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戦争映画の一方的評論
 
「めぐみ-引き裂かれた家族の30年- 評価★★★★ 北朝鮮拉致被害者の家族たち
Abduction The Megumi Yokota Story
2006 アメリカ  監督:クリス・シェリダン、パティ・キム 製作総指揮:ジェーン・カンピオン
出演者:拉致被害者家族
ほ か
90分 カラー 

 
 日本人なら誰もが知っている北朝鮮による「日本人拉致問題」を取り上げたドキュメンタリー映画。すでに2006年のダラス・アジアン映画祭最優秀ドキュ メンタリー賞、スラムダンス映画祭観客賞、サンフランシスコ アジアン・アメリカン国際映画祭最優秀審査員賞、オマハ映画祭観客賞、オースティン映画祭最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞するなど、国外で高く評価さ れている作品である。見に行って何が驚いたかというと、
てっきり日本の映画だとばかり思っていたが、本作は外国人監督によるアメリカ映画であったということだ。どのような意図で制作に至ったかは良く知らないが、このような作品を外国人が製作し、外国で高く評価されたことに敬意を感じる反面、日本人として不甲斐ない気もした。

 このような重たい題材を扱ったドキュメンタリー映画は、観るにはどうも気が進まないのだが、本作の場合は実にスムーズに映画に引き込まれていった。当然 のことながら北朝鮮拉致事件は国際的な政治問題であり、国内でも政治的、思想的な争点として引き合いに出される事の多い事象である。従って、ドキュメンタ リー映画という性格上、そうした政治的・思想的な偏向や誤解といった問題が生じやすいのだが、本作はそれがほとんどない。当事者国民でない外国人が制作し たと言う利点も大きいのだろうが、製作者が本当に外国人かと思うほど、多角的で綿密な取材が行われている。犯罪国家北朝鮮はもとより、拉致事件解決が後手 に回った政府と自民党、拉致事件は存在しないとまで言い切った社民党と共産党
、朝鮮総連、 「救う会」をバッシングする人々など、明らかに悪玉扱いで非難されてもおかしくないのだが、本作では明確に善玉と悪玉を色分けしない作りが好感で、暗黙の うちにそれを視聴者に理解させる手法は実に見事だった。誰がおかしくて、何が間違っているかは観ている側で判断する、というのがドキュメンタリーの醍醐味 だということだろう。製作総指揮のカンピオンは初のドキュメンタリーで、夫婦である監督も最初の長編ドキュメンタリーということなので、それぞれの思想や 思惑のない初々しさ故なのかもしれないが。
 また、本作は拉致被害者家族の心情を良く理解し、挿入されるインタビュー、コメント、映像、音楽のタイミングと選択が実にスムーズで「美しい」。ドキュ メンタリー映画に卓越した技能と思われるが、90分の映画がその2倍もの時間を観たような気がしたほどだ。挿入される音楽も映像も、全てに意味があり、次 への伏線となっているのが素晴らしい。

 ただ、ドキュメンタリー映画の内容としては、日本人として観た場合、ほとんど目新しい事はない。ほとんどが、すでにテ レビや新聞、雑誌等で知り得ている情報であり、本作から新しい何かを得るというものではない。取材が多岐にわたっていることは評価できるが、日本人として はもっと突っ込んで欲しいと思う場面も無いことはない。しかし、本作がアメリカ映画であり、外国人を対象にしたものであるということや、本事件をこうした 記録媒体に残したという功績を考えると、非常に価値の高いものであろう。事情を知らない諸外国の人々にとっては、ちょうどいいレベルになっていると思われ る。本作の評価は内容的には★3.5つだが、前述の点を加味して4とした。

