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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
ハート・アタッカー  評価★★★★ 米軍とイラク人の間に生まれる憎悪
Battle for Haditha
2007
  イギリス 監督:ニック・ブルームフィールド
出演者:エリオット・ルイス、ファラー・フレイエ、ヤスミン・ハナニ、アンドリュー・マクラレンほか
93分 カラー
 
 
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 イラク戦後のイラクにおけるアメリカ海兵隊とテロリスト、イラク市民のすれ違いを描いた、ドキュメント風ヒューマンドラマ。実際に起こったハディサのイ ラク市民殺害事件を題材にしており、米海兵隊員、テロリスト、イラク市民らの視点で、複数のエピソードを描いていく。全般的にストーリーもしっかりしてい るのだが、冒頭からドキュメンタリー的な雰囲気が漂っており、登場人物が実在の人物のような妙なリアル感を感じる。というのも、どうやら本作ではおおまか なストーリーは設定されているものの、各役者はかなり自由にアドリブ演技を行っているようで、それが芝居くさくないリアリティに繋がっているようだ。
 監督、役者ともに無名に近く、それほど多くの資金は投入されていないようだが、出来としてはなかなか良い。

 2003年のイラク戦争後のイラクでは、反乱分子やテロリストが数多く残っており、新イラク政府樹立後もアメリカ軍をはじめ外国の軍隊が治安維持のため に駐留している。本作は駐留していたアメリカ海兵隊が2005年11月19日、路肩爆弾で1名の兵を失い、犯人捜索の過程で無抵抗のイラク市民24人を殺 害したとされるハディサ事件を題材にしている。この事件では米兵8人が訴追されている。本作では、登場人物の一部や細かな設定、会話は若干フィクションと なっているようだが、おおまかな流れで事実に基づいているようだ。

 本作は非常に奥の深い問題点がいくつも練りこまれており、映像上は比較的淡々と進んでいくのだが、視聴後には思い感情を抱かざるを得ない。それは非日常 の世界の不条理で、米海兵隊員にとっては、本国の生活や家族になんら関係のない異国の地で恐怖に耐え、命を削らなければならない不条理である。特に若い兵 士にとってはイラクの存在も、自身が命を掛けなければならない理由も見つけることができないのだ。
 一方、イラク国民にとっては、自国の地を他民族に侵略された屈辱感と、戦闘に巻き込まれ家族を失ったやり場のない怒りなのである。海兵隊員とテロリスト の間に挟まれ、自身が生き延びるための究極の選択を迫られ、決断しなければならない不条理である。これらは全て、ボタンの掛け違いから生じた不条理であ り、映像を見る冷静な我々からすれば解決の糸口はあるようにも思えるが、やはり非日常の世界ではままあることなのだと痛感させられる。

 また本作で描かれたのは、怒りや憎しみからは何も生まれてこないという事実で、感情の増幅が紛争や殺人を引き起こすのだと言うテーゼでもある。命の大事 さは冷静ならば万人が重々承知しているはずなのだが、こうした戦争や紛争ともなると、無感情に人を殺すことができるようになってしまうのである。人間の心 の箍をはずす一線はどこにあるのだろうか。ただ単に、戦争は嫌だと言う感情だけでなく、心の箍がはずれそうになる時、我々はどのように対処できるのか、深 く考えさせられる。

 ロケ地はヨルダンで行われたようで、比較的良く雰囲気が出ていた。全般にコンパクトなエピソード構成なのでスケール感はあまりないが、カメラワークも映 像も上出来。
 登場する兵器類は米軍のハンヴィーが数台とヘリコプターのUH−1イロコイ程度。銃撃戦シーンは迫力があって良くできているし、道路わきの爆弾炸裂シー ンも非常にリアルでインパクトがある。爆弾は携帯電話による遠隔起爆装置付きとなっている。なお、数回登場するモニター映像からの人物ピンポイント攻撃だ が、無人攻撃機によるものか?

