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かぽんの戦争映画一方的評論
 
「麦の穂をゆらす風 評価★★★ アイルランド独立、内戦に翻 弄される兄弟
THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY
2006  イギリス・アイルランド・ドイツ・イタリア・スペイン 監督:ケン・ローチ
出演者:
キリアン・マーフィ、ポードリック・ディレーニー、リーア ム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルドほ か
126分 カラー 

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  イギリスの西側に位置するアイルランドで、1919年から1921年にかけて起こったアイルランド独立戦争及び1921年12月の英愛条約締結以降のアイ ルランド内戦を題材にしたヒューマンドラマ。監督は、本作でカンヌ映画祭パルム・ドール賞を受賞した、社会派監督と称される ケン・ローチ。

 アイルランドは中世からすでに大英帝国の統治下にあったが、1916年にアイルランド民族主義のシン・フェイン党及び義勇軍(IRA)がイースター蜂起 し、アイルランド独立宣言を行ったことにより、イギリス軍とアイルランド義勇軍(IRA)の間で戦闘状態に入る。1921年の休戦協定により英愛条約が締 結されるが、条約内容はあくまでイギリスの自治領でしかなく、北アイルランドは依然イギリス領だったことから、自由国側穏健派と共和国側強硬派の間で内戦 が勃発する。共和国側IRAによるダブリンのフォー・コーツ占拠を皮切りに内戦は泥沼化し、テロやゲリラ戦で独立戦争以上の犠牲者を出したと言われる。
 本作はこれらの史実に基づいて構成されており、イギリス軍の横暴な様子、敵味方に分かれた旧知の手による処刑など、アイルランド史の暗部を如実に描き出 している。

 本作は複雑なアイルランド史を題材にしてはいるが、意外にも政治的、思想的な色合いは薄い。むしろ、人間愛や友情、義理といったヒューマンドラ マが中心であり、アイルランド独立という社会問題に振り回される人々の葛藤と現実を示している。従って、アイルランド人の役者を多用しながらも、決して政 治的な企図を前面に出すものでは なく、イギリス人、アイルランド人をそのまま人として描いているのが好感だ。
 ただ、本作のような作りは個人的には好きではない。監督が社会派と言いつつ(本人が言っているわけではないのだろうが)、歴史的、社会的に何かを痛烈に 風刺す るものでもなく、かといって娯楽的ヒューマンドラマにも徹しきっていない、セミ・ドキュメンタリーのような中途半端な印象を受けるからだ。せっかく、重く 切実な歴史的問題を取り上げているのだが、エピソード、登場人物ともにインパクトが弱く、どこに焦点を置いてみるべきか定まらず、見終わった後に思ったほ ど余韻が残らない。
 
 おそらくは、IRAのリーダー格テディと弟のデミアン兄弟が中心となり、戦争の大義と友情、裏切りが映画のキーとなっていると思われる。肉親や親友を自 らの手で処刑しなければならない苦悩は「二度と顔を見せないでくれ」というキーワードで昇華する。だが、このシーンにしても、登場人物の性格付けが疎かに なってしまっているため、なかなか心情を入れ込みにくい。ヒューマンドラマとして評価するならば、もっとこの辺りの苦悩と背景を描写して欲しかったところ だ。
 また、アイルランド独立、内戦を描くにあたり、政治的局面を解説しようとするあまり、ストーリーが急 ぎすぎる嫌いがある。一つ一つのエピソードのバランスが悪く、冗長にだらけるシーンとサラリと無味乾燥なシーンの差が顕著だ。特に、終盤の内戦シーンは流 し気味に感じ、ちょっと興ざめだった。
 このほか、アイルランド人やイギリス人というのはプライドが高いという印象を感じた。逆に言えば冷酷でもあり、処刑や殺害に至っては、我々日本人との価 値観に相異を感じる。イギリス軍のアフリカ、インド等の植民地での暴虐ぶりでも窺えるように、相手を見下したような君主支配的思考が強いのだろうか。この 辺りも本作に心情移入しにくい理由があるのかもしれない。

 前評判が良かったためにやや辛辣な評となったが、ヒューマンドラマ部分にもっと比重がかかっていれば面白くなっていたのではないかと感じた。決して駄作 ではないのだが、深みという点では・・・・残念な出来。

興奮度★★★
沈痛度★★★★★

爽快度★★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

  1920年アイルランド南部のコーク地方。医者のデミアンはロンドンの大病院に招聘され、赴任しようとしていた。時に、アイルランドはイギリスの統治下に あり、国土防衛法の名のもと、イギリス兵による暴虐が行われ、アイルランド人が殺害されていた。デミアンの恋人シネードの弟ミホールも英語で名を答えな かったために殺害された。
 出発の列車を待つデミアンは、イギリス兵に殴られる機関士ダンの姿を見てロンドン行きを辞め、アイルランド義勇軍(IRA)に参加することを決意する。 IRAのリーダー格テディ・オドノヴァンはデミアンの実兄で、IRAはイギリス軍兵舎攻撃やイギリス兵殺害などを実行し、武器を調達していた。しかし、農 園領主の密告で使用人クリスがIRAの拠点を吐いてしまう。拠点を急襲されたテディ、デミアンらは逮捕され、テディは爪をはがされるなどの拷問を受ける。 処刑が迫るが、イギリス兵の一人に同胞がおり、ケヴィンら3名を残して脱走に成功する。しかし、ケヴィンらは翌日処刑されてしまう。
 テディは密告者の領主とクリスの処刑をデミアンに命じる。クリスはデミアンの幼なじみであったが、デミアンは自らの手でクリスを撃つ。そのことをクリス の母親に伝えに行くが、「二度と顔を見せないでくれ」と言われ、心が何も感じなくなった自分に気づく。
 独立宣言した共和国では裁判が行われ、金貸し業のスウィニーが有罪となる。しかし、スウィニーの資金力を利用したいテディと、共和制の法を遵守すべきだ とするデミアン、ダンらと対立する。
 テディ、デミアンらはイギリス軍オークシャリーズ増援部隊を襲撃し、全滅させる。その報復でイギリス軍はシネードの家を襲撃。シネードの家は焼かれ、シ ネードは髪を切られる。絶望に沈むシネードをデミアンが慰める。
 そこに、休戦宣言の通知が届く。シン・フェイン党とイギリス政府が英愛条約を締結しようというのだ。しかし、条約はアイルランド自由国の自治を認めるも のであり、真の独立ではなかった。それでも良しとする穏健派と反条約の強硬派の対立色が強まってくる。テディはアイルランド自由国軍に所属するが、デミア ンはあくまで完全独立を目指すIRAに居残る。
 条約は結局批准され、共和国派のIRAはフォー・コーツに籠城する。自由国軍がフォー・コーツを砲撃したことから内戦状態に突入する。特に共和体制を強 く望むダンは自由国軍兵を殺害し、報復のために自由国軍のIRA狩りが始まる。ダンが殺され、デミアンも捕まる。兄のテディは武器庫の所在を明かすようデ ミアンに迫るが、裏切り者のクリスを処刑した自分が裏切ることはできないと断る。翌朝、デミアンの処刑が実行され、テディ自身がその指揮を取るのだった。 テディは、デミアンの恋人シネードのもとを訪れ、遺書と遺品を手渡す。泣き崩れるシネードはテディに「
二 度と顔を見せないでくれ」と言うのだった。


(2007/06/27)