オンラインDVDレンタル ぽすれん

 
オンラインDVDレンタルなら『TSUTAYA DISCAS』!

かぽんの戦争映画
一方的評論
 
ナチスの墓標-レニングラード捕虜収容所-  評価★★☆ 捕虜収容所での露女性兵と独捕虜の交流と悲恋
IN TRANZIT
2006
  ロシア・イギリス 監督:トム・ロバーツ
出演者: トーマス・クレッチマン、ダニエル・ブリュール、ヴェラ・ファーミガ、ナタリー・プレス、ジョン・マルコヴィッチほか
113分 カラー
 
  
DVD検索「ナチスの墓標」を探す(楽天) 

 第二次世界大戦終了後の1946年、ソヴィエトのレニングラードを舞台に、捕虜収容所に収容されたドイツ兵捕虜と看守役のロシア人女性兵たちとの騒動と 交流を描いたサスペンス風ラブロマンス。日本兵のシベリア抑留でも著名だが、ソヴィエトは戦後も長く捕虜を違法に抑留酷使し続け、残酷な仕打ちの末に多大 な死者を出している。本作ではドイツ軍捕虜に対する残忍な仕打ちを描きつつ、ほのかに香る淡い恋を交えたストーリーとなっている。
 本作中に「実話に基づく」と言う標記が見られるので、何かベースになる逸話があったのだろうが、本作中からどこが実話でどこがフィクションなのか判別で きる要素はなく、全般に作り話の印象が強い。ただ、原作者がナターシャで、主人公のロシア人女医もナターシャなので、もしかもすると作者の自伝なのかもし れないが。まあ、それにしても余りに出来すぎのストーリーなので、相当脚色はされているような気はするが。
 それにしてもロシア・イギリス作というのは珍しい。映画的にはソヴィエト映画の叙情的系譜もイギリス映画の生真面目さも余り感じられない。どうも制作会 社はカナダの新興者らしいので、なるほど納得。

 全般にサスペンスものとしては悪くない緊張感を保てるのだが、いかんせんストーリー自体に起伏がなく、起承転結のバランスが偏っているために後半から終 盤にかけてのインパクトが薄すぎる。
 本作では、過酷な捕虜酷使、殺人などソヴィエト赤軍の残忍さと、何よりもソヴィエト軍やNKVD(秘密警察)の内部密告、粛正の恐怖感がじわじわと迫り 来るだけに、密告者(スパイ)の謎をもっとじっくりと描ききっていたら、ラブロマンスとのバランスで絶妙な出来になり得たかもしれない。
 また、不出来の理由として人物の性格付けが浅すぎた。サスペンスものとして人物背景を早くに描くことは避けたかったのかもしれないが、結局最後まで謎の ままで終わったり、深みがまるでないままに終わってしまった。特に主人公の一人である女医ナターシャ、その夫で精神病のアンドレイ、鍵を握るドイツ兵のボ ルトやクラウスなど、主要な人物であるにも関わらず、人物背景や性格がはっきりしないままだったのは、人物に対する思い入れを思い切り阻害した。その結 果、終盤のクライマックスもあっけない尻切れとんぼ状態の印象。

 撮影はサンクトペテルブルク(旧レニングラード)その地で行われているようだ。広場シーンなどはその片鱗もあるのだが、主な収容所シーンや廃墟シーンな どはロケセットのようだ。せっかくのレニングラードロケもさほど生かされていない感じ。映像も妙にコントラストが強くてちょっと見にくい。カメラワークも 決して上手とは言えず、テレビドラマのレベルだ。

 役者では女医ナターシャ役のヴェラ・ファーミガが特筆できる。目と憂いの表情で様々なシチュエーションを演じきっているのが良い。もちろんナタリー・プ レスとともに年齢を感じさせない美ヌードも披露している。一方、トーマス・クレッチマンはドイツ兵ボルト役を演じるが、役柄の設定にも問題があったようだ が、今ひとつ存在感なし。ジョン・マルコヴィッチはソヴィエト軍大佐役だが、目が怖い・・・。

 全般にもう一歩という出来だったが、密告の恐怖というものは堪能できるだろう。近年の日本も政権交代などで揚げ足取りや内部告発が美化されつつある状況 の中、旧ソヴィエトや北朝鮮のような密告世界の恐怖を味わっておくのも、悪趣味でいいかもしれない(笑)。
 なお、ソヴィエト抑留ものとしては「ス ターリング ラードからの医者(1958独)」「9000 マイルの約束(2001独)」などがあるが、日本のシベリア抑留もの映画がほとんどないのは非常に残念なところだ。

ナタリー・プレス ヴェラ・ファーミガ

興奮度★★
沈痛度★★★

爽快度★★
感涙度★★

映画見るなら ⇒スカパー!初期費用無料
オンラインDVDレンタルなら『TSUTAYA DISCAS』!
古本市場】激安古本・CD・DVD・ゲームソフト販売買取
新刊書籍・雑誌・DVDジェイブック
新品DVD・家電
い〜でじ!! 

