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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「カティンの森  評価★★★★ ポーランド軍将校虐殺事件の真相を描く
KATYN
2007
  ポーランド 監督:アンジェイ・ワイダ
出演者:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジュミイェフスキ、アンジェイ・ヒラ、ヴィクトリャ・ゴンシェフスカ ほか
122分 カラー
 
 
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 第二次世界大戦中ロシア西部のカティンの森で起こったポーランド人将校1万5000人の虐殺事件を描いたヒューマンドラマ。監督のアンジェイ・ワイダは 旧社会主義体制のポーランド時代から「地下水道(1956)」「灰とダイヤモンド(1958)」「鷲の指輪(1992)」「聖週間(1995)」など抑圧されたポーランド人、ユダヤ人迫害を題材に作品を作り続けてきた名匠である。特 に本作のカティンの森事件はワイダ監督の父親が犠牲になった現場であっただけに、監督の集大成的作品とも言える。監督特有の陰鬱とした非感情的な人物描写 により、どのように虐殺事件が再現され、社会告発されていくのかが見所でもあった。第80回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされている。

 1940年春に起こったカティンの森虐殺事件は、ソヴィエト赤軍によるポーランド軍指揮能力抹殺のための捕虜将校大量虐殺事件だったが、1943年春に ソヴィエトに攻め入ったドイツ軍により発見され世界的に告発され、記録映画も作成されている。しかし、同年秋にはソヴィエトの領地席巻によりカティンの地 はソヴィエトの物となり、逆にソヴィエト赤軍はドイツ軍の仕業として非難するのである。その後、ポーランドはソヴィエトの支配下に置かれ、カティンの森の 真実に触れることはタブー視されることとなる。この事件がソヴィエト軍の虐殺だと公式に認めたのはソヴィエト解体後の1990年になってのこととなる。

  さて、ストーリーはアンジェイ・ワイダ監督や実在の人物の話を参考にしてはいるものの、登場人物、出来事ともに大枠はフィクションとなって いる。主人公のポーランド軍大尉とその妻子を中核に置きながら、数人のポーランド軍将校とその家族の顛末をサスペンス的に進めていく。若干の謎解き的な要 素もあることはあるが、主として悲劇を羅列していくヒューマンドラマといった印象が強い。盛り込んだエピソードは監督にとってどれも不可欠な要素であった ろうが、若干余計に感じるシーンもあり、全体的なまとまりという点ではややもったいない。
 映像的にはワイダ監督特有の叙情的な静的画面が健在で、かつ無音を効果的に利用した隠喩的表現が印象的だ。ワイダ監督の映画は、自身の陰鬱な経験を何人 も理解できるはずがない、と言わんばかりの拒否感を前面に醸し出しておきながら、何故か見ている者の心を問答無用に引きずり込んでいく不思議さがあるの だ。銃殺シーンではややグロい場面もあり、虐殺の記録映像はかなり見るに堪えない映像も登場するが、これも監督にとっては必要最低限の表現だったと思われ る。
 だが、正直言って本作はワイダ監督の集大成作品としては期待はずれという印象は拭えなかった。自身の過去や経験を集大成として込めたにしては物足りない のだ。確かに人物描写は監督らしさの片鱗もあるのだが、全般に明るく希望に満ちている印象が強い。また、虐殺を実行したソヴィエト赤軍に対しても、ポーラ ンドを蹂躙したドイツ軍に対しても、その怒りを強く感じることはない。社会的、政治的メッセージ性はもともと直接前面に出さない監督とはいえ、怒りや悲し みの根源を欠いてしまうと、主人公らポーランド人への心情移入が難しくなってくるのだ。この題材だからこそ期待したのだが、実のところワイダ監督をはじめ ポーランド人の心はそんなところにはないのかもしれないと感じた。過去の悲劇を繰り返しまいと誓いながらも、「赦し」こそ未来への平和なのだということな のかもしれない。長い間ポーランドの圧制下で苦渋を舐め、解放された監督の行き着いた結果なのだと思えば、それはそれでありかなとは思う。

 兵士のエキストラ等はそこそこの人数をかけているが、兵器類に関してはほとんど登場しない。トラック類、ジープ類のほか機関車が出るのみで、銃撃戦もな い。軍装に関してはポーランド軍槍騎兵、ソヴィエト赤軍国境警備隊、ドイツ軍が登場する。階級章や服装はそれなりにしっかりしているようだが、全般に皆小 綺麗すぎる。このあたりはリアル感を阻害した要因かもしれない。ちなみに主人公の大尉はクラクフ第8槍騎兵連隊に所属している。 

 カティンの森事件を扱ったレア作であり、全般に良くまとまった好作品であった。一般的にはこの程度の内容で十分だったかも知れないが、やはり個人的には もっとワイダ作品的な陰鬱感と、もっと歴史を掘り下げた鋭い切り口を期待したかったところだ。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★★

