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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「ブラックブック 評価★★★★ レジスタンスに潜むスパイは・・・絶妙なサスペンスドラマ
BLACKBOOK
2006  ドイツ・オランダ、ベルギー・フランス 監督:ポール・ヴァーホーヴェン
出演者:カリス・ファン・ハウテン、トム・ホフマン、セバスチャン・コッホ ほか
144分 カラー 

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 オランダの巨匠ヴァーホーヴェン監督の手がけた壮大なサスペンスドラマ。第二次世界大戦時のオランダを舞台に、占領者ドイツ軍とオランダレジスタンスの情報戦・破壊活動を、複雑に絡み合う人間模様として描いた。性を武器にして戦う女性、ユダヤ人迫害、裏切り行為、戦後のナチ協力者狩りなど、辛辣な社会風刺は健在。幾度にも渡るどんでん返しに、すっかり画面に引き寄せられる。
 だが、ヴァーホーベン作品にしては、過激な性描写やブラックユーモアという点では、やや丸く収まった感もあり、反面、一般の視聴者にとっては娯楽映画として十分楽しめると言う点で、完成度が高いとも言える。

 オランダはもともとドイツ系住民も多いことから、親ナチス派も少なくなく、ユダヤ人迫害もひどかったと言われる。そうした複雑な状況下で、主人公のユダヤ人女性が生きていくのは実に過酷なことだ。ユダヤ人であることを隠すためアンダーヘアの色さえ染め、性を武器に、したたかに生き抜く術は、実にたくましい。
 さらにオランダ人であってさえも、密告、裏切りの中、疑心暗鬼になっていく。ドイツ軍諜報部の策略とはいえ、人間の弱い部分を巧みに利用していく様は、まさに恐怖である。
 このような、混乱した状況やオランダ人の国民性については、同監督の「女王陛下の戦士(1977)」が詳しく描いている。
 一方、人間である以上、愛情や友情が芽生えるのも必然である。本作でも、敵味方を超えての愛情、友情が一抹の清涼剤として描かれている。自己の保身を図り、疑心暗鬼になる中、それでも信念を貫き通す、人間の尊厳というものが見事に描かれている。この点が、ヴァーホーヴェン監督の意図するところでもあるのだろう。

 ストーリーはかなり複雑な部類にはいる。上映時間も長めだが、サスペンスドラマとして単純には終わらない。重要なターニングポイントの場面が幾度もあるのだが、それぞれが適度な描写で的確に次のシーンにつながっていくので、流れとしてはかなりスムーズだ。これだけ複雑な構成をよくぞここまでまとめ上げたものだと感心する。
 ただ、戦争物という観点で見た場合、ちょっときれいにまとめすぎていて、真に迫る迫力には欠けた。ドイツ軍の将軍、ムンツェ大尉、フランケン中尉がそれぞれ表面的な性格付けだけで終わってしまっているので、その背後にある戦時の異常さというものが伝わってこない。例えば、ムンツェ大尉の妻子が連合軍空爆で死んだことを告白するが、その辛さや怒りがほとんど表現されていないため、彼の連合軍、オランダ人に対する感情を読み取ることができなかった。また、オランダレジスタンスにしても、組織の構成や闘志の性格付けがやや甘かったため、何のために抵抗しているのか、対象は何かといった点がややぼけてしまい、熱気が伝わってこなかった。また、主人公エリスも目の前で両親を殺害された割に淡泊な印象だった。とはいえ、その辺りを濃くしてしまうと、きっと本作のバランスが崩れてしまうのだろうけど。

 映像的にはややこじんまりとしたセットが多いが、鮮明な画像が印象的。 
 主役エリス役のヌードは美しい。それでいて汚物を頭から被るなど、いわゆるエログロ路線のヴァーホーヴェンの片鱗を感じる(笑)。汚いフランケン中尉が迫ってくるのも、妙に美女と野獣的興奮がある。
 
 タイトルのブラックブックは・・・もっとストーリーの核心にせまるキーかと思ったが・・・。あんまり関係ない(笑)。
 とにかく、これだけの社会風刺を盛り込みつつ、壮大なサスペンスを作り上げた監督に脱帽なのだ。


興奮度★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★★★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1956年10月、イスラエルのキブツに一人のオランダ人女性が旅行してくる。そこの施設で子供たちを教えていたユダヤ人女性を見て「エリス」と叫ぶ。二人はかつてのオランダで知り合いだった。帰り際ユダヤ人女性は「私はラヘル・ローゼンタールよ」」と言う。

