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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「フラッグ・オブ・ソルジャーズ 勝利なき戦場 評価★★★☆ イタリア戦線での米独伊の 兵士 たち
THE FALLEN
2004  アメリカ・ドイツ・イタリア 監督:アリ・ターヴ
出演者:
ジョン・マカヴォイ、トーマス・ポーン、ファヴィオ・サル トールほ か
110分 カラー 

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 第二次世界大戦末期、イタリアのゴシック線防御戦における独米伊3国の軍人が織りなす、複合視点型の不思議系ヒューマンドラマ。監督は新進気鋭のアリ・ ターブで、アメリカ軍補給分隊、防衛のドイツ軍歩兵小隊、支援にきたイタリア軍小隊をそれぞれの視点で、彼らの置かれた立場を並行時系列に描いていく。か なり独特な雰囲気を持つ作品だが、頻繁なシーンカットかつ登場人物の性格付けが淡泊なので、展開を追うのがやや大変で、登場人物の関係や誰なのかわからな くなることも。ストーリーは、単に戦闘シーンを描くだけでなく、彼らの日常をありのままに描いていくことにより、淡々としたヒューマンドラマの体をなす。 さらに随所にコメディ的シーンも織り込まれ、シリアスなのかコメディなのか、イタリア映画とロシア映画を混ぜたような不思議な感覚だ。
 本作では先の3軍の他にも、イタリアパルチザン、イタリア人マフィア、イタリア人住民など、地域に居住する人々が多数登場する。その分登場人物に割く時 間は少なくなり、エピソードの掘り下げが浅くなってしまっているのだが、反面、映画の空間的広がりに臨場感を醸し出す効果をもたらしている。戦闘地域とい うものは単にその場で戦っている兵士だけでなく、住民やそれに関わる人々で構成されているということなのだ。普通の戦争映画では飛ばしてしまいがちな些細 なエピソードを、紡ぐように組み立てているのが面白い。
 本作の原題は「The Fallen」でいわゆる戦死者ということだが、本作で描きたかった主題の核はここにあるのだろう。本作における死亡確率はかなり高く、彼らの死に は目的や理由がそれぞれある。意に添ったものもあれば、意に反したものもあり、お互いが偶然の繋がりによって死に直面していく。まさにここがミソであり、 淡々とした死を描くことにより、戦場の不条理さ、偶発性というものを描き出しているのだろう。

 本作の海外映画評の評価はかなり高め。結構低予算映画らしく、インディーズものとして評価されているらしい。マイナー映画祭とはいえ、ミラノ国際映画 祭、ブルックリン国際映画祭で最優秀監督賞を受賞しているとのことで、8年の歳月をかけて製作しただけあって期待度 はかなり高い。確かに、 個々の映像シーンは綺麗だし、挿入される音楽や効果音は牧歌的だがかなり秀逸。軍装や兵器考証にはリエナクターの協力を得ているようで、ややマニアックさ は感じるが大変興味深い。また、役者はそれぞれ米独伊人を起用し、それぞれ自国語を話すなど、映画作 りに対する点ではチープ感を感 じさせ ない。もし、もっと予算があったならばという期待度からすれば、評価されるのも頷ける。
  だが、個人的には評価するのがなんとも難しい。単に映画の完成度で見た場合、主題となるテーマが捉えにくく、やや中途半端な印象を得たからだ。前半まで は、アル中の軍曹に率いられたやる気のない米軍分隊、堅物のドイツ兵をおちょくるイタリア兵、イタリア兵を小馬鹿にするドイツ兵、イタリア兵を挑発して尻 を出すパルチザン、米兵の体を求めるイタリア老婆やすきっ歯女など、テンポの良いコメディ調の乗りはかなり面白かったのだが、後半になって要所要所に盛り 込まれるシリアスな「死」とのバランスがどうもしっくり来ない。ぶつ切りのシーンに、唐突な展開は、ある意味B級映画と紙一重であり、このアンバランスが 新手の手法と言えば体裁は良いが、私個人的にはいささか消化不良だったのだ。
 ただ、不思議な魅力に満ちているのも事実であり、気になったので何回か見直してみたところ、浅い性格付けの背後に細かい裏技がいくつも隠されていること に気づく。例えば、ちょっとした仕草や行動なのだが、それが後になってボディブローのように効いてくることが多い。幾多の兵士の戦死シーンも唐突で意味深 なものが多いのだが、どこかのシーンでさりげなくその意味を示唆しているのだ。あえて淡泊な性格付けで表現した本作は、緻密なシナリオと編集があったこと を想起させる。

 登場する兵器類にはドイツ軍の8輪装甲車Sd.Kfz233に似たものと、米軍4輪軽装甲車M8グレイハウンド、M3ハーフトラックがある。いずれも実 際に走行している。これらも含めた銃撃戦や着弾シーンはそこそこの出来で、迫力にこそ欠けるが悪くない。また、登場するアメリカ軍は第34歩兵師団 所属の軍曹率いる補給分隊。ドイツ軍は第334歩兵師団で少尉率いる小隊?、イタリア軍は山岳師団第2連隊所属で中尉率いる小隊規模となっている。いずれ も役者のほかにリエナクターが協力しているようだ。
 余談だが、DVDの字幕は誤訳が目立つ。米軍中佐を大佐、イタリア軍中尉を少尉と言っているほか、装甲車を戦車など。また、連続性という点では、ドイツ 兵ハンスが眉間ど真ん中を撃ち抜かれたのに、その後の死体シーンでは右にずれていたりするのはご愛敬。

