「ジャーヘッド・レスキュー」
評価★★☆ イラク戦争帰還海兵隊員の家族との確執
FAREWELL DARKNESS
2008
アメリカ 監督:ダニエル・J・ピコ
出演者:キース・コンプトン、ブリアーナ・ウィーバー、サーカス・ルザルースキーほか
98分 カラー
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イラク戦争から戻った海兵隊員が織りなす家族との確執を描いたヒューマンドラマ。最近良く映画になりがちな帰還兵の苦悩も描かれてはいるが、そちらがメ
インではなく、むしろ彼の生い立ちや家族との確執がメインである。海兵隊に入隊する若者達が、往々にして持つ家庭の問題を著しているとも言えようか。海兵
隊の勧誘はなかなか強引なものとして知られており、犯罪に手を染めたり、家庭環境に問題を有する若者が入隊し、そして除隊しているのも現実の姿なのだろ
う。入隊後に得られる独特の戦友愛と裏腹に、帰国後の社会の受容とのギャップはやはり厳しいものがあるようだ。本作の場合、他作にありがちな著しい恋人や
友人等の裏切りというものがない分、比較的おだやかではあるが、それでも軍隊に逃げ口を見いださざるを得ない、社会の閉鎖性というものが重くのしかかって
くる。
短尺の映画であり、内容的には比較的コンパクトな部類。帰還し、恋人を巻き込みながら、父親や母親との確執に直面していくだけの単純ストーリーながら、
意外にも映画に引き込まれていく。映像的にはかなりブツ切りの編集で、やや謎の多いストーリーはサスペンス的要素も併せ持っているとも言える。言い換えれ
ば、わかりにくい場面も多いが、最終的にはヒューマンドラマとして成功した部類か。結構重めの題材なので、このヒューマンドラマ展開に興味が得られない人
にとっては、ちょっときついかも。
本作の主人公は第4海兵連隊第3大隊目標攻撃部隊狙撃小隊所属となっている。戦闘シーン自体はほとんどなく、冒頭にテロ攻撃にさらされたシーンがあるの
み。ややグロい影像もあり、以降の展開に期待(危惧)を抱かせるが、全く裏切られる。
戦争映画として一応は取り上げるが、イラク戦争は単なるヒューマンドラマの背景でしかなく、ヒューマンドラマ中心の作品であると思っておいた方がよいだ
ろう。
興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★★★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
イラクに派兵されていた海兵隊マイケル一等兵は、テロ攻撃を目の当たりにし、黒こげ
になった民間人を射殺する。こうしたトラウマを抱えながら4年間の兵役を終え、帰国したマイケルだったが、本国の日常生活に馴染むことが出来ない。
彼女のローズは、マイケルのことを待っていたが、彼女にも辛く当たってしまう。食堂で海兵隊面接官ウェイクリー軍曹と出会うが、それも不愉快だった。養
育親のミセスAの所にも行くがしっくりと来ない。実はマイケルは父親の虐待によりミセスAのところに預けられていたのだ。仲間と起こした窃盗事件で逮捕さ
れ、マイケルはやむなく海兵隊に入隊した経緯があった。その従軍中に母親は父親の暴力により首つり自殺していた。行き場のない怒りに、マイケルは父親を殺
害することを決意する。いつも父親に怯え、誉めて貰おうとしていた。母親もまた父から逃げることができず、マイケルにとっては共犯であった。
昔の仲間のドギーとポールを強引に頼み込んで協力させ、父親の所まで連れて行くよう頼む。ローズはマイケルを引き留めようとするが、マイケルは聞かずに
飛び出していく。
ドギーらは裏切って引き留めようとするが、それを無視してマイケルは父親の所にいく。父はすっかり弱っており、銃を向けるマイケルに、殺さないでくれと
泣きつくのだった。マイケルはもう二度と会わないと言い残して、ローズの元に帰っていく。
(2008/10/23) |