 全般にややこじんまりとしてはいるが、ストーリー性、映像、戦闘シーンともに完成度は高いと言える。イラク戦争における米兵の葛藤を描いた作品が数多く ある中で、イラク国民の目線も公平に取り上げたという点は特に評価できるだろう。ただ、本作はイラクにおける負の部分をことさらに強調した内容だけに、イ ラクにおいてはこのような米兵やイラク人ばかりではないであろうと思うと、やや陰鬱な気持ちになってしまったのが残念。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 イラクに駐留する米海兵隊員ラミレス伍長ら は、イラクの町ハディサ周辺の治安維持や検問任務についている。彼らは陽気な若者だが、極度の緊張は彼等の心をしだいに蝕んでいく。
 町ではテロリスト集団のアルカイダがアメリ カ寄りのイラク人を殺害している。市民は米兵にも親近感を抱けず、テロリストの恐怖にも怯えている。
 イラク人の中年アフマドと青年のジャファー はトラックで郊外のアルカイダ拠点に向う。彼等は携帯電話による遠隔操作爆弾を貰い受け、実行するかわりに謝礼をもらう。彼等のトラックは米軍の検問所も 切り抜けて、ハディサの町の道路に爆弾を埋め始める。
 アフマドらが爆弾を埋めているすぐ脇の家に はヒバと夫のラシードの家がある。近所の子供たちもたくさんいる中、ヒバは夫のラシードに相談する。ラシードは父のワリードに相談し、ワリードはさらに長 老に相談するも、長老は「祈れば神が助ける」というのみだった。女たちは米軍にもアルカイダにも協力できず、戦々恐々とする。さらにアフマドらは遠隔操作 する隠れ場所を求めて、市民を銃で脅して退去させる。
 午後5:20。ラミレス伍長らは反乱分子の 爆弾工場の強行偵察に行く。1軒目は何もなかったが、2軒目で爆弾と不審な男たちを発見する。この時は道路の反対車線を通過し、爆発できなかった。
 午後10:30。ヒバたちは割礼のパー ティーを開催する。その帰り道、シャベルを持った男がピンポイント攻撃で誤爆される。
 11月19日午前6:30。ラミレスらは検 問所に食料を輸送することに。ラミレスらの3台のハンヴィーは爆弾の仕掛けられた道を通り、3台目が爆破され、新兵のカスバートが即死。TJ、ロバーツが 重傷を負う。すぐさまラミレスらは応戦するが、アフマドらは悠々逃亡する。カ スバートを殺され頭に血が上ったラミレスは通りかかったタクシーに乗っていた学生4人を射殺。さらに、町の中から一人の男が銃撃したために、ラミレスらは 町にテロリストがいると判断し、掃討戦を開始する。ラミレスは以前の失敗から、女子供でも銃を撃ってくるため、容赦なく撃ち殺せと指示する。その結果、ハ ディサの町は殺戮の場と化していく。その様子をアフマドは撮影するが、こんなことになるなんて、と後悔し始める。だが、隣にいた長老は世界に米国の蛮行を 認めさせるためだと言うのだった。長老はテロリストの片棒を担いでいたのだった。
 ラミレスらは応援部隊の支援を受け、ヒバを 探していたラシードを射殺。ヒバは夫の死体を発見しラミレスに憎悪の目を向ける。そこに上官のサンプソン大尉がやってきて、ラミレスの冷静な行動を賞賛 し、軍曹昇格を言い渡す。だがラミレスは、市民を殺害した罪と、仲間を失った罪悪感で眠れない。
 長老、アフマドらは生き残った少女サファを ビデオ撮影し、米軍の蛮行を作り話も交えて語らせる。これが世界の報道機関に流れ、米軍のハディサでの蛮行が非難される。そして、ハディサの町の男たちは 米軍憎しでテロリストとして戦うことを決起する。
 米軍はアルカイダの爆発で市民に死者が出た と報じていたが、報道によってやむなくラミレス伍長らを告発する。褒めてくれた上官も手のひらを返すように、ラミレス伍長、マシューズ伍長、デル・クルー ズ伍長、ロス軍曹の4人に殺人罪を言い渡すのだった。

(2010/11/08)