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戦争映画の一方的評論
 
「父親たちの星条旗 評価★★★★ 硫黄島に掲げられた星条旗を巡る逸話
FLAGS OF OUR FATHERS
2006 アメリカ  監督:クリント・イーストウッド 製作:スティーブン・スピルバーグ
出演者:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、バリー・ペッパー
ほ か
132分 カラー 

 

  さすがアメリカ映画だけあって戦闘シーンの迫力は満点。あの「プライベート・ライアン」に勝ると言ってもいいぐらいのリアル感と想像以上の戦死体映像のグロさに は圧倒された。本作は日米決戦の硫黄島の戦いを題材にしてはいるが、主題は擂鉢山に掲げられた星条旗を巡る海兵隊兵士達の名誉と苦悩の物語であり、激しい 戦闘シーンは全編の半分程度に過ぎない。しかし、飛び交う弾丸、発射される砲弾、飛び散る着弾、そして倒れ行く兵士の姿のインパクトは戦争映画を見慣れた 私でも強烈で、星条旗の話は脳内からぶっ飛んでしまうのだ。ちょっと過多気味のフラッシュバックの使用によって、星条旗を巡るヒューマンドラマと硫黄島で の戦闘アクションを交互に織り交ぜてはいるものの、どうしてもスムーズにストーリーに入っていけない。それほど戦闘シーンのインパクトは強かった。
 脚本は良くできていたと思うが、編集の仕方にもう少し工夫が欲しかったところ。ただでさえ複雑な内容だったので、視聴者が理解しやすいようにもっと単純 化した流れでも良かったのでは。クリント・イーストウッド監督作品としてはなかなかの出来だと思うが、製作のスピルバーグはどのような関わりをしたのだろ うか。少なくとも映像という観点では満点に近い。

 改めて言うまでもないが、硫黄島の戦いは1945年2月16日から約1ヶ月間に渡って行われた激戦だが、本作は2月23日に擂鉢山に2枚目の星条旗を掲 げ、その後米国戦時国債PRに利用されたジョン・"ドク”・ブラッドリー衛生下士官の息子が書いた「硫黄島の星条旗」を原作としている。従って、息子が父親のことを調査していくという設定のもと、回顧録的に父ブラッドリーが3月 12日に負傷するまでの戦闘が映画中に登場する。擂鉢山に星条旗が掲げられたAP通信ジョー・ ローゼンタールの写真はピュリッツァー賞を受賞するなどで著名だが、実はそれが最初の掲揚ではなく2枚目の星条旗であったことが最近知られている。アメリ カ国防省はその歴史的写真に写っていた兵士を戦時国債購入のPRのために利用するのだが、それが2枚目の星条旗の写真であったことで、様々な確執を産むの である。2枚目の星条旗を掲揚したのはジョン・ブラッドリー衛生下士官のほか、レイニー・ギャグノン一等兵、アイラ・ヘイズ一等兵、マイク・ストランク軍 曹、ハンク(ヘンリー)・ハンセン三等軍曹、フランクリン一等兵の6名だが、うち3名は硫黄島で戦死している。生き残った3名が「英雄」と奉られ、国の策略の渦に巻き込 まれていく過程が生々しく描かれている。海兵隊の兵士としての誇りと英雄として奉られることの葛藤、生き残った者の死んだ者へ罪悪の念、そして激戦のトラ ウマ。ベトナム戦争でもイラク戦争でも言われるように、兵士の戦後は死ぬまで来ないのだ。戦勝国の兵士でさえこのように精神をズタズタにされるのだという こと、そして国益という大きな力や本国の国民の感情がいかに戦地の兵士と乖離しているかということをまざまざと見せつけられる。

 アメリカ映画の場合、本名と愛称がごっちゃに用いられるため、名前と顔が一致しにくい。本作もご多分に漏れず、ネイティブインディアンを除いて登場人物 がわかりにくかった。一応登場するたびに右側に名前のテロップが出るのだが、フラッシュバックを多用する上、老後の姿まで登場するためかなりの注意が必要 だ。わかりやすかったのは「ウィンドトーカーズ」に登場したアダム・ビーチ(アイラ一等兵役)と「プライベート・ライアン」のバリー・ペッパー(マイク軍 曹役)。この二人の演技が目をひいたし、本作の大きなアクセントになっている。

