「僕の大事なコレクション」 評価★★★☆ ユダヤ人のルーツ探しコメディ
EVERYTHING IS ILLUMINATED
2005 アメリカ 監督:リーブ・シュレイバー
出演者:イライジャ・ウッド、ユージン・ハッツ、ボリス・レスキンほ
か
105分 カラー
嫁さんがレンタルで借りたので、一緒に視聴。戦争映画とは言えないが、ちょびっとだけユダヤ人虐殺が絡んでいるので仲間に入れてみた。これがコメディだと全く知らずに見始めたが、ユダヤ人ジョナサン役のイライ
ジャ・ウッドをはじめ、ウクライナ人アレックス役、その祖父役と個性的なコメディ演技はなかなかのもの。個人的には一見お馬鹿そうなアレックスの純真な
ユーモアさが好感。
ジョナサンが祖父の出身地であるウクライナにルーツ探しの旅にやってくる物語だが、その背景には旧ソビエト時代にウ
クライナ地域でも行われたユダヤ人狩りがある。ドイツ人が行った行為とはいえ、スターリンをはじめとするソビエト人のユダヤ人嫌いも有名であり、ユダヤ人
の深く暗い過去が潜んでいる。それだけ、タブーとも言える題材を展開しながらも最後までコメディ映画として締めくくった本作は、役者の演技とストーリー編
集が秀逸なのだと言える。
展開されるストーリー自体はかなり重いものがあるが、それをドキドキ感に変える謎解きも良かった。また、最後
の最後までミステリアスな部分を残し、謎が解けていくのが爽快でありながら、その解けた謎がまた歴史の重さを考えさせる、という手法は見事としか言いよう
がない。本作は戦争映画の部類なのではないかと真面目に悩むほどシリアスの側面も併せ持っている。
さて、本作は旧ソビエトから独立した
ウクライナの現状を痛烈に描いてもいる。旧ソ連の残した原発の跡。独立により経済的に貧困を余儀なくされた貧しい実状など。その反面、ひまわり畑に代表さ
れる大自然も描かれる。このあたりの映像はソフィア・ローレンの「ひまわり(1970)伊」を彷彿とさせる。ひまわりでは現役の原発や建物が映っている
が、実はこれもウクライナでの撮影だったようであり、本作はウクライナのその後の姿を映しているとも言えるかも知れない。
シリアスのようでコメディでもある。ちょっと不思議な感覚の映画だったが、こういうのに慣れていない私には結構楽しめたので、高評価をつけます。
興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★★
感涙度★★