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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「パラダイス・ナウ  評価★★★ 自爆テロに身を投じるパレスチナ人の若者
PARADISE NOW
2005
  フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ 監督:ハニ・アブ・アサド
出演者:カイス・ネシフ、アリ・スリマン、ルブナ・アザバル、アメル・レヘルほか
90分 カラー 

 
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 イスラエルと対立関係にあるパレスチナの自爆テロに身を投じる若者たちを描いたヒューマンドラマ。テロを扱った映画と言えば、どちらかというとイスラエ ル視点やアメリカ視点でのものが多いが、本作は自爆テロ実行側からの視点で描かれた希少な作品である。もちろん、アラブ系制作の映画もないわけではない が、とかく過激な内容になりがちな中、比較的穏やかな視点と展開を見せているのが好印象だ。
 監督はパレスチナ人であり、パレスチナの置かれた環境とパレスチナ人の考え方をしたたかに描いている。決して政治的な匂いが強いわけではないが、やはり その背景には根深いユダヤ人とパレスチナ人の対立というものが見え隠れする。遠く離れた我々日本人にはなかなか理解しがたい題材であり、どちらが正しくて 自爆テロが正攻法なのかという難しい課題はあるが、少なくとも実際のパレスチナ人がどのように思い、生活しているのかということは認識できるのが実に新鮮 だった。

 9.11テロをはじめアラブ系による自爆テロは、とかく日本の特攻隊と比較されるのだが、これまで庶民をも平気で巻き込む自爆テロと純粋な特攻隊とはま るで違うのだ、と私も漠然とイメージをしてきた。だが、本作を見ていてその違いというものが何であるのか、いささか迷いを感じた。自爆テロも特攻隊も愛 国、大義に基づく信念の結果であり、そのきっかけや決意の裏にある純粋な思い、そして逃げることの出来ない呪縛と恐怖を振り切るための確信の持ち方などに 共通項を感じざるを得なかった。自爆テロに向かう若者の未練、苦悩というものを垣間見て、結局は上層部の口車に乗せられた犠牲者でしかないということは、 ある意味同じ人間として安堵を覚えた。

 だが、自爆テロはやはり自爆テロであって、それを真っ向から正当化できない、という感情があるのも事実だ。特攻隊との分かりやすい違いで言えば、敵対す る相手が正規軍か一般民衆を巻き込むかという点なのだが、ただそれだけでは納得しがたいものがある。要は幼い頃からの刷り込みによってアメリカ人=敵と か、キリスト教徒=敵いう構図が出来上がっているのであれば、相手が何者かということは単に価値観の相違でしかなくなる。我々が一般民衆だと思っている人 物が相手にとっては敵でしかないのだから。
 その答えになるのかどうかはわからないが、本作中に「(自爆は)犠牲でなく復讐よ」と自爆を引き留めようとする女性の台詞が出てくる。なるほど、大きな 精神的な違いがここに隠されているかも知れないと感じた。日本の特攻隊員には犠牲の心はあっても復讐心で突入した者は少ないと思われる。だが、全ての自爆 テロがそうとは言えないと思うが、自爆テロの場合、教義上もしくは組織上で犠牲という言葉は用いてはいるが、その発端は復讐心にあるのかもしれない。

 映像はパレスチナの雰囲気を良く感じることが出来る。貧困と紛争にまみれた環境の中ながら、したたかに生きるパレスチナ人の姿はある意味新鮮だ。
 ストーリー的にはもう少し自爆テロを決意する背景が理解できると良いと感じた。イスラム教の教義への馴染みが薄い日本人にとっては、聖戦や殉教といった ニュアンスがわかりづらいからだ。とはいえ、必然的に欧米主導の勧善懲悪型の作品を見る機会が多い中、こうした異なった視点での作品はレアだ。

興奮度★★★
沈痛度★★★★

爽快度★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 ヨルダン川西岸ナルブス。イスラエル占領地に住むパレスチナ人の若者サイードとハー レドは自動車修理工場で働いているが、顧客を怒らせてハーレドはクビになってしまう。サイードはフランス生まれモロッコ育ちの殉教者英雄アブ・アザームの 娘スーハに恋心を抱く。
 そんな二人の所にテロ組織のジャマールがやってきて、二人にテルアビブでの自爆テロ指令が下る。明日という急な指示だが、モサドに殺害されたリーダーの 報復のため、二人の覚悟は出来ていた。二人は家族にも告げず、家族とのわずかな時を過ごし、準備に取りかかる。
 腹に巻いた爆弾は自分では取り外せない仕組みになっていた。二人は辞世のビデオで聖戦の意義と決意を語り、殉教者となることに誇りを感じるのだった。
 作戦は二年ぶりの重要な作戦で、イスラエル兵や警察官を見かけたらやられる前に自爆しろと言われる。一人が先にやり、15分後にもう一人が自爆する手は ずとなった。サイードは果たして正しいことなのかと疑問を感じるが、二人は案内役のイスラエル人に連れられて国境フェンスを越える。しかし、裏切られて、 イスラエル軍に発砲されてしまい、ハーレドはアジトに戻るが、サイードははぐれてしまう。テロ組織のリーダーアブ・カレムはサイードが裏切ったとしてアジ トを撤収する。ハーレドはサイードを探し始める。
 サイードはいったんは実行しようとイスラエル国内に再潜入するが、元に戻りスーハと再会するが去っていく。ハーレドはサイードをようやく見つけ出すが、 サイードは自決しようとしていた。スーハは自爆テロは犠牲ではなく復讐でしかない、もっとモラルの戦いをすべきと諭すのだった。ハーレドはもう自爆はやめ ようと言うが、サイードはもう一度チャレンジすると決心し、ハーレードも一緒に行くことに。
 イスラエルに潜入した二人だが、サイードはハーレドをパレスチナに送り返し、イスラエル兵の乗るバスに乗る。ハーレドは泣きながらパレスチナに戻り、サ イードの家ではジャマールやアブ・カレムが殉教者として母親を讃えるのだった。


(2008/11/28)