  さて、注目の戦闘シーンだが、撮影は一部硫黄島でも撮影したそうだが、大半はアイスランドのレイキャネクという半島だそうだ。黒い砂を大量に運び込んでの 撮影だったそうだが、砲の着弾シーンは黒い砂を有効に利用した砂の飛散で迫力満点。銃の弾着もおかしな点はなくなかなかリアル。もちろん、CGも多用され ている と思われ、飛び交う銃弾や海岸に押し寄せる上陸用舟艇(LVTやLCVP)シーンはCGだろう。また、擂鉢山の映像がリアルに迫ってくるがこれも多分CG と思われるが、実写 にCGを被せているのかも知れない。それほど、CGと実写の区別がつかない位リアルに仕上がっている。特に、擂鉢山の山腹にある日本軍砲台やトーチカから 放たれる銃砲のイメージシーンは、小説等では想像できない映像であり、擂鉢山攻防のイメージを理解する上で大変興味深かった。また、米軍戦闘機コルセアも CGと思われるがなかなか良くできていたが、コル セア機内からの視点映像は特に新鮮だった。このほか、戦艦等からの艦砲射撃も良くできていた。
 実写と思われる兵器類は、一部の上陸用舟艇LVT-4、LCVPと一瞬出てくる戦車、沖に待機する輸送船、C-47輸送機(DC−3)くらいだろう。戦 車揚陸艦は微妙なところ。そう考えるとあの迫力ある画面を作り出すのにいかにCGの力を借りているのかがわかる。これでCGの出来が悪ければ最悪だったろ うが、戦闘シーンにはモノトーン風に減色した映像を使っていたのがCGのアラをカバーする上で効果的だったと思われる。
 なお、着衣からはレイニー一等兵とアイラ一等兵は海兵隊だが、ブラッドリー衛生下士官は海軍所属のようだ。しかも肩章から二等兵曹クラスの下士官と思われるのだが、他の二名が結構タメ口なのがちょっと気になる。

  全体としてみれば、ストーリーの難解さという欠点はあるものの、他に非の打ち所もなく起承転結もしっかりとある良作といえる。欲を言えば、もう少し視聴者 側に訴えかけるようなシチュエーションがあっても良かったが、あまりそれをやりすぎるとノンフィクションから逸脱してしまうので、まあこんなものかな。内 容的にはアメリカ国旗星条旗の話なので、アメリカ人にとっては直立不動的感傷の濃い作品だったのだろうが、日本人にとってはやや興味薄。むしろ不謹慎だ が、結末を知っているだけに、日本軍トーチカからの機銃掃射でバタバタと倒れ行く海兵隊員や砲台からの水平直射で破壊されるアメリカ戦車や艦艇には感無 量。ただ、日本兵による虐殺エピソードは気にくわない。虐待や虐殺死体シーンはカットされていたが、虐殺行為はアメリカ兵も同じ事をしているはず。投降兵 の射殺や無抵抗者の焼き殺しなど。そう言う所をしっかり描ききっていないのはやはりアメリカ映画だからこそ。
 「プライベート・ライアン」を超えるかどうかは、二部の「硫黄島からの手紙」の出来如何にかかっている。

公式HP 

興奮度★★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★★
感涙度★★

(参考になるHP)
デタッチメント作戦(硫黄島攻略)(アメリカ海兵隊研究サイトさんHP)
http://www.iwojima.com/
Battle of Iwo Jima(wiki)
Operation Detachment: The Battle for Iwo Jima February - March 1945