爽快度★
感涙度★★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1939年9月ドイツ軍がポーランドに侵 攻。間もなくドイツと不可侵の密約を交わしたソヴィエトが東側から侵入し、クラクフのポーランド第8槍騎兵連隊の将校らがソヴィエト赤軍の捕虜となる。捕 虜となった将校の一人アンジェイ大尉の妻アンナと娘ニカが夫を探して国境近くまでやってくる。同じく捕まった大将の妻ルジャは一緒に逃げようと誘うが、ア ンナは国境までいく。アンジェイ大尉と部下のイェジ中尉がソヴィエト軍の列車に積み込まれる直前、再会することができるが、アンジェイ大尉は軍人の責務だ として妻と娘に別れを告げる。
 一方クラクフの町ではアンジェイ大尉の父ヤ ン教授が大学の召集を受けていた。妻に別れを告げて大学の講堂に行くが、そこにはドイツ軍将校が待ち構えており、大学は閉鎖され、教授らは皆連行されてい く。
 アンジェイ大尉らはソヴィエトのコジェルス ク収容所に収容された。すでに11月となるが何の動きもない。飛行船技師のピョトル中尉は血気盛んに蜂起を叫ぶが、アンジェイらがなだめ、従軍神父は彼の 手にロザリオを渡す。クリスマスになると収容所ではお祝いが許された。大将を中心に歌を歌って過ごすのだった。意外にも収容所の生活は緩やかだった。
 ポーランド国境の町ではアンナとニカが足止 めを食らっていた。ポーランド軍将校の家族と言うことで移動が許されないのだ。そこで兄カジミェシェの家に居候していた。その家にはソヴィエト軍大尉も住 み込んでおり、大尉はアンナに求婚していた。なんとかアンナを逃がしてやりたいと言うのだ。だが、アンナはこれを固辞した。その折、ソヴィエト軍はポーラ ンド軍将校の家族を収容所送りすることを計画。カジミェシェの家にも捜索が来て、カジミェシェの妻と子は連行されるが、アンナとニカはソヴィエト軍大尉に 匿われて難を逃れる。そしてクラクフまで逃げるのだった。クラクフでは祖母と再会するが、そのもとにザクセン収容所に収容された祖父ヤン教授死亡の知らせ が届く。
 コジェルスク収容所では大きな動きはない が、腎臓の調子の悪いアンジェイ大尉にイェジ中尉が自分のセーターをプレゼントする。そしてアンジェイ大尉は収容所での生活や収容者リストを手帳に記録し ていく。
 4月に入り、いよいよ収容所にも動きが出て くる。何人かが選ばれ移送されていくことに。その中には大将やアンジェイ大尉も含まれていた。見送るイェジ中尉に別れを告げ、貨車に乗り込む。
 1943年4月13日になり、クラクフの町 にクラクフ報知によりカティンの森で虐殺されたポーランド将校の名前を知らせていた。ドイツ軍によって発見され、ソヴィエト軍の仕業と判明したのだ。アン ナと祖母は不安な気持ちで新聞を見ているが、大将やイェジ中尉、ピョトル中尉の名はあるが、夫アンジェイ大尉の名前はなくほっとする。一方、大将の妻ル ジャのもとにドイツ軍からの出頭命令が来る。大将の虐殺にあたり、ソヴィエト軍を非難する声明を出せと言うのだ。ルジャがこれを断ると、ドイツ兵はドイツ が製作した虐殺現場の映画を見せられる。外に出たルジャは足がもつれる。
 その後11月になるとクラクフはソヴィエト 軍占領地域となる。大将の家に元家政婦だったスタシャが大将の形見を持ってやってくる。スタシャは良い身なりでパルチザンとしてソヴィエト軍側についた夫 が市長に出世したのだ。
 夫の帰りを待つアンナの家に男がやってく る。父かと思ってとびついたニカだったが、それは死んだはずのイェジ中尉だった。ソヴィエト軍側についたイェジは今や少佐になっており、虐殺されたのは イェジのセーターを着ていたアンジェイ大尉だったと伝える。呆然とするアンナと祖母。
 イェジ少佐はその足でクラクフ法医学研究所 に立ち寄る。ここにはかつてドイツ軍が発掘して保管した虐殺現場の証拠があった。ソヴィエト軍は虐殺をドイツ軍のせいにし、証拠を隠滅しようとしていた。 所長はその証拠を隠そうとしていたが、内務人民委員の制服を着たイェジの姿を見て焦る。だが、イェジはアンジェイの遺品を探し出して家族に渡してほしいと 伝える。いまやポーランド国民もポーランド軍もカティンの虐殺をドイツ軍の仕業としか言わなくなっていた。街中でソヴィエト軍は虐殺のニュース映画をドイ ツ軍の仕業として報道していた。これをみた大将夫人ルジャはソヴィエト兵に反論するが、イェジがそれを制止する。そのイェジに対しルジャは嘘を付き続ける ことを強く非難する。自身も嘘をつくことに我慢ならないイェジは酒場で荒れ、その帰り道ついに拳銃で自殺してしまう。
 ピョトル中尉の妹アグニェシュカはワルシャ ワ蜂起の生き残りだったが、カティンの森現場に行った神父から兄の遺体にあったロザリオを渡される。そして墓碑を作るためにアンナが務める写真館に遺影を 依頼する。その写真館にカジミェシェの息子タデウシュがやってくる。そのタデウシュは元パルチザンであり、いまだにソヴィエトに対して恨みがある。そして 街のポスターを剝した罪で警官に追われることになる。たまたまいた大将の娘エヴァの手引きで逃げるが、その後再び追われ車にはねられて死亡する。
 アグニェシュカはソヴィエト軍に殺されたと 記された兄の墓碑を教会に持っていくが受け入れを拒否される。仕方なく墓地に持っていくが姉イレナは体制に従うよう諭すが聞き入れない。そして警官に連行 され、処刑のため地下に連れて行かれるのだった。
 アンナのもとに法医学研究所から夫の遺品 (手帳)が届く。そこには収容所での生活と最後の瞬間までの記録が記されていた。アンジェイ大尉、ピョトル中尉、大将らは列車でグニェズドヴォ駅まで連れ て行かれ、そこからバスに乗せられて処刑地に向かう。大将は室内で射殺され、アンジェイ大尉、ピョトル中尉は掘られた穴の手前でソヴィエト軍に兵士に射殺 されるのだった。

(2010/03/15)