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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
いのちの戦場ーアルジェリア1959ー  評価★★★★ 若き仏士官が経験するアルジェリア戦争
L'ENNEMI INTI ME /INTIMATE ENEMIES
2007
  フランス 監督:フローラン=エミリオ・シリ
出演者:ブノワ・マジメル、アルベール・デュホンテル、オーレリアン・ルコワン、マルク・マルベ ほか
111分 カラー
 
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 1950年代後半に起こったフランス軍対アルジェリア独立運動派の「アルジェリア戦争」を描いたシリアス系ヒューマンドラマ。アフリカのアルジェリアは 1800年代からフランスの植民地として支配され、第二次世界大戦後も植民地から解放されなかったため、インドシナと同様に独立運動が勃発する。1954 年にアルジェリア民族解放戦線(FLN)が蜂起したのを皮切りに、アルジェリア各地でフランス軍(フランス正規兵及びハルキ兵(アルジェリア人))と戦闘 し、1962年の独立を勝ち取るのだ。
 本作では1959年頃のアルジェリアのカビリア地方を舞台に、FLNと対峙するフランス軍最前線に赴いた新任中尉とその小隊を描いている。描かれるエピ ソードや登場人物等はフィクションだが、アルジェリア戦争をまともに取り上げた映画作品は非常にレアである。というのも、世界でも有数の高慢でプライド高 いフランスは、インドシナ戦争ともどもアルジェリア戦争を「戦争」として認めてこず、あくまで恥ずべき内紛としか見てこなかったのであり、これに触れるこ とはタブーでもあったのだ。ちなみに、過去の作品でアルジェリア戦争を描いた作品に「アルジェの戦い(1965伊アルジェリア)」ロスト・コマンド 名誉と栄光のためだけでなく(1966米)」があるが、いずれもフランス以外の制作で、本作はフ ランス が描いた初の作品ということになる。

 内容的には戦場での狂気と厭戦感を、若く道徳的だった士官が戦場での虐殺や迫害、不条理を経験することで次第に変化していく様子として描いていく。いわ ゆる反戦映画と言うこともできるが、単に戦争の凄惨さや愚かさを強調するだけにとどまらず、戦時の精神変化や憎しみの輪廻といった複雑な人間模様を描いて いるのが素晴らしい。特に秀逸なのは、アルジェリア人だがフランス軍に従軍するハルキ兵の心情、アルジェリアFNL側に寝返る兵や少年の人間憎悪の模様 で、戦争は憎しみの連鎖であることを強く印象付けている。また、フランス兵自身も戦争の意義に疑問を感じ、責務の重圧の中で自我を失っていくシーンが重々 しい。
 もっとも、フランス作品だけあってフランスの植民地政策への贖罪感はあまり強くない。制作サイドはフランス人も真実の歴史に目を向けるべきと意欲的だ し、テロップ等で若干そういう趣旨の言葉が流れるが、どちらかという と喧嘩両成敗的な雰囲気。自虐史観に慣らされた身としてはちょっと物足りない(笑)。それでもフランスにとっては画期的なんだろうけど・・・。

 本作では数多くの戦闘シーンが描かれ、戦争映画としても戦闘シーンの割合は高い方と言えるだろう。偵察シーン、銃撃戦・空爆シーンともに緊迫感十分で、 戦争アクションとしては及第点。ただ一つ一つのシーンが単発で、連続性や変化に乏しい のが欠点。ミッションを経るに連れて兵士らの心情に変化 が現われる様子が主題なのだから、その変化の契機が理解しやすいように、もう少し強弱やインパクトが欲しかったところ。全般に平坦な印象で、音楽や映像ス ピードの変化などで盛り上がりがあったら良かった。ただ、これまで触れられなかったアルジェリア戦争を知ると言う点では非常に レアな作品であり、戦争映画の新たな視点として大いに評価したい。
 批評ではフランス版「プラトーン」とも言われるが、確かに立ち入り禁止区域内のアルジェリア人村落へのパトロールやFLNゲリラ(フェラガ)とのゲリラ 戦という点ではベトナム戦と似ているとも言えなくもない。だが、決定的に異なるのはフランス軍のか弱さだ。ベト戦の米軍もアルジェリアの仏軍もいわゆる敗 者であることは一緒なのだが、兵士のタフさ、責任感や規律性、そして使用する兵器や戦術が見劣りする。まあ、本作の内容自体はフィクションなのでどこまで 真実を伝えているかは疑問だが、何となくそのことが伝わってくる戦場の緊迫感の違いにつながっているようだ。
 また、残念だったのはエキストラ兵士数が少なかったこと。小隊中心の描写とは言え、中隊、大隊規模での戦闘でもあったのだから、もう少しワラワラとうご めく兵士が出てこないと臨場感に欠けるのだ。
 本作で登場する兵器類は結構時代考証もしっかりしているようだ。AFVではジープのほかパナールAML装輪装甲車、M3ハーフトラックが登場する。一瞬 だが小型の戦車の姿も見えた。ヘリではシコルスキーH-34ウェセックス、パイアセッキH-21ショウニーが飛行している。また、ナパーム弾を支援投下す る航空機は双胴ジェットのデ・ハビラント バンパイア戦闘機。これらはロケ地がモロッコなので、モロッコ軍の協力か武器エージェントの用意したものと思われる。