硫黄島関連の映画
硫黄島の砂(1949)
硫黄島(1959)
硫黄島の英雄(1961米)The Outsider

硫黄島関連書籍
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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 ピュリッツァー賞を受賞した有名な硫黄島に星条旗を掲げる写真に写っていた兵士の一人、ジョン・ブラッドリー衛生下士官は生前硫黄島の戦いのことについて語ることはなかった。ブラッドリーの息子は硫黄島のこと星条旗のことを父の戦友たちに聞いて回る。
 1945年2月16日、ブラッドリー衛生下士官の配属された第5海兵師団第28海兵連隊E中隊はセベランス大尉のもと硫黄島に上陸作戦を敢行する。3日 間に渡る先行爆撃にも関わらず、日本軍の兵力はほとんど消耗しておらず、ベテランのマイク・ストランク軍曹が指揮するブラッドリーの分隊も上陸後の激しい 日本軍の攻撃で次々に負傷者を出していく。それでも、海兵隊員の勇敢な戦いにより日本軍トーチカが次々に潰されて行ゆき、2月23日午前10時15分つい に擂鉢山山頂に星条旗を立てることが出来る。星条旗を最初に立てたのは先行偵察に向かったシュリアー中尉の小隊でそのうちの一人にハンク・ハンセン三等軍 曹の姿もあった。この歴史的象徴である星条旗を海軍長官が欲しがったため、急遽第28連隊長は代わりの星条旗を掲揚するよう大尉に命じる。大尉は星条旗の 運搬を伝令兵のレイニー・ギャグノン一等兵に命じる。レイニー一等兵は「タイロン・パワー気取り」の男で自信過剰な性格のためマイク軍曹により前線からは ずされていたのだ。一方、マイク軍曹は頂上まで電話線の架設を命じられ、部下と共に山頂へ向かう。
 山頂ではすでに従軍カメラマンルイス・ロワリー二等軍曹により最初の星条旗掲揚シーンが撮影された後であったが、12時15分代わりに運ばれてきた星条 旗を付け替えて掲揚し直した所をAP通信のジョー・ ローゼンタールがカメラに納める。この写真が先に本国へ送信され、主要紙の紙面を飾ったために掲揚シーンに写った6名の兵士が「英雄」として奉られること となる。この写真は後ろ姿であり、調査によってマイク軍曹、フランクリン一等兵、ハンク三等軍曹、レイニー一等兵、アイラ一等兵、そしてブラッドリー衛生 下士官であることが判明する。
 アメリカ軍部は即座にこの写真の英雄を使った戦時国債のPRを企図し、海軍のキース・ビーチ一等軍曹がその世話にあたる。しかし、6名のうちマイク軍 曹、フランクリン一等兵、ハンク三等軍曹はその後の戦闘で戦死しており、残った3名が本国へ送還される。レイニー一等兵は乗り気だが、ネイティブインディ アンのアイラ一等兵は自分は英雄ではないと固辞する。さらに、ハンク三等軍曹と思われた人物は間違いで、ハーロン・ブロック伍長であることが判明する。し かし、今更明らかにするわけにもいかず、3人は戦時国債PRの担当官バド・ガーバーの命じるままに「英雄」として全国を行脚し、国債PRに努めるしかな かった。
 しかし、前線で戦ったアイク一等兵やブラッドリー衛生下士官にとって、星条旗掲揚の英雄はまやかしでしかなく、味方の砲弾に倒れたマイク軍曹をはじめ、 フランクリン一等兵、ハーロン・ブロック伍長、ハンク・ハンセン三等軍曹ら死んだ兵こそ英雄だという葛藤と、狂気の沙汰であった戦場のトラウマ、さらにハ ンク三等軍曹の母親に嘘を付き続ける苦悩に悩まされ続ける。ついに、アイク一等兵は酒に溺れるようになり、見かねた海兵隊司令官はアイクを戦地に戻す。一方、レイニー一等兵は婚約者ポーリーと結婚し、それさえも国債PRに利用するのだった。

 ブラッドリーらが実家に戻れたのは結局終戦後のことだった。ブラッドリーは親友だったラルフ・”イギー”・イグナトースキーの母親を訪ねて彼の最期を伝 える。アイクもまた酒に溺れた人生だったが、ハーロン・ブロック伍長の父親を訪ね、写真に写っていたのが彼であることを伝える。戦時国債PRを人生の出世 の糧にしようとしていたレイニーは、戦後は冷たくされあえなく失意の人生を送る。一枚の写真がもたらしたものは、兵士達の狂わされた人生だったのだ。


(2006/10/29)

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