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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
アウシュビッツ行最終列車 ヒトラー第三帝国ホロコースト  評価★★☆ アウシュビッツ移送列車内からの脱出
DER LETZTE ZUG/ POSLEDNI VLAK, THE LAST TRAIN
2006
  ドイツ 監督:ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー
出演者:ギデオン・ブルクハルト、ラーレ・ヤバシュ、レナ・バイヤーリンク、シベルケキリ ほか
122分 カラー
 
 
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 ドイツナチスによる、ユダヤ人アウシュビッツ収容所送りを描いたヒューマンドラマ。ユダヤ人虐殺を描いた映画は数多くあり、決して目新しい題材でも、史 実に沿ったドキュメンタリータッチのものでもないが、アウシュビッツ移送の一列車だけに焦点を当てたミクロ視点が新鮮と言える。
 言うまでもないが、ナチスはユダヤ人抹殺計画により、ドイツを始めとするヨーロッパ各国のユダヤ人をアウシュビッツ強制収容所などに強制移送し、強制労 働やガス室などで殺害した。本作はドイツ在住だったユダヤ人が強制的に列車に乗せられ、アウシュビッツ収容所に着くまでの顛末を描いたものである。ほんの 一握りのユダヤ人だけが列車から脱出することができるのだが、大多数のユダヤ人は虫けらのごとく殺されていく。かなりのシリアス調で比較的重い映画の部類 に入るだろう。

 映画としてはストーリーのインパクトや映像スケール感にやや欠ける嫌いがあり、一見お手軽テレビムービー風の出来具合。映画ならばもう少しメリハリの効 いた完成度が欲しかったところで、日本未公開というのも頷けるレベル。
 その理由として、邦題 や英語題で「最終列車」がメインテーマになっているように、「命」の最終列車という強烈で悲壮感漂う舞台が設定されているにも関わらず、その最終列車に乗 せられるという運命の分かれ道的な導入部表現がやや甘い感じなのだ。ユダヤ人の多くは行き先も列車に乗せられる理由も解らずに移送されるのだが、次第に最 終列車の運命を理解し、恐怖と葛藤に打ちのめされ、そしてそれを受け入れていくというのが本作の最大の見せ場だろうと思われる。だが、登場人物の心の変化 描写が余り上出来ではなく、かつ登場人物の回想シーンが空気を読まずに挿入されるため、見ている側の心情の盛り上がりに欠けるのだ。
 さらに、映画の起承転結で言えば、「起」のインパクトが薄く、「承」への流れが悪く、「転」が見あたらない。救いは「結」が余韻を残して美的に作り上げ られていることくらいで、やはり映画としての完成度は高くないと言える。

 とは言え、描かれる題材は重く、人間の生命を考える上で心に響くものは多い。主人公の一人である少女ニナのいたいけでありながらも強い心を持つ姿には感 涙するし、列車内での老若男女の言動もいかにもユダヤ人らしい。粗雑で乱暴な若者がいる一方で、温厚で知的なユダヤ人像も描かれ、何と言ってもユダヤ教に 対する敬虔さが強く描かれているのが印象的だ。
 一方、ドイツ軍は当然ながら冷酷粗野に描かれるが、列車移送指揮官のクレヴァスSS中尉がその親玉である。だが、中尉は冷酷に描かれてはいるのだが、今 ひとつ彼の性格付けがなされておらず、映画に対しての貢献度が低いのが残念。興味深かったのは途中で登場するウクライナ人SSで、ドイツSSに比して冷酷 だと評されていた。また、ドイツ軍は全て悪玉というわけではなく、途中の駅で出会ったドイツ国防軍兵士らは、SS中尉に逆らってまでもユダヤ人たちに食料 や水を与えていたのが印象的だ。この辺りも短絡的な悪玉善玉史観にとらわれないフェアな描写だと言える。
 また、移送列車の機関士たちも映画のストーリーを支えている。機関士らは多分ドイツ人だと思われるが、息子を戦争で失った者やユダヤ人の恋人を強制移送 された者など、厭戦的一般のドイツ人の心情を表現している。ユダヤ人とドイツSS、一般的ドイツ人など多様な人間模様をきちんと描いているのは好感だ。

