対する厭戦的な内容も含まれていたり、当時の軍首脳部の無能さを示唆するシーンもあったりと、厳しい検閲という印象はない。

 イラン・イラク戦争は1980年9月22日のイラク側からの奇襲に始まり、1988年8月に和平停戦が引かれるまで行われた戦争である。単にイラン・イ ラク両国だけでなく、直接、間接的に中東、ヨーロッパ、アメリカの国々が関与した複雑な戦争であった。イランは1979年にホメイニ師のもとイスラム革命 が成立し、イスラムテロの活性化を危惧したヨーロッパ、アメリカ、ソヴィエト、クウェート等がイラクを支援した。一方孤立無援に見えたイランだったが、現 在も蜜月な関係を持つ北朝鮮が兵士・武器を供与し、イスラエル、リビア、シリアといった国が武器供与を果たした。
 一説には両国で150万人以上の戦死者が出るなど、近代戦としては異例の死者数を誇った。その戦闘の多くは砲撃、無差別空爆、砂漠での塹壕戦であり、壮 絶なものであったと想像できる。

 本作は、劇中に「メフラーンの解放」という言葉が出てくることから、1983年8月の第3次ヴァル・ファジール作戦当たりを題材にしているものと思われ る。ここは、イラク国境近くのイラン領で、開戦後イラクが占領を続けていた街で、近郊の高地では塹壕戦が繰り広げられたことで知られる。
 
 シリアスな戦争ドラマだが、何と登場人物はたった4人。しかも、ロケ地は塹壕のみという、超お手軽作品だ。資金的にはかなり安価に仕上がっていると思わ れるが、意外にチープさは感じない。映画の主眼に置かれているのは、イラン兵の戦場心理とその変化である。イラク軍の砲撃から生き残った隊長(少佐クラ ス?)と二人の兵卒の問答が、かなり長時間にわたって繰り広げられる。やや眠たさを催すような会話だが、職業軍人である隊長の使命感、死の恐怖と戦闘の無 意味さに狂乱する兵、その仲立ちを果たす兵。その会話の背景には、言葉とは裏腹な兵士の深層心理が見え隠れする。後半の劇的な展開も、全て前半部が伏線と なっている。それぞれの兵士の心情変化が、心痛いまでに伝わってくる。
 そして、たった一人敵国イラク兵も登場する。決して憎き敵国兵という描き方ではない。いささかベタなストーリーだとはいえ、ここまでの戦場心理描写を描 けるとは、イラン映画も捨てたものではないと唸らされる。それも、激しい消耗戦を戦った記憶が新しいからなのだろうか。

 全てのシーンが塹壕なのだが、イラクとイランが対峙する塹壕中間点に、廃棄された車輌が映っている。一台はアメリカ製M4シャーマン戦車。もう一台はソ ヴィエト製BMP−1歩兵戦闘車らしきものが登場する。このあたり、西側、東側陣営が入り乱れる複雑な戦争であったことを感じさせる。銃撃戦はほんの1回 のみ。あとは迫撃砲着弾がちょっとだけと、戦争映画らしい激しさはほとんどない。それでも、いかにも戦場らしく感じるのは、圧迫感のある塹壕と、乾燥して いる砂漠の苦しさが良く出ているからだろう。

 音楽はやや耳慣れないタイプ。中東風とまではいかないが、新鮮だ。役者はなかなかの演技派で、やや絶叫がうるさく感じられるが、若い兵士の「左足よ 出 てこい!」と繰り返し叫ぶシーンは実に印象的。全般的にはアメリカ映画風の印象を受ける。
 イラン映画という特別な特徴も感じられないが、失礼ながら、イランでもこうしたまともなヒューマン系ドラマを作ることが出来るのだ、と感銘を受けた。 


興奮度★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)


 イラク軍と対峙するイラン軍の塹壕。足を負傷した若き兵卒メヘラン、その隊長ヤーヤ。部隊からは ぐれた中年兵卒ハーフェスの3名がいた。メヘランは足を負傷し、死への恐怖に絶叫し、部隊を全滅に追いやったヤーヤ隊長を責め立てる。ハーフェスはそれを なだめるが、ヤーヤ隊長はそれに怒ることもなく、静かに任務に従事する。
 いつイラク軍が攻めてくるかと言う緊張感の中、ヤーヤ隊長は死んだ兵隊の死体を集めて埋め、軍識票を集める。軍の命令とはいえ、大勢の部下を殺してし まった自責の念を感じているのだ。
 メヘランは傷のために意識を失う。ヤーヤ隊長は壊疽を起こしたメヘランの足を切断する。意識が戻ったメヘランは激怒し、足を返せと絶叫する。ハーフェス は命があるだけましだと説得し、ヤーヤ隊長も生かすためだと答える。
 そんな矢先、イラク軍塹壕から白旗とともに一人の兵がやってくる。中間地帯にある水を汲むためだ。銃を構えるヤーヤの脇をハーフェスも水筒をつ携えて水 場に行く。ハーフェスとイラク兵は言葉を交わし、戻ってくる。水を得たハーフェスとメヘランは大喜びだが、ヤーヤ隊長は水筒を3つしか持っていかなかった ことで、こちらの兵員数がばれてしまったと、怒る。
 ハーフェスは危険も顧みず、再び沢山の水筒を持って水場に行く。イラク兵に撃たれることなく帰還する。今度はイラク兵が水場にやってくる。その時、迫撃 砲弾が付近に弾着する。ヤーヤ隊長はイラク軍にこちらの位置が知れたと判断し、水場にいたイラク兵を狙撃する。
 ヤーヤ隊長がイラク兵を撃ったことを知った、メヘランとハーフェスは激怒する。迫撃砲弾は流れ弾だったのだ。ヤーヤ隊長は二人に本隊に戻れと言い残し、 単身イラク軍陣地に赴いていく。死ぬ気だと悟ったメヘランは隊長を呼ぶが、戻ってこない。
 イラク軍陣地はもぬけの殻だった。実はイラク兵はたった一人だったのだ。小屋の中で瀕死のイラク兵を見つけたヤーヤは彼が手に握った手榴弾を見つける。 ついに、息絶えたイラク兵とともにヤーヤ隊長は自爆する。塹壕内の無線が告げる「作戦は成功した。メフラーンの街は開放された!」 


(2008/02/22)