 1944年9月のオランダ。ドイツ軍に占領され、ユダヤ人の迫害が酷くなっているおり、歌手だったラヘルは良心的なオランダ人に匿われていたが、連合軍の爆弾で家が倒壊。知り合ったオランダ人青年に匿われるが、身分がばれて自称レジスタンスのファン・ハインと名乗る男にオランダ南部への逃亡を勧められる。そこで、父と旧知のオランダ人公証人スマールの元へ行き、お金を工面して貰い脱出を開始する。途中で、両親や弟とも合流し、船に乗って暗闇の中を進んでいく。しかし、そこにはドイツ軍が待ち伏せており、ラヘルを除き全員が射殺されてしまう。死体から金品を奪うドイツ兵の姿を眺めるラヘル。
 ラヘルは良心的農民に助けられ、髪を染め、エリス・デ・フレースと名乗ってオランダに戻る。レジスタンスのヘルベン・カイバースの元で働くこととなるが、5ヶ月後、レジスタンスへ協力を求められる。レジスタンスにはハンス・マールテン、共産主義者のティム、弱々しいテオらがおり、連合軍からの武器空輸品を回収に向かう。そこでドイツ軍に見つかってしまうがハンスが窮地を救う。
 列車に乗って銃を輸送する任務の最中、危機を乗り越えるためエリスはドイツ軍諜報部の指揮官ムンツェ大尉と知り合いとなる。一方、銃の輸送中の事故でヘルベンの息子ティムら3人が捕まってしまう。
 ヘルベンは息子を救うため、エリスにムンツェに近づいてくれないかと頼む。当然、女の性を武器にするのだ。エリスはそれを受入れ、ムンツェの女となってドイツ軍司令部に潜入する。そこには両親を殺害した張本人フランケン中尉がおり、その愛人ロニーがいた。ロニーの口利きでエリスは司令部での職を得て、公証人スマールの勧めで盗聴器を仕掛ける。
 スマールとムンツェは休戦を交渉中だったが、レジスタンスを処刑したいフランケン中尉とムンツェ大尉は対立していた。盗聴器によって、フランケン中尉のもとにファン・ハインがユダヤ人の情報を持ってきていることが判明。ハンスは勝手にファン・ハインの誘拐を計画し、実行するが、失敗してテオが撃ち殺してしまう。これにより、休戦交渉が決裂し、ヘルベンの息子ティムの命が危うくなってしまった。ムンツェはエリスがレジスタンスであることを察知したが、本当のことを話すことでそれを許す。さらに、ムンツェ大尉は立場を失い、命令違反として逮捕、処刑されることに。
 口論するヘルベンとハンスだったが、スマールがドイツ軍司令部の地図を入手。強引な捕虜救出を計画する。エリスはムンツェの救出を条件に手伝うことを承諾。エリスは本気でムンツェに惚れていた。
 パーティーの晩、エリスが鍵を開け、ハンスらレジスタンスは牢獄に潜入。ティムらを解放したかと思ったが、実はフランケン中尉は情報を知っており、レジスタンスは一網打尽にされてしまった。命からがら逃げたハンスは、仲間にスパイがいることに気づく。
 エリスもまたフランケン中尉に捕らえられ、盗聴器を利用してスパイがエリスであると偽情報を流す。ヘルベンやハンスらレジスタンスはエリスを裏切り者だと罵る。
 ムンツェ大尉とエリスは、ムンツェの腹心の手助けで逃亡。しかし、もはやレジスタンスのもとには戻れなかった。
 程なくして終戦となる。街は連合軍歓迎の旗で一杯となり、ロニーは早くもカナダ兵の彼を作っていた。ムンツェとエリスは公証人スマールが黒幕と判断し、スマールの家に行く。スマールはそのことを認めながら手帳を(ブラックブック)を見せる。そこに謎の男が闖入し、スマールを射殺してしまう。男を追いかけたムンツェは戦犯として捕らえられ、エリスも裏切り者として刑務所に入れられてしまう。
 ムンツェは寝返ったドイツ軍カウトナー大将によって処刑されてしまう。エリスも刑務所でひどい仕打ちを受けていたが、そこに英雄となったハンスがやってきて助け出す。しかし、ハンスの家に連れて行かれたエリスは大量のインシュリンを打たれてしまう。実はハンスは1944年2月に逮捕歴があり、フランケン中尉の脅しに屈し、ユダヤ人を売っていた張本人だったのだ。さらに、フランケン中尉すら殺害し、ユダヤ人から奪った財宝を独り占めにしていた。エリスはチョコレートを多量に食べ、窓から逃げ出す。
 息子の遺体を発掘していたヘルベンのもとにエリスがやってくる。強く怒っていたヘルベンだが、エリスから真相を聞かされてハンスを追うことにする。ハンスはすでに財宝をもって霊柩車に乗って逃亡中であった。すぐさま、霊柩車を追跡し、ついにハンスを追いつめる。エリスはハンスが隠れている棺のふたをきつく締める。暴れていた棺のなかのハンスが、やがて静かになる。

 イスラエルのキブツ・シュタイン。それはユダヤ人犠牲者の資産によって建設されたものであった。

(2008/03/04)