(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1946年のレニングラード。女性用一時収 容所にはソヴィエト軍女性兵オルガ大尉以下が看守として勤務しており、軍医ナターシャも勤務していた。ナターシャの夫アンドレイは傷を負って精神病患者 だった。ナターシャは側に置いておきたいため収容所の門番として雇われていた。
 そこにパブロフ大佐の命令によりドイツ軍男 性捕虜51人がトラックにより移送されてくる。ドイツ兵に家族を殺された怨念からベラ・チュリナ伍長らは捕虜のウエーバー伍長を射殺するなど厳しく当た る。ナターシャは捕虜の処遇を公平に当たろうとするが、オルガ大尉はパブロフ大佐に取り入ろうと必死だった。
 ドイツ軍捕虜には寡黙なマックス・ボルト、 曰くありげなクラウスなどがいたが、若い兵ペーターは料理人の若い娘ジーナ・チョミナと恋仲になっていく。パブロフ大佐は捕虜の中に重要戦犯が隠れている とし、あぶりださせようと女医のナターシャにドイツ兵と懇意になって探れと命じる。パブロフ大佐のもとには様々な密告が届いているようで、誰かが収容所の 実態を密告しているようだった。
 ドイツ兵の戦犯には1941年のレニング ラードでの民間人虐殺に加担した第8SS騎兵師団のハインリヒ・ロンバルト大佐、エンリッヒ・ナイバッハ大尉がおり、ネーリングとミューラーと名乗るドイ ツ兵が二人と判明して絞首刑に処される。さらに、重要な戦犯がいるはずだとして、大佐はクラウス、マックスが怪しいと目星を付け、ナターシャに接近するよ う命じる。
 一方、クラウスもまた早期の解放を目論むた め、女医ナターシャに接近して誰かを売ることをマックスにけしかけるがマックスは拒否する。
 内部密告により食糧供給過多と判断した大佐 は食料を1/3に減らす。そのためナターシャは近所のユダヤ人ヤコブの車庫倉庫の作業を手伝わせることで食料を得ることを提案。ユダヤ人とドイツ人の憎悪 の垣根を乗り越えて、ヤコブやナターシャは車庫でダンスパーティーを企画する。楽器の出来るドイツ兵が楽器の練習を始める。
 ペーターとジーナは両方とも家族を失った共 感から恋仲となり、ジーナは身ごもってしまう。ナターシャは必死に隠そうとするが、密告によりペーターは食料 を盗んだ罪を被せられ連行される。しかも密告しているのはアンドレイだと判明する。食料を盗んだ罪はナターシャによってベラ伍長と判明し逮捕されるが、 ペーターは身ごもらせた罪で連れていかれる。ジーナは 悲しみ首をつって自殺する。
 突如捕虜は全裸にさせられ小屋に終結させら れる。処刑かと思われたが、水をかけられ石けんを渡される。ダンスパーティのために身を清めようというオルガ大尉らの配慮だった。だが、パーティに招待さ れたパブロフ大佐はこの機会を逃さず、スパイの女を送り込んでいた。ダンスパーティで地元のロシア人女性と捕虜はダンスを踊り、ロシア女性が見送りに来た 姿を見て、エレナ中尉やナターシャは門限を延長して捕虜を自由にする。パブロフ大佐に無碍にされたオルガ大尉も暗黙の了解だ。マックスもまた女医ナター シャの元を訪れ二人は関係を結ぶ。その帰路、マックスはクラウスに殴打され列車の線路に遺書とともに寝かされる。マックスはクラウスに罪を着せようとした のだ。だが、そこにナターシャが助けに入り、さらにパブロフ大佐がやってくる。実はクラウスはマックスの元教え子で残忍なSS幹部だったのだ。夜を共に し、マックスはナターシャにクラウスのことを密告したのだ。クラウスは走ってきた列車に轢かれて死亡。だが、マックスはナターシャが密告させるために寝た のだと知り、ショックを受ける。
 その晩、スターリンが連合国軍と合意し捕虜 の返還を決定する。捕虜たちは呼び戻され、翌朝トラックで移送されていくことに。ナターシャの夫アンドレイも大佐との約束に反し、紙で折った花を託して病 院に連れて行かれてしまう。マックスもまた移送される直前に一枚の手紙を託して去っていく。残ったナターシャは紙の花と手紙を眺め、複雑な思いで見送るの だった。

(2009/09/024)