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戦争映画の一方的評論
 
「大脱走 コルディッツ収容所 評価★★☆ ドイツ軍収容所から脱走する英軍兵の確執
COLDITZ
2005 イギリス  監督:スチュアート・オーム
出演者:ダミアン・ルイス、トム・ハーディ、ソフィア・マイルズ、ローレンス・フォックス
ほ か
184分 カラー 

 
  第二次世界大戦時の悪名高きドイツのコルディッツ城収容所を舞台に、連合軍捕虜の脱走作戦と英国に残してき た恋人を巡るラブロマンスが織り込まれる。コルディッツ城は連合軍脱走の代名詞にもなっている実在の城で、ドイツのザクセン州ライプツィヒ行政管区ムルデ ンタール郡にある。元は中世に作られた城で、捕虜の脱走に手を焼いたドイツ軍が脱走不可能な収容所として利用したものである。士官専用の収容所で、ポーラ ンド、イギリス、カナダ、フランス、オランダ、アメリカなどの士官が集められ、脱走意志の強い士官が様々な脱走を図り、成功したことで知られている。
 本作は、イギリスのテレビムービーで、DVDでは前後編の二分割になっている。かなりの長編であるが、幾度にも渡 る脱走と本国イギリスでの恋愛、友情ドラマが、次から次へと巻き起こるので、飽きることはなく見応えは十分。特に、脱走作戦は奇想天外な手法で、様々な国籍の戦友の手を借りて試行錯誤するシーンが秀逸で、緊迫感やリアル感を十分堪能することが出来る。
 ただ、舞台がドイツのコルディッツ城と本国イギリ スの2箇所で同時並行して展開していくので、ストーリーにやや散漫な嫌いがあるのと、脱走モノとしてもラブロマンスモノとしてもちょっと主題がぶれがちで、全体としては中途半端な 出来という印象はぬぐえない。さらに、脱走アクションとラブロマンスという形は取っているが、実はその裏に友情と裏切り、脱走への固執という大きなテーマが隠されてお り、特に後半はサスペンンドラマ的な雰囲気が強くなり、どうも腰が落ち着かない。前半から後半にかけて主題が大きく転換してしまうのは、製作者の意図なのであろうが、映画を見終わったときの釈然としない不快感が強く残り、単純な脱走アクションや純 粋なラブロマンスを期待すると裏切られるかもしれない。

 主役の一人マクグレイド英軍伍長は、「バンド・オブ・ブラザーズ(2001米)」の主役ウィ ンターズ大尉役のダミアン・ルイス。今作はいわば悪玉的なキーマンとなっているが、軟派な姿はまるで別人。もう一人の主役ジャック・ローズ英軍少尉役には トム・ハーディで、派手さはないが愛する人への異常なまでの執念を良く表現している。その相手役にはソフィア・マイルズで、柔らかい笑顔の美女。このほか、英軍、仏 軍、独軍兵など個性豊かな脇役が多数控えており、映画としては実に華やかな役者陣と言える。
  撮影はチェコとロンドン。テレビムービーにしてはスケール感のある映像だった。本物のコルディッツ城を用いての撮影で、全景の映像こそないが、閉塞感のあ る建物の印象を良く出している。登場する兵器類はドイツ軍のキューベルワーゲンと軍用トラック程度。このあたりは余りお金はかけていない。英仏独蘭加米ポ と各国軍兵が登場するので、軍装はなかなかしっかりしている。各国軍の兵士の特性もうまく表現されており、この点は見ていて爽快だ。

 全体としては、個性豊かな俳優陣を揃え、見応え十分なものであるのだが、ストーリーの重さからちょっとすっきりしない映画であった。面白いかどうかでい えば、面白い部類であることは間違いないが、戦争映画マニアからすると期待を裏切られちゃったかなという感じ。逆の視点から見れば、視聴者を裏切ることが できるストーリーの奇抜さとも言えるのかもしれないけど。評価は分かれるところだろう。

(参考)
コルディッツ城(wikipedeia)

