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戦争映画の一方的評論
 
「セイビング・フロム・エネミーライン 評価★★ 平和活動の学生が目撃したボスニア内戦下の虐殺
War Crimes
2005 イギリス  監督:ニック・S・トーマス、マイケル・G・トーマス
出演者:アール・パーマー、ヴィクトリア・ジェンキンス、クリス・ホプキンス
ほ か
81分 カラー 

 

 イギリスのオリジナル(独立系)ビデオで、通称トーマスブラザース製作の戦争映画。低予算映画と思われるが、一生懸命頑張った雰囲 気だけはわかる作品。こうしたレアな作品をDVD化してくれるトランスワールドアソーシエイツには感謝ものだ。

 ストーリ−は、平和活動を行うイギリスの学生男女6人が、内戦下のボスニアでセルビア軍の虐殺を目撃し、それを撮影したフィルムを巡って追撃・逃亡が繰り広げられ る、といったものだが、エンディングにはいかにも実話に基づいたかのようなテロップも出てくる。ただし、果たして実話なのか、それに基づいたものなのかは不 明。
 暴力による虐殺を糾弾する「平和活動」がメインテーマで、人道的な見地からユーゴ紛争における非人道的行為を告発するという、いわば思想的な企図を色濃 く出した映画であるが、それ以上にそもそも「平和活動」とは何ぞや、という逆説的な意味でも考えさせられるところが大きかった。
 イラク戦争では平和活動家の某日本人の拉致事件などがあったが、それと重ねてみるべき視点も多く、果たしてこうした戦地での平和活動が意味があるのか、 そして果たして正義なのか、という点でいくつかの重要な命題があることに気づかされる。第一に、丸腰の平和活動家が虐殺という過程を阻止しうるかという命題。第二に、自らの 命を投げ打ってまでの覚悟がある(価値がある)のかという命題。そして第三に、虐殺加害者に対面した時、自らが殺人者にならずにいられるのかという命題で ある。結論から言ってしまえば、平和活動とは自己の価値観(信念)に基づいた独善的行為でしかなく、命の大切さ、命を救うという観点で言えば、大いなる矛 盾を抱えている。特に、ユーゴ内戦という民族間、宗教間での抗争では、第三者が介入する事が極めて難しいのである。
 本作のイギリス人学生の行動を、実に愚かしいということも簡単だし、勇敢であったというのも簡単である。しかし、それは彼らを外部の者(第三者)として 見ているからであって、実のところ、彼ら自身が第三の敵(当事者)になってしまっているという事実に注目したい。当初は平和ボケだった学生たちが、敵の厳 しい拷問に耐え、死をも厭わない行動を取る、という設定自体にはかなり違和感と不自然さを感じるが、それはさておき、彼らが死を賭して守ろうとするフィル ムが、結局虐殺者の告発のためでしかなかった、万人の平和や生命のためではない、というのは重要なポイントである。イラク戦争において、「平和主義者」から世界の警察を自称するアメリカが 非難されるように、「他人の庭で勝手に裁く」という行為と本質的に何ら変わりはないのだ。こうした行為が正義なのか、必要なのかということを自問する上 で、本作が与える命題は重たい。
 なお、本作はユーゴスラビア紛争のうち、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992〜1995年)を舞台としており、善玉をムスリム軍、悪玉をセルビア軍 (ユーゴ軍)と明確に分けている。実際のところ、どちらも残虐な行為を働いているのであって、一概に善悪をつけられないのだが、大抵のボスニア紛争映画「ウェルカム・トゥ・サラエボ(1997)」「セイヴィア(1998)」「エネミー・ライン(2002)」ではセルビア軍が悪者風に描かれることが多いのはちょっと可哀想な気もする。

 撮影はイギリスで行われているが、ほとんどが原野と森林シーンなので、あまり違和感はない。ただ、映像はビデオのようで、映像の視界がやや狭く、フラッ シュ映像のような駒落とし的手法を多用した、「バンド・オブ・ブラザーズ」のようなハンディカメラ映像が多い。戦闘シーンでのリアル感を産むための方法なのだ ろうが、本作の場合、やたら画面が揺れるのが目障り。やりすぎると単に手抜きか安物的な印象しか残らない。また、編集技術も稚拙で、フェードアウトや暗転 を用いるつなぎ方は安直で、まるで全編を通してダイジェスト版を見ているかのようだった。時間的経過を示したり、迫り来る時間との戦いを見せるには効果的 かも知れないが、全編通してやられると鬱陶しい以外の何者でもない。さらに、音楽チョイスが悪く、戦闘シーンとピクニックシーンが交互にやってくるような ふ抜けた雰囲気はストーリーの緊迫感を阻害している。
 役者の演技も、やはりオリジナル系の域を出ていない。頑張っているのは評価するが、メイン以外の兵士役の動きや表情は単なるエキストラレベル。もっと必 死に走れよ、と言いたくなる。加えて、主役級の学生たちについても、半数はただいるだけといったレベル。演技力もさながら、役の設定にも疑問が多かった が。ヒステリックで馬鹿な男子学生がちょっと良い味出していたが、ひ弱だったはずがセルビア軍の拷問にも口を割らないというのには興ざめ。ランボー並の精神力だ。当 然、そこは泣き叫んで命乞いだろうと思うのだが。
 好感だったのは、ただでさえ困難な内紛背景を会話の中で色々と説明してくれた点。ストーリーとしてはやや説明的なものになってしまってはいるが、理解す るうえで助かった。また、登場人物も名前を何度も出してくれたので、理解しやすい。