 非常にレアな題材を描いた作品として個人的には興味深かったが、総合的な戦争映画としての出来はそこそこレベル。戦闘シーンの多さはプラス要素だが、全 体バランスや編集技術の拙さはマイナス要素で相殺された感じ。これを機にアルジェリア戦争題材の映画がさらに製作されることを期待したい。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★☆

爽快度★★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1959 年7月、アルジェリアのカビリア地方。山岳地帯のこの地ではフランス軍とFLNゲリラ(フェラガ)が、立ち入り禁止地帯にあるタイダ村を挟んで対峙してい る。フェラガの司令官は元フランス軍兵のアルジェリア人スリマンに率いられており、フランス軍はヴェルス少佐の指揮のもとスリマンの確保に躍起となってい る。タイダの村は昼は仏軍、夜はフェラガに支配されている。
 そのマゼル前線基地に、前夜の偵察戦で同志討ちで戦死した中尉の後任、テリアン中尉が赴任してくる。強い道徳観と責任感を持つテリアン中尉はベテランの ドニャック軍曹のいる小隊を率いることとなる。だが、偵察でタイダの村人たちに暴力をふるうドニャック軍曹のやり方に憤慨する。ドニャック軍曹はそんなテ リアン中尉を冷めた目で見る。そのほか部下にはアルジェリア人兵(ハルキ兵)も多くいた。ラシードはドニャック軍曹が寝返らせた元FLN兵。サイードは前 大戦でモンテカッシーノ戦に参加した兵で戦後妻子をFLNに殺されていた。
 次の偵察でテリアン中尉はフェラガに虐殺されたタイダ村の人々の死体を見て、フェラガの残虐性を知る。テリアン中尉は井戸に隠れていて助かった少年ア マールを基地に連れて帰る。アマールは捕虜の虐待を止めるテリアン中尉を慕うようになる。また別の偵察では、女性隊商を殺害したドニャック軍曹をしかる が、実は女性に変装したフェラガだったことを知り、次第にドニャック軍曹に信 頼を置くようになる。
 基地では捕えた捕虜をヴェルス少佐の指示でドニャック軍曹の戦友で情報将校のベルトー大尉が拷問を行っていた。テリアン中尉は行為を非難し、フランスの 植民地支配の間違いを指摘するが、ベルトー大尉は自らドイツ軍に受けた拷問の跡を示し、おまえもそのうち変わると笑うのだった。
 捕虜の自白でスリマンのアジトが割れる。テリアン中尉の小隊は先鋒を務めるが、、FLNが待ち伏せ攻撃を仕掛けてくる。次々と倒れる部下に少佐に応援を 要請するが却下され、テリアン中尉は窮地の中敵兵を殺害する。それはアマールの兄だった。そして敵に向けてナパーム弾による空爆が行われる。黒こげの敵兵 の姿に呆然とする小隊には、この戦争の意味が疑問に思えてくるのだった。そんな中、ラシードが失踪する。ラシードはFLNによって残忍な処刑がされた状態 で発見される。
 捕虜の処置を命令されたテリアン中尉だったが、良心からそれを拒否する。代わりにドニャック軍曹が捕虜の処置を行うこととなるが、その捕虜がかつてモン テカッシーノに従軍していたことを知り、その勲章に敬意を表して捕虜を見逃すことにする。だが、サイードが射殺してしまう。ドニャック軍曹自身も徐々に戦 争の意義がわからなくなってくる。
 スリマンのアジトを探して再び小隊が偵察に出る。だが、途中で機関銃の待ち伏せ攻撃にあい、部下が負傷する。テリアン中尉はドニャック軍曹と別れ負傷し た兵を後送するが兵は死亡してしまう。再びドニャック軍曹らと合流するために移動するが、そこで女たちの隊商を発見する。テリアン中尉はゲリラの変装と判 断し射殺するがそれは本物の女性だった。中尉はひどく動揺するが任務は続行される。負傷した兵をベルトー大尉のジープが回収に来る。だが、ベルトー大尉の ジープはFLNに襲撃され大尉と負傷した兵は残忍な殺され方をする。
 FLNのやり方に怒りを覚えたテリアン中尉は豹変し、捕虜の拷問に自ら参加するようになる。その姿をみたアマールは失望し、テリアン中尉のもとを去って いく。テリアン中尉はしばしの休暇でフランスに戻るが、まるで異なる平和な世界に戸惑い、家族に顔を会わせることができなかった。映画館ではアルジェリア に貢献するフランス軍の姿が映し出され、真実とは異なる報道にむなしさを覚える。
 再び基地に戻ったテリアン中尉は、酒におぼれ自ら電気拷問を受けるドニャック軍曹を見る。ドニャック軍曹も戦争の重圧に苦しんでいたのだ。そしてド ニャック軍曹が失踪する。テリアン中尉は渓谷にドニャック軍曹を探しに出るが、FLNの銃弾を受けて倒れる。失っていく意識の中で目にしたものは銃を手に するアマールの姿だった。


(2009/5/10)