  本作は抽象的映画や芸術的映画ではないし、かといってリアリズムを追求したものでもない。笑える所もあるし、笑えない所もある。新手のシュールな作品とも 言えるが、非常に評価に苦しむ作品であった。凡作と一言では片づけ難い不思議な魅力もあり、噛めば噛むほど味の出る、やっぱりアリ・ターブの今後に期待と い うことになろうか(笑)。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1944年10月4日、イタリア北部のゴシック線。連合軍の北上を阻止するドイツ軍第334歩兵 師団のブロイクナー少尉の小隊が守備していた。損耗する兵力に少尉はイタリア軍の援軍を要望する。
 一方、アメリカ軍は第34歩兵師団のワッツ中尉率いるC中隊が苦戦を強いられており、弾薬と無線機の補給を要望。司令部のボーエン中佐はアル中のマロン 軍曹率いる補給分隊に前線への補給を命じる。部下のイタリア系サルはイタリア人マフィアのロッシーニと密売をしていたが、この出撃で約束の時間にいけなく なる。マロン軍曹らは護衛として前線復帰するパッカード伍長を加え、前線に赴いていく。途中でイタリア人避難民と遭遇するが、そこでジープが故障。マロン 軍曹は車を放棄し、避難民の手押し車を徴発して徒歩で進むことにする。途中で民家を見つけて潜入すると、そこには老人と女たちが隠れていた。彼らはアメリ カ軍と知ると歓迎し、女たちはアメリカ兵にすり寄っていく。パッカード伍長は老婆とセックスし、若いルーイ二等兵は若い女性フランチェスカとキスをする が、彼女がすきっ歯と知り尻すごみする。そんな所にスコットランド人を名乗るトミーが立ち寄るが、彼はドイツ軍のスパイであった。
 防衛線北部32キロ地点にいたイタリア軍アルプス山岳師団第2連隊のジャン・ニーニ中尉の小隊は、ようやくブロイクナー少尉の待つ防衛線北部14キロの ドイツ軍宿営地に到着する。イタリア軍のサルヴォトーレ軍曹は勇敢な男だが字が書けず、ジャンニーニ中尉は貴族的な雰囲気を持つ男だった。ドイツ軍とイタ リア軍は互いに馬鹿にしあい牽制していたが、食事の分配で喧嘩に発展する。さらに、地雷の設置を教えるドイツ兵に隠語を教えてからかう始末だ。そのイタリ ア兵をからかうのはパルチザンで、森の中で尻を出して徴発する。
 パルチザンはドイツ軍の電話線を切断し、復旧するドイツ兵を狙撃した。装甲車で捜索に出たハンスは、勲章を得ることで頭が一杯だったが、仲間のヨハンの 悪ふざけで足を狙撃されてしまう。ハンスは結局足を切断する羽目に。パルチザンに困ったブロイクナー少尉はジャンニーニ中尉にパルチザン掃討を依頼する が、同胞とは戦えないと拒否され、イタリア軍は周辺偵察を受け持つことになる。その周辺偵察でイタリア軍のサルヴォトーレ軍曹、ピピーノらはパルチザンに 包囲されてしまう。サルヴォトーレ軍曹は銃を捨てての撤退を選択する。
 パルチザンに襲撃されたドイツ軍車輌から物資を盗んでいたロッシーニ親分ら一味はドイツ軍に捕まる。ジャンニーニ中尉はロッシーニの部下を徴兵し、イタ リアをドイツに売ったと罵るロッシーニを銃殺に処す。
 サルヴォトーレ軍曹と2名のイタリア兵が守る機銃陣地に、米軍のマロン軍曹の部隊が接近する。サルヴォトーレの銃撃でサルが戦死。マーフィーも親指を飛 ばされる。マロン軍曹はジミーにサルの背負っていた無線機を取りにいかせ、先の大戦で臆病者とレッテルを貼られた父のことを話し、自分は臆病者にはならな いと呟く。パッカード伍長は単身イタリア陣地に接近、サルヴォトーレ軍曹と目が合う。直後、アメリカ軍の装甲車が到着し、イタリア軍機銃陣地は破壊され る。2名のイタリア兵は装甲車のホークス軍曹に投降するが、サルヴォトーレは直撃弾を受け瀕死状態だった。パッカード伍長が近づき、静かにサルヴォトーレ の目を閉じてやる。
 宿営地では再びイタリア兵とドイツ兵が喧嘩を始めるが、その隙に一人のイタリア兵がドイツ兵の銃で鹿を仕留める。「これはイタリアの鹿だ」「ドイツの銃 で捕った」「イタリアで生まれた鹿だ」「今はドイツの占領地だ」とブロイクナー少尉とジャンニーニ中尉が口論するも、結局は両軍仲良く鹿肉を料理するの だった。
 C中隊に弾薬と無線機を届けたマロン軍曹の一行は、帰ることを許されず攻撃に参加させられる。一方、ドイツ軍は撤退を始め、ブロイクナー少尉は第292 てき弾兵師団の撤退援護と現地死守を命じられる。ブロイクナー少尉は死を覚悟し、2名の志願者を募ったうえ、残りの兵をピアノロの第365歩兵大隊に合流 するよう命じる。部下やジャンニーニ中尉らと別れを告げた少尉はヴォルフ曹長、ハンスとともに機銃を陣地に陣取る。
 接近するアメリカ軍とブロイクナー少尉との銃撃戦が始まる。ハンス、ヴォルフ曹長が戦死し、ブロイクナー少尉も負傷するが、アメリカ軍のマロン軍曹、 パッカード伍長も銃弾を受ける。起きあがったパッカード伍長はブロイクナー少尉を銃撃するが、そのまま自らも倒れていく。ドイツ兵3人の死体をアメリカ軍 広報班が写真に納めていく。 


(2007/07/18)