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戦争映画の一方的評論
 
エリート養成機関 ナ ポラ 」 評価★★★☆ 無抵抗の相手に留めを刺せるか否か?
NAPOLA/BEFORE THE FALL
2004 ドイツ  監督:デニス・ガンゼル
出演者:
トム・シリング、フロリアン・シュテッターほ か
110分 カラー 

 

 第二次世界大戦下のドイツ。ボクシングの才能を認められ、ヒトラーのエリート養成機関「ナポラ」に入学した青年が、理想と現実の間 で翻弄される姿を描いたヒューマンドラマ。「ナポラ(napola)」とはNational-politische Erziehungs-Anstaltの 略で、いわゆるベルリン防衛戦などで登場する「ヒトラー・ユーゲント」とは別物だ。国家の最高エリートを養成する目的で作られたナポラへは、NSDAP (国家社会主義ドイツ労働者党)の管区指導者と学校の教官の推薦を得なければ進むことができないのだ。
 本作は、その秘められた組織ナポラを描いた珍しい作品ではあるが、内容的にはフィクションで、ドイツ国内の旧関係者からは、真の姿ではないとの批判も あったようだ。

 全体にコンパクトにまとまっており、映像的、出演者、ストーリー的にも標準以上。ヒューマンドラマとして、喜怒哀楽が上手に織り込まれ、登場人物の性格 付けも分かり易く、良くできている。特に、学校にも行けないほど貧しいボクサーのフリードリヒがナポラに入学し、次第に権威と優越感に感化されていく様 や、友人で知事の息子アルブレヒトが裕福でありながら絆のない家庭に救いを求めようとする様は、実に良く伝わってくる。設定が現代日本ではあり得ないもの ではあるが、学歴競争社会とも似る部分が多く、共感される方も多いのではないだろうか。
 本作の根底に流れる主題に「無抵抗の相手を撃(打)つか否か」がある。ボクサーとしては倒れた相手に留めを刺すのか、兵士としては丸腰の敵兵を撃つのか といったことなのだが、いわゆる人としての自制心、残虐性の克服を導きだそうとしているのだろう。しかし、戦時の、しかもナチスドイツを背景にしている割 には、ちょっと甘いというか、主題としては軽すぎる気がする。そんな単純な割り切りではないだろうに。
 もう一つ、上記とも連動しているのだが、本作は全体の感情抑揚を一定ラインで押さえ込んでいるかのようにのっぺりとしている。悪く言えば、特筆すべきも のがない。ショッキングなシーンもないわけではないが、あまり心に響いてこない。
 さらに、ストーリーが単純化されすぎている感もあり、特に助演する登場人物の裏の顔、心の葛藤というものがもっと描かれていれば面白かったかも知れな い。

 なお、本作が戦後ドイツの反省史観に基づいているのが素晴らしい、という論評もちらほら見られるが、私にはあまりそう見えなかった。無論、ナチス容認・ 肯定というスタ ンスではないが、どちらかというと被害者、他人事といった立場を感じる。同じ敗戦国でも、日本は天皇陛下、A級戦犯も含め、国民が皆当事者として反省する から自虐的な史観を引きずる結果になってしまうが、ド イツの場合はヒトラーやナチス党は消滅した過去の産物として捉え、こうした集団を二度と輩出させませんという宣言こそが反省となっているのだ。本作も、ド イツ人監督 のそのあたりの被害者意識的な感覚が見え隠れしているような気がしてならない。まあ、映画的にはそれで十分なんだけど。

 ほとんどが学校のシーンなので結構低予算の部類に入るのだろう。登場する兵器類はキューベルワーゲン風の車が少しとトラック。面白かったのは、手榴弾訓 練のシーンで、キャップはずし、紐引き、投擲という手順が良くわかった。ここで英雄が登場するのだが、一目散に逃げ出す教官の姿には苦笑。
 また、入学試験では「生命の泉 レーベンスボーン計画」とも関連する、顔の骨格サイズや瞳の色、髪の色の検査がなされているのが興味深い。

 全体に良くできている映画で、喜怒哀楽のバランス感が心地よい映画であった。まあ、その分ちょっと物足りなさも感じたが。題名の印象が強すぎるが、あく までヒューマンドラマなので留意されたし。
 なお、ナポラは15,000名の学生を輩出し、その大半が武装親衛隊の士官として戦死している。