 登場する兵器としてはヘリが1機のみ。機影からユーロコプターのSA330ピューマのように見える。あとは主役の乗るランド・ローバーくらい。戦闘シー ンは、リアル感を阻害しないギリギリの線。射撃姿勢や発射、着弾シーンにチープさはあるもののまずまず。ただ、銃器の発射映像と銃撃音声が今ひとつマッチ していないシーンがあり、BGMとして射撃音が入っているかのような印象はいただけない。格闘シーンもまあまあだが、肝心な所を下手なカメラワークで潰し てしまっているのが残念。それにしても、足を負傷して歩けなかった兵士が、格闘戦では元気よく立ち回っていたのは不自然だ。

 全体としては、スケール感の小さい小者映画で、ストーリー展開や登場人物の行動にちょっと無茶な設定も多いのだが、、題材の深さという点では特筆出来る 作品と言えよう。邦題は明らかにエネミー・ラインを意識したものだが、あんまり感心できない。


(参考)
ユーゴスラビア紛争(wikipedeia)
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(wikipedia) 


興奮度★★★
沈痛度★★★

爽快度★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

  1992年のボスニア・ヘルツェゴビナ。4月2日、キャッシー(女)、ペッキー(女)、クレア(女)、ニック、ポール、スコットのイギリス人男女学生6人 はユーゴでの民族浄化を名目にした虐殺に抗議するため「平和活動」としてサラエボに向かった。道案内はクリストフで、彼の運転するランド・ローバーはサラ エボに向かうが、途中で休戦状態だったセルビア軍がサラエボに侵攻したとの情報を得る。セルビア軍とともにゲリラのチェトニクス軍も関与しているようだ。 ニックは「戦闘に抗議しにサラエボに行こうと」と叫ぶが、クリストフは危険と判断し、国境に戻ることにする。
 夜道は危険なため森で一泊し、翌4月4日、道を進んでいくと炎上するミリシナ村を発見する。クリストフ、ポールらが偵察に行くと、そこではセルビア軍の マルコヴィッチ大佐やチェトニクス軍のブルッコ中尉らが村人を銃殺していた。ポールらはその光景をカメラに納めるが、その姿が見つかり、クリストフは射殺 されポールも腹部に重傷を負ってしまう。キャッシーらはスコットの運転でその場から逃げるが、ブルッコ中尉らがフィルムを奪おうと追跡を開始する。また、 ドレスノス軍曹の部隊が先回りしてゼニツェの町に向かう。ポールは瀕死となり、ランド・ローバーはオイル漏れで故障する。道路上にはユーゴ軍第42連隊が 接近しており、キャッシーらは森の中へ徒歩で逃げ込む。
 4月5日、森の中でポールが野犬に襲われて死亡。さらに、地図を奪おうと発狂したニックが崖から転落して行方不明に。そのニックは追跡してきたブルッコ 中尉に捕まり、厳しい拷問を受ける。残ったキャッシーら4名は森の中を進むが、そこで待ち伏せした兵士と遭遇する。彼らはムスリム軍の兵士で、セルビア軍 を追っていたのだった。虐殺フィルムを持っていることを知ったムスリム軍の隊長マサノヴィッチは、彼らを保護してゼニツェに向かうことにする。ゼニツェは 唯一セルビア軍に占領されていない地域なのだ。
 ムスリム軍は隊長のマサノヴィッチのほか、ペギール、ファディル、ザイム、メミッチ、傭兵2名らがおり、傭兵は激しくセルビア人を嫌いアメリカをも嫌っ ている。先行して偵察していたファディルらはセルビア軍の小隊を発見し殲滅する。しかし、そこで発見した無線機からはニックを盾にフィルムを要求するブ ルッコ中尉の声が聞こえてくる。マサノヴィッチが要求を断ったため、ニックは射殺される。
 4月6日、ゼニツェに近づいた一行だが、すでにゼニツェはセルビア軍の攻撃に会い、占拠された。マルコヴィッチ大佐はブルッコ中尉に大学生らの捕縛を命 じるが、チェトニクス軍のブルッコ中尉は実はフィルムを使ってユーゴ軍のマルコヴィッチ大佐の失脚を狙っていた。ブルッコ中尉の追跡に反撃しながら一行は 逃亡するが、ファディルが足を負傷し、ペッキーが死亡。ファディルは単身残って敵の追跡を絶つこととする。ファディルはブルッコ中尉と1対1の格闘戦の末 戦死する。
 4月7日、大学生とムスリム兵はセルビア軍に包囲される。マサノヴィッチは死を覚悟で残って援護し、大学生を逃がすこととする。先頭を傭兵が走り、その 後をキャッシー、クレア、スコットの3名が走る。その途中でクレアが撃たれて死亡。スコットも足を撃たれる。スコットはキャシーにフィルムを託し、走らせ る。スコットはブルッコ中尉に捕らえられるが、隙を見てファディルから貰ったナイフでブルッコ中尉を殺害する。その頃、キャッシーは無事危険地帯を抜けて いた。
 キャッシーの持ったフィルムは虐殺の証拠となり、マルコヴィッチは1997年に逮捕、02年に起訴された。スコットは行方不明のまま。あのムスリム兵達は生存の記録はない。ファディルの行為は伝説となり、国民的英雄となる。 


(2007/01/03)

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