 ロケ地はドイツ、リトアニアだそうだ。主に列車と駅のシーンなので余りスケール感を感じることもなく、比較的安価な映画のイメージ。まあ、列車内での出 来事がターゲットの映画なわけだから、映像に期待してもしょうがないのだが。ただ、列車内を描くのであれば、もっと登場人物の表情とか列車内部の描写な ど、カメラワークに凝っても良かったのではと思う。それだけで映画のインパクトは変わったのではないだろうか。

 全般に可もなく不可もなくといった出来具合で、見終わった後の映画に対する新鮮度はさしてないものの、ユダヤ人問題を真摯に見るぞ、という意気込みがあ るのならば、興味深い視点での映画だと思う。

興奮度★★★
沈痛度★★★★☆

爽快度★★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 ドイツナチスによってベルリン市内のユダヤ 人たちが強制的に連行されていく。元ボクサーだったヘンリー・ノイマン夫婦と幼い二人の子供(ニナと赤ん坊)、フリードリヒ医師と娘アーロンとその子、 ギャクが好きな歌手ヤーコプとピアニストの妻ガブリエルらはアパートから強制的に連行される。壁の中に隠れていた宝石商アルベルト・ローゼンと恋人ルース も見つかってしまう。
 多くのユダヤ人たちはアウシュビッツ行きの 貨物列車に強制乗車させられる。移送指揮官はSSクレヴァス中尉で、冷酷に任務を遂行する若者だ。乗車の際にこれを拒否した肉屋の夫人が銃殺され、ユダヤ 人たちは渋々乗車する。
 列車は鍵を掛けられ小さな窓しかない。詰め 込まれた多くの乗員に対し、食料はなく水もバケツ一杯だ。ヘンリーは貨車内の主導者となり、授乳する妊婦を優先に水を分配するがすぐになくなってしまう。 途中の駅でウクライナ人SSたちが水を配るが、焦った少年がこぼしてしまう。ヘンリーは少年を叱りとばす。ウクライナ人SSらは絞首台を作っており、恐怖 に怯えるが、殺されたのは別の貨車のユダヤ人だった。
 アルベルトとヘンリーは列車の鉄格子を切っ て外に出て鍵をはずして列車から飛び降りることを計画。体の小さい少年イジーが外に出ることに。だがイジーは落車して死亡。父親はヘンリーを激怒する。次 にルースがこれにチャレンジし成功。だが逃げるのを焦った男二人が飛び降りて発見され射殺される。クレヴァス中尉は誰が鍵を開けたのか尋問する。中尉はヘ ンリーの娘ニナを尋問する。だがあくまでもニナは寝ていたと言い張り、クレヴァス中尉はニナの態度に好感を持って尋問を中止する。だが水と食料を要求した 男は容赦なく射殺する。
 貨車内は死体が重なり、喉の渇きと飢えに満 ちる。止まった駅で防衛するドイツ兵に水と食料を要求すると与えてくれる。クレヴァス中尉は勝手なことをするなと責めるが、ドイツ国防軍の指揮官は無視し て食料と水を与えるのだった。
 アルベルトとヘンリーは今度は床に穴を開け て脱出を試みる。再び水が乏しくなり、ユダヤ人らは小便を飲んで過ごす。ヤーコプは兵士に歌を歌って水を求めるが無駄だった。ようやく駅員らが水を掛けて くれて水を得るが、もはや皆必死の状況だった。そんな中、幼いヘンリーの赤ん坊が死亡し、妻は絶叫する。
 いよいよアウシュビッツが近くなり、小さな 床穴からルースとニナが逃げることに。夜に停車した隙を見て二人は脱走。貨車内のユダヤ人らは兵士の気を引くために大騒ぎを。ドイツ兵は銃を撃ち込んで他 の貨車のユダヤ人らは死亡する。その隙にルースとニナは走るがニナの足が線路に挟まってしまい、ドイツ兵に発見される。間一髪の所を周囲に潜んでいたレジ スタンスに救われて二人はレジスタンスに保護される。
 列車の機関士はクレヴァス中尉の悪口を言 う。彼の恋人はユダヤ人で彼女も移送されたのだそうだ。
 列車はアウシュビッツに到着し、希望のない 収容所へ収容されていく。ヤーコプは妻が死亡した嘆きから貨車の前で歌を歌い続け、射殺される。森に隠れたニナは父親に教わったとおり、辛くなったら「聞 けイスラエル」の歌を歌うのだった。

(2010/01/15)