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戦争映画の一方的評論
 
「ライフ・イズ・ミラクル 評価★★★☆ ムスリム人女性に恋をしたセルビア人男
LIFE IS A MIRACLE
2004 セルビア・モンテネグロ・フランス  監督:エミール・クストリッツァ
出演者:
スラヴコ・スティマチ、ナターシャ・ソラック、ヴク・コス ティッチほ か
154分 カラー 

 
  1992年に勃発したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を背景にしたヒューマンドラマ。ただ単にヒューマンドラマというだけでなく、寓話的な会話や映像を多様 に盛り込んだコメディタッチでもあり、やや非現実的なストーリーながらも完成度の高い映画となっている。エミール・クストリッツァ監督の独自の映像観と倫 理観というものが色濃く出されており、ハリウッド映画にはない、抑揚がないながらも真に迫ってくる手腕が光る。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争は旧ユーゴか らのボスニア・ヘルツェゴビナ独立を巡って、セルビア人とムスリム人・クロアチア人が戦った戦争であり、背景には民族問題が深く根ざしている。
 本作はセル ビア人の主人公が、捕虜となった息子と捕虜交換のために軟禁したムスリム人の女性と、禁断の恋に落ちていく過程を描いたもので、いわば 「愛は民族よりも強し」といったところがメインテー マとなっている。他のユーゴ紛争関係を扱った映画が暗く重い映画になりがちなのに対し、本作は比較的明るく楽しいタッチで描かれているのが救いだ。もちろ ん、その背景にある根深い問題をなおざりには出来ず、劇中に登場する「これは我々の戦争じゃない、誰かの戦争だ」という台詞は、何のために戦っているのかというユーゴ内紛の不条理な実情を如実に言い表している。

 主人公ルカ役のスラヴコ・スティマチは、木訥としたやる気のなさげな人物が、戦乱の流れの中を飄々と生き抜きながらも、次第に自己の信念に目覚めていく 姿を好演している。ムスリム女性役のナターシャ・ソラックは色気のある美女で、ヌードも披露するが、包容力のありそうな雰囲気が良い。本作で陰の主役とで もいうべき存在は、ロバ。ルカの父親の飼うロバなのだが、人間の死生観を代弁するかのように要所要所に登場する。このほか、鳥や犬、猫など多くの動物が登 場し、戦争に突き進む人間をせせら笑うかのように生き生きと描かれている。また、トロッコ、ブランコ、家屋など有形物の描写が実に上手で、生活感あふれる 姿から朽ち果てていく様まで、時間の経過や物質の滅亡(形あるものいつかは滅ぶ)という概念を強く印象づけている。
 旧ユーゴと言えば、サッカーが盛んな所であるが、本作もルカの息子ミロシェがプロサッカー選手を目指す姿が描かれている。そのサッカーの試合のシーンも妙にこじんまりとした映像と、随所に盛り込まれたコメディが笑える。
 また、映画中では日本のことも会話中に登場し、「日本は鉄道だらけ」や戦争の代名詞として「ヒロシマ」が用いられるなど、日本に対するイメージが窺われる。

 
ヒューマンドラマのため、戦闘シーンや登場する兵器はほとんどなく、一瞬装甲車が映るが、多分セルビア軍所有のBOV装甲車ではないかと思われる。

 先にも書いたように、ストーリーに激しい抑揚があるわけではないので、ぐいぐいと引き込まれるタイプではないが、いつの間にか最後まで展開を追ってしまうという作品。何カ 所か寓話的なシーンが出てくるので、若干意味を理解しにくい場面もあるが、逆にその意味を考えてみるのも楽しみ方の一つだろう。

 

興奮度★★
沈痛度★★★

爽快度★★★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

  セルビア人の鉄道員ルカは、オペラ歌手の妻ヤドランカ、プロサッカー選手を目指す息子のミロシュと、妻のアレルギー転地療養のためベオグラードからボスニ アに移り住んでいた。鉄道は未完成だが、義兄である市長はセルビア側と開通させようと目論んでいた。しかし、その反面鉄道を使った密輸が盛んになることも 危惧されていた。ある日、ルカの父親ヴーヤンのロバが線路を塞いでいた。父によれば失恋のあまり自殺をしようとしているというのだ。
 息子のミロシュはプロサッカーチームのパルチザンからオファーが来るが、直前に徴兵義務が課せられて兵役に行くこととなる。妻のヤドランカは泣き叫び、 ルカも友人の軍人アレクシチ大尉に戦争がないことを確かめるなど不安を隠せない。しかし、ミロシュが兵役つくとセルビアとムスリムの間で戦争が勃発し、サ ラエボは火の海となる。妻のヤドランカはハンガリー人男と駆け落ちし、ルカはひとりぼっちとなる。鉄道も軍の管理下となり、ルカはアレクシチの指揮下に置 かれ、町の人々も兵役につくようになる。また、市長は法律家のフィリポヴィチに暗殺され、新市長にはフィリポヴィチが就任する。
 郵便屋のヴェーリョがミロシュが捕虜となったことを伝える。ルカはアレクシチ大尉のもとに行き、軍に配属になるように頼むが「これは我々の戦争ではない」
と 断られる。そんな矢先ミロシュの友人だった軍人のトモが一人のムスリム人女を連れてくる。彼女はサバーハと言い、かつて妻の通っていた病院の看護士だっ た。トモによれば、ベシレヴィチ家の令嬢であり、ミロシュとの捕虜交換のために軟禁し、手紙を書かせて利用しようというのだ。一つ屋根の下で暮らすことに とまどいを覚えるルカだったが、こうして不思議な同居生活が始まる。献身的に食事や掃除をするサバーハに次第に心惹かれていくルカだったが、サバーハから 実はベシレヴィチ家の人間ではないことを告白され、怒りをあらわにして出て行ってしまう。しかし、サバーハはルカを追いかけて諭し、二人はついにベッドを共にする。
 戦局はセルビアに不利となり、ムスリム軍が攻め込んでくるようになる。鉄道を使った密輸を推進するフィリポヴィチは生真面目なアレクシチ大尉を抹殺しようと目論むが、反対にアレクシチ大尉にやられてしまう。
 妻ヤドランカが戻ってくる。ヤドランカはサバーハの姿を見て怒り出すが、ルカはもはやヤドランカに未練はなくサバーハを愛していた。しかし、アレクシチ 大尉からミロシュの捕虜交換が知らされ、交換要員としてサバーハの名が入っていることを告げられる。ルカはサバーハを渡すまいと逃げ出すが、その途中でム スリム軍の狙撃兵によってサバーハが足を撃たれてしまう。仕方なくルカはサバーハをアレクシチの軍病院に連れて行き、治療を行ってもらう。
 いよいよ捕虜交換となり、ミロシュが戻ってくる。反対に去っていくサバーハに未練を残すルカ。再び3人で生活を始めるルカだったが、家も何もかもが破壊 されつくされていた。サバーハを失い、生きる希望をなくしたルカは線路の上に横たわり自殺を図ろうとする。近づく列車を遮ったのは、あのロバだった。ロバ に命を救われたルカは感謝の言葉をかけるが、その目の先にはサバーハの姿があった。ロバにまたがり二人は去っていく。


(2007/04/13)

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