「ザ・ブレイブ・ウォー 第442部隊」
評価★★☆ フランス戦線での日系人部隊の勇敢な死闘
Only the Brave
2006
アメリカ 監督:レイン・ニシカワ
出演者:レイン・ニシカワ、タムリン・トミタ、ユージ・オクモト
ほか
122分 カラー
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第二次世界大戦において、最も多くの勲章を授与された部隊として知られる、アメリカ陸軍日系人部隊第442連隊戦闘団の活躍を描いたシリアスドラマ。登場
人物自体はフィクションのようだが、概ね史実に沿った作りとなっており、特に1944年10月のフランスにおける「失われた大隊(テキサス大隊)」救出作
戦がメインに描かれている。監督、出演者ともに日系人のようだが、監督としては名前を知られているわけではないようだ。勇敢ながらも悲壮な戦闘を題材にし
たインパクトのある映画だが、映像、編集、台詞ともに素人感を強く感じてしまい、やや残念なものとなってしまった。
第442連隊戦闘団は高級士官を除いて日系人のみで構成された部隊で、歩兵のみならず砲兵大隊や工兵中隊を加えたため、連隊戦闘団と呼ばれる。構成員の
大半はハワイ出身の日系人で、このほかに本土の日系人収容所から志願したもので構成される。さらに、イタリア戦線頃にハワイの日系人で構成されていた第
100歩兵大隊が編入されている。
日系人の勇敢な戦いぶりは、日本人を蔑視するアメリカ人の度肝を抜くほどだったが、その分死傷者の数も尋常ではなく、終戦時には連隊の人員は約半分ほど
になっていたという。イタリアのモンテカッシーノの激戦でも多くの死傷者を出したが、最も著名な活躍は1944年10月のドイツ軍に包囲され絶望視された
テキサス大隊(第34師団141連隊第1大隊のこと)救出作戦である。包囲されたテキサス大隊211名を救うために第442連隊は約800名の死者を出し
ている。この戦功により白人の士官が日系人部隊に敬意を表したエピソードが語り継がれているほどだ。本作でもそのあたりの出来事やエピソードがちりばめら
れている。同様に第442連隊を描いた作品に「二
世部隊(1951
米)」がある。
さて、本作はハワイオアフ島出身のジミー・タカタ軍曹を主人公に、所属する中隊兵士の人間模様を回想シーンを織り交ぜながら描いていく。ハワイ出身者、
日系人収容所出身者、医者、僧侶など多様な人生背景があり、アメリカ人として戦う日本人の複雑な心境を描く、ヒューマンドラマタッチの色合いが強い。しか
し、登場人物の紹介時間が多い割りに顔が覚えられず、戦死したのが誰なのかわからないこともしばしば。また、回想シーンを多様することで登場人物への感情
を高めようとする意図は感じるが、シーンの挿入の仕方、時間、エピソードの内容ともに稚拙で、逆に映画の流れを断ち切ってしまっているのが残念。全般に非
常に流れの悪い印象で、せっかくの感情移入がしきれなかった。
戦闘シーンはそこそこで、特に金がかかっているわけではない。映像は全般に暗め。それはいいとしても、先にも述べたようにシーンの挿入タイミングや時間
が非常にバランス悪いので、せっかくの迫力ある戦闘シーンがぶつ切りでもったいない。そのため、全体の戦闘像が分からないうえ、登場してくる人物に何が起
こっているのかがわかりずらい。このあたりは監督、編集等の技術の問題だろう。
登場する兵器類は森林戦がメインのため、歩兵火器のみ。航空機も戦車もなし。
本来はもっと感動するべき内容のはずなのだが、起承転結がないうえに、各シーンのバランスが悪いために半減されてしまった印象だ。加えて、第
442連隊戦闘団の動きも、テキサス大隊救出戦の全体像も明確になっていないため、戦史を追うという点でも及第点とは言えないだろう。もう少し頑張って欲
しかったところだ。
興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★
感涙度★★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
日本軍の真珠湾攻撃を受け、ハワイオアフの
ジミー・タカタの父(僧侶)はスパイ容疑でFBIに連行される。ジミーは第442連隊戦闘団に志願し、日系人兵としてヨーロッパ戦線に赴く。
1944年にフランスに渡り、ジミーは軍曹
として小隊を指揮。仲間にはリーダー的資質のあるユック(ナカジョウユキオ)軍曹、突破力のあるタク(タカセ)軍曹、幼馴染のザキ(センザキ)軍曹、ノム
(ノムラ)伍長らがいた。フランスの町に入り、司祭兄弟、少女を救出するも、待ち構えていたドイツ軍の激しい反撃を受けて被害を受け、ジミーも頭に銃弾を
受けて怪我をする。部隊衛生兵ドク(ナガヌマ)は医者で妻と子がおり、日系人収容所から志願してきた。後方に下がってきたジミーたちの傷の手当を施す。
歩兵第141連隊のテキサス大隊がドイツ軍に包囲されてしまう。第442連隊はその救出作戦を命じられて出動する。ジミーは傷のために一人残ることに。し
かし、敵は2個連隊おり非常に手ごわく、間もなくダンスの上手だったユック軍曹が戦死する。その姿を見たジミーはいてもたってもいられなくなり、一人前線
に赴こうとする。だが、それを察知したドク、フレディ、デイブ、ミナミらも一緒に前線に向うことに。
途中でドイツ軍のマシンガン隊を撃破し、な
んとか前線に合流。この頃本土ではジミーの父が収容所で死亡。ちょうど49日にあたることだった。
テキサス大隊は食料弾丸も尽き始め、大佐が
死亡したため急遽指揮官となったテリー中尉が救援を要請。第442連隊は突撃を命じられる。突撃でドクが死亡。フレディはジミーのそばに投げられた手りゅ
う弾に覆いかぶさって死亡。そのほかにも兵士は勇敢に突撃し、ついにドイツ軍は撤退し、テキサス大隊と合流できる。しかし、このとき合流できた最初の兵は
わずか8名しかいなかった。テキサス大隊211名を救出するのに、第442連隊は約800名の戦死者を出していた。テリー中尉は助けに来た兵が日本人と知
り、びっくりするも、厚い感謝を述べるのだった。
(2011/6/20)
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