 本作では基本的にドラマのような創作部分はない。全てが当事者のインタ ビューとニュース等の記録フィルムによっている。メインは横田めぐみさんのご両親であり、その柔らかい物腰がとても印象的。そこに増元るみ子さんの弟増元 照明氏が核となる人物として加わっている。増元氏は先の参院選で落選したが「家族会」の事務局長でもあり、北朝鮮が拉致を認めた際の記者会見で、怒りを込 めた「拉致を認めてこなかった国会議員、社民党、共産党の人何か言いたことがあったら連絡をください」というコメントが印象的だった。このほか、本作で重 要なキーマンとなっていたのが、拉致事件をいち早く取り上げた産経新聞の記者と報道で取り上げた朝日放送の記者。とかく感情的になりがちな流れに、第三者 的な客観性を持たせる意味で効果的だった。さらに、拉致側当事者の一人でもある元工作員安明進氏のインタビューは衝撃的。淡々と語るその口調に今なお北朝 鮮工作員の片鱗が覗く。
 一方、記録映像で登場した自民党の吉田議員はちょっと可哀想だった。政府の北朝鮮コメ支援に反対する立場でありながら、映画中では救う会との口論シーン を取り上げられてしまい悪玉のような印象になってしまっている。拉致事件の解決に向けて大きな前進を果たした小泉首相(当時)は微妙な描かれ方。後方で控 える安倍官房長官(当時)とともに、毅然とした北朝鮮外交が評価されている一方、家族会や救う会の糾弾にちょっとタジタジなのが可哀想。個人的には拉致の 存在すら否定した社民党や共産党の国会議員、朝鮮総連等の映像も欲しかったし、本作でほとんど映されることはなかったが、家族会や救う会に対する誹謗中傷 も描いて欲しかった。横田さんの署名活動中に、署名ボードをバシッと叩いて叫んでいくおばさんの姿が一瞬映った程度。ただ、この辺りは描き出すと思想、政 治色が強くなってしまうので、本作程度で良かったのかも知れないが。
 最後にちょっと気になったのは、テロップでイギリスの権威ある科学誌がDNA鑑定の結果について、骨が汚染されていた可能性があるので、DNA鑑定結果は信用できない、とコメントしたとあったこと。どういう論文だったのか気になる。

 とにかく、本作の上映中に何度も涙し、共感した。そういう題材なのだから最初から想定されていたことではあったが、
映画化されることで拉 致事件解決への機運が高まることや、諸外国の人々にも理解して貰うことが期待できる傑作と言える。それでありながらも、本作は決して重たい映画ではない。 実にソフトなタッチでスムーズな展開なので、誰しも十分に理解できうる内容となっている。北朝鮮拉致事件は未だ解決に至ってはいないが、この時期にこのよ うな映画が出来たことに感動した。

公式HP
吉田六ざえもんHP(横田さんからの手紙) 
北朝鮮による日本人拉致問題(wikipedia)
共産党、朝鮮総連批判(黒坂真氏HP) 
公明党と共産党の泥仕合(共産党HP) 
社民党の言い逃れ(社民党HP) 

興奮度★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★★
感涙度★★★★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1977年11月15日 新潟市にて中学生の横田めぐみさん(13)が下校途中に忽然と姿を消す。誘拐や家出の可能性も含め、警察の捜査も行われるが手がかりはない。両親の横田滋、早紀江さんは失踪者捜索番組等への出演で呼びかけるも行方は知れない。
  事件から2年が過ぎ、産経新聞紙上に日本海側で頻発したアベック失踪事件の記事が出る。横田早紀江さんは北朝鮮の拉致事件の可能性を疑うが、その決定的な根拠はない。
 1997年になり、北朝鮮から脱北した元工作員の証言により、めぐみさんが北朝鮮によって拉致されたことが確定的となる。 横田さん夫妻は「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(通称 : 家族会)」を発足させ、拉致問題解決の運動を開始するが、政府の対応は芳しくない。国民の反応も冷たく、政府与党の中には北朝鮮へのコメ支援を推進しよう とするものまでいた。その間、拉致被害者の家族、増元るみ子さんの父、増元正一さんや、福井で拉致された地村保志さんの母親などが亡くなっていく。
 2002年になり、小泉純一郎首相が初めて日本の首相として北朝鮮を訪れ、拉致事件の解決に光明が見え始める。ついに、北朝鮮が拉致の事実を 認め、拉致被害者13名のうち、5名生存、8名死亡という結果が知らされる。その生存者の中には横田めぐみさんの名はなく、29歳で自殺したこととなって いる。生きて帰国した5名とは対照的な結果ではあったが、横田夫妻は生きている望みを捨てず明るく振る舞う。さらに、めぐみさんの娘ヘギョンさんがいるこ とも判明する。しかし、北朝鮮の孫娘を利用した工作に横田夫妻は毅然と対応する。
 さらに北朝鮮はめぐみさんの遺骨を証拠品として提示する。しかし、DNA鑑定の結果偽物と判断される。
 毅然とした対応を迫られる政府、心ない「家族会」「救う会」へのバッシング。めぐみさんが生きていることを信じて横田夫妻、家族会、救う会の活動はまだ続くのであった。


(2007/01/07)

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