(参考)
朝鮮新報の映画評 (珍評)

興奮度★★
沈痛度★★★

爽快度★★★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 工場労務者の息子フリードリヒ・ワイマーは、日雇いアルバイトの傍ら通っているボクシングジム で、ナチスエリート士官養成学校「ナポラ」の生徒と試合を行う。試合ではナポラの選手をダウンさせるが、ルールでは気絶するまでとされており、フリードリ ヒは最後の一撃を出す事が出来ず、逆に打たれてノックダウンする。しかし、ナポラの教官フォーグラーに素質を見いだされ、ナポラの入学試験を受けるよう勧められる。
 フリードリヒの父親は、ナチスに関わるなとナポラ入学に反対だったが、フリードリヒはエリートになるチャンスだとして、勝手に同意書にサインして家出し てしまう。見事、ナポラ入学を果たしたフリードリヒだったが、父親は非協力的としてゲシュタポに連行されてしまう。
 ナポラでは、お調子もののクリストフ、肉屋の息子ウィルヘルム、おならの記録を持つジェイデン、寝小便のジークフリート、知事の息子アルブレヒトと同室 になるが、フリードリヒは早くも上級生に目を付けられてシゴキを受ける。それを助けたのがアルブレヒトだった。アルブレヒトは権威ある知事の息子で、学校 でも一目置かれていたが、父親や母親の愛情を受けているとは言い難い環境で、そのことが不満だった。作文や詩を書くのが好きなアルブレヒトは父や母に読ん で貰おうとするが、多忙な両親は目もくれない。
 フリードリヒは教官フォーグラーの指導で実力を高めていき、同じナポラのポツダム校との試合に出る。そこでは、ついに倒れた相手への一撃で勝利を得る。 フリードリヒはナポラでのドイツ民族至上主義、ナポラの教育精神に次第に感化され、権威に喜びを感じるようになっていた。しかし、アルブレヒトはやりすぎ だとたしなめるのだった。
 寝小便がクセになっているジークフリートは、寝小便をネタに上級生や軍事教官の卑劣ないじめに合っていた。ナポラの汚点だとまで蔑まれたジークフリート だったが、手榴弾投擲訓練の際に、マルティンが失敗して落とした手榴弾に身を挺して覆い被さる。ジークフリートの勇気ある行為に学校長や知事らは絶賛する が、フリードリヒらは一目散に逃げ出した教官らに怒りを感じ始めていた。訓練の際にフリードリヒは教官の腹に思い切りパンチを打ち込んで、憂さを晴らすの だった。
 知事の誕生日に、フリードリヒは家へ招かれる。そこで、ボクシングの選手と知った知事や取り巻きたちは実演を命じる。相手はひ弱なアルブレヒトが指名さ れ、フリードリヒはやむなくアルブレヒトを殴り倒す。知事はふがいない息子に冷めた目を向け、フリードリヒを賞賛する。
 戦況の悪化で8年生の出動が決まる。さらに、最上級生となったフリードリヒら7年生にも、森に逃げ込んだロシア人捕虜の捜索任務が出る。銃を携帯して森 にむかったフリードリヒらは森に潜むロシア兵を発見し銃撃する。近づいてみるとロシア兵はまだ子供だった。罪悪感を感じたアルブレヒトは息のある兵の治療 を続けるが、後からきた父親(知事)は無情に射殺してしまう。この一件でアルブレヒトの父親への軽蔑とロシア兵射殺の罪悪感が一層増してくる。
 国語の時間の作文でアルブレヒトはロシア兵射殺は間違いだったと述べる。それを聞き怒った知事はアルブレヒトを武装親衛隊に志願させ、ウクライナの前線 行きを命じる。父親の厳命に逆らえないと判断したアルブレヒトは、湖の寒中潜水訓練の際にわざと溺れて自殺してしまう。
 アルブレヒトの自殺にショックを受けたフリードリヒは、学校新聞でアルブレヒトの死亡告知を載せるよう頼むが、校長は自殺などあり得ないととりつく島も ない。
 ボクシングの試合で勝利を託されたフリードリヒは、相手を倒すが、ギャラリーに知事や校長の顔を見て、留めの一撃を打つ事を拒絶する。結局試合に敗れた フリードリヒは、ナポラを追い出されるのだった。

 
(2007/02/15)

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