興奮度★★★
沈痛度★★★

爽快度★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1939年のロンドン。青年のジャック・ローズは少尉として戦地に赴くこととなり、恋人のリジー・カーターと別れを惜しむ。ローズ少尉は結婚を申し込もうと思うが、うまく言葉にできなかった。
 ローズ少尉はドイツ軍の捕虜となり、ドイツ軍の収容所から同じ英軍のマクグレイド伍長、ウィリス大尉らと脱走を図る。仲間からはぐれたローズ少尉とウィ リス大尉は方向を見失ってしまう。途中で立ち寄った家屋でマググレイド伍長と合流し、3人はスイス国境を目指す。国境には貨物列車がスイスへ通じている が、ドイツ軍の警備が厳しい。3人はドイツ人の子供に通報されて、ドイツ軍の追撃を受ける。足を負傷したローズとウィリスは捕まるが、マクグレイドだけは 列車に飛び乗って脱出に成功する。スイスに入国したマクグレイドは、そのまま住み着くつもりで酒に女に手を出すが、大使の仕組まれた罠により本国に強制送 還される。
 イギリス本国に帰国したマクグレイドは、初の収容所脱走者ということで、ロンドンのM19という特殊機関に配属され中尉に任官される。今後のドイツ軍捕 虜収容所の情報収集と、発明家のウォレン氏の装備品開発の手助けが任務となった。また、逃亡中にローズから託された恋人リジーへの言づてのために、空襲監 視員をしていたリジーのもとを訪問するが、一目見てリジーに恋をする。
 ローズ少尉は脱走が困難とされるコルディッツ捕虜収容所に送られる。そこにはカナダ空軍のレット・バーカーがおり、借金に困っているドイツ軍警備兵マイ ズナーを金品で買収していた。そのバーカーと土木技師だったヤンの手引きで、ローズとウィリスは再び、汚水の下水道を通って脱走を図る。しかし、下水道の 出口にはドイツ兵が待ちかまえており脱走は失敗し、ローズ少尉らは独房に送られる。
 コルディッツ収容所にさらに脱走失敗兵が送られてくる。その中に芸術家だったソーヤー大尉、フランス兵のルブランらがいた。ローズ少尉は恋人リジーの面 影を求め、画用木炭を仕入れて、ソーヤーにリジーの肖像画を描いてもらう。ローズ少尉とウィリス大尉は次なる脱走としてドイツ兵の格好をして脱走する計画 を練る。縫製のできる捕虜が制服を作り、身分証はソーヤーが担当、ドイツ語が出来るオランダ兵のトニーを仲間に入れて脱走する。しかし、途中で落ちたボタ ンが偽物であることがばれ、再び独房に入れられる。一方、ソーヤー大尉は入城した電気技師に化けてまんまと脱走に成功する。
 イギリスのマクグレイドは、新たな発明品の開発を手助けする一方、リジーの口説き落としに躍起になっていた。しかし、リジーはローズへの一途な想いから それを拒み続ける。ついに、マクグレイドはコルディッツ城のローズから届く手紙を自分の所に確保し、ローズが死亡したとの手紙を偽造する。
 リジーはローズの死亡通知を受け取りショックを受けるが、マクグレイドの求愛を受ける気にはならない。しかし、空襲で友人のジルが大怪我を負い、処女の まま死ぬのは嫌だという言葉を聞き、次第に心が揺らいでいく。さらに、マクグレイドが脱走のための経路確保のためイタリア国境に派遣されることとなり、危 険な任務で死ぬかもしれないと聞かされたリジーはついに、マクグレイドに処女を捧げてしまう。
 コルディッツ収容所では、名の知らない人々からクリスマスプレゼントが届く。それは、ウォレンが発明した脱走補助用具だった。レコード盤に隠された地 図、ラケットに隠された金属品、胡桃の中に隠されたコンパスなどであった。しかし、それを察知したドイツ軍は金属探知器を導入して摘発に努める。そこで、 摘発された荷物を奪い返すため、錠前師だったオランダ兵のヴァンデンブルグ大尉の協力で錠前をはずして荷物を奪取。その協力の見返りにヴァンデンブルグを 連れて、ローズとウィリスは脱走を図る。しかし、耳の不自由なヴァンデンブルグ大尉は屋根から足を踏み外して転落死し、ローズとウィリスはまたもや独房に 入れられてしまう。
 ロンドンのM19には脱走に成功したソーヤー大尉が加わる。そこでソーヤー大尉はローズが死亡したとの情報を聞き、重大な不正義が行われていると察して 調査を始め、マクグレイドに不信感を抱き始める。そのことを察知したマクグレイドはリジーに求婚し、アメリカに移住しようと性急に求めはじめる。
 コルディッツ収容所ではローズが必死に脱走委員会に脱走を要請するが、順番はウィリスが先となっており待たされることに。しかし、どうしてもリジーに会 いたいローズはバーカーの手を借りてウィリスの代わりに脱走を図る。今度こそはなんとか脱走に成功したローズはポーランド地下組織の助けを借りてワルシャ ワの隠れ家にたどり着く。そこにはすでに脱走兵が複数隠れており、帰還へのタイミングを待っていた。
 ワルシャワの脱走兵を帰還させる任務にはマクグレイドに代わってソーヤー大尉がつく。ソーヤー大尉はすでにマクグレイドが不正を働いたことを察知してお り、マクグレイドは逆上してソーヤー大尉を誤って殺害してしまう。さらに、マクグレイドは素知らぬ顔でソーヤー大尉の任務を引継ぎ、ドイツ軍にワルシャワ の隠れ家の情報を流す。ワルシャワの隠れ家はドイツ軍の急襲を受け、ローズ一人が命からがら脱出に成功する。
 ついに、ローズ少尉はイギリス本土に帰還する。その帰国を知ったマクグレイドは焦ってリジーのもとに走り、アメリカ移住を促すが、そこにローズがやって きてしまう。怒ったローズはマクグレイドと格闘になり、マクグレイドがローズに銃をつきつける。そこにイギリス憲兵隊が到着し、抵抗したマクグレイドは射 殺される。
 一方、終戦が間近となったコルディッツ収容所ではウィリスが脱走を試みるが、麻薬中毒になっていたバーカーの裏切りで逮捕。バーカーは自殺する。ウィリ スはもはや脱走することだけが生きる目的となっており、米軍が近づいたことを知り、「良くないことだ」と言い残し、白昼堂々と収容所を抜け出して射殺され てしまう。
 ローズはリジーにやり直そうと投げかけるが、リジーは「また愛せるかわからない」と答える。それでもローズは待ち続けると言うのだった。

(2007/03/19)

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