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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「わが教え子、ヒトラー  評価★★★☆ ヒトラーのボイストレーナーになるユダヤ人
MEIN FUHRER-DIE WIRKLICH WAHRSTE WARHRHEIT UBER ADOLF HITLERE
2007
  ドイツ 監督:ダニ・レヴィ
出演者:ウルリッヒ・ミューエ、ヘルゲ・シュナイダー、シルベスター・グロート、アドリアーナ・アルタラス ほか
95分 カラー 

 
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 カリスマ的演説で有名なヒトラーにボイストレーナーがいた、という事実をもとに描かれたコメディ映画。予告編等で「善き人のソナタ」で男優賞を取ったウ ルリッヒ・ミューエの真顔の印象が強すぎて、シリアスものと誤解した視聴者も多いようだが、ほぼ99%まではブラックコメディである。
 ボイストレーナーはオペラ歌手だったポール・デヴェリンというドイツ人が実在しており、本人による「我が教え子アドルフ・ヒトラー」という著書をネタ本 にしているようだ。だが、本作ではボイストレーナーを強制収容所にいるユダヤ人俳優という設定にし、描かれるエピソードもほぼ事実とは関係ないようだ。
 監督はスイス生まれのユダヤ人で、ナチスドイツやヒトラーに対する強い憎悪感でもあるのかと思いきや、思ったほどでもなく、ドイツ人の勤勉さやヒトラー を 始めとする側近らをブラックな笑いで装飾していく。

 内容は、敗色濃くなる中で威厳の落ちたヒトラーの演説を復活させるため、宣伝省大臣ゲッベルスがかつてヒトラーのボイストレーナーを勤めたことのあるユ ダヤ人と強制収容所から引っ張ってくる所から始まる。このユダヤ人アドルフ・グリュンバウムが騒動に巻き込まれ、ゲッベルスを始めとする側近らとのドタバ タが面白おかしく描かれていく。
 ドイツ人の異常とも言える勤勉さを、ハイル・ヒトラーという挙手の連続で笑わせたり、一つの決定が束のような書類を通さなければならなかったりするの だ。また側近らも、不真面目で打算的な宣伝相ゲッベルス、右腕を挙手状態に固定した内務相ヒムラー、ヒトラーに犬のように忠誠な軍需相シュペーアなど個 性的ながらも微笑ましい人物像が描かれる。肝心のヒトラー自身も不幸な生い立ちや孤独感を強調しながらも、人間味を感じさせる人物像に仕立て上げている。 ちょっとエロシーンでは愛人エヴァの「総統、入っている気がしません」がとてもシュールだ。また、ヒトラーもグリュンバウムも同じアドルフ姓というのも巧 妙な仕掛けだ。
 こういった点で、愚かな連中ではあったけれども、個人悪者に仕立てて攻撃するのではなく、ブラックコメディというオブラートの中でナチスドイツ全般の滑 稽さを表現したのだと思う。いわゆる戦後世代によるナチスドイツ映画の視点の変化なのだとも感じるのだ。
 こうした表現方法については、かなり様々な評価があるようだ。事実を元にと言いつつも、ほぼフィクションであること。ドイツ人等を馬鹿にしすぎているこ と。ヒトラーを始めとする人物像が滅茶苦茶なことなど、酷評する向きもあるが、私自身は結構楽しめた。日本人であるからという側面もあるが、政治的、人種 的思想を深く考えずに、完全なるフィクション娯楽として楽しむ気で見ればなかなか面白い。そもそも、ヒトラーやゲッベルス、シュ ペーアなどの性格付けは完全に誇張、粉飾されまくっているのだから、歴史上の人物と言うよりは架空の登場人物として見た方がいいのだ。そう言う点では評価 は大きく二分しそう。
 残念だったのはラストシーンだろう。これだけ喜劇調で来たのだから最後まで喜劇で終わって欲しかった。この辺りにユダヤ人監督の不用意な熱情が現れてし まったのだと感じる。ユダヤ人がいかに差別され、虐待されていたかも取り入れたかったのだろうが、それまでにヒトラーやゲッベルスを意外なほど好人物に描 いてきたために、逆に裏切り行為が強く印象づけられてしまった。

  グリュンバウムを演じるのはウルリッヒ・ミューエでシリアスな演技だけでなく、こうしたコメディでもその演技力を発揮できることに感嘆する。残念なが ら亡くなってしまったが、偉大な役者だ。ヒトラー役はヘルゲ・シュナイダーで、相当メイクを施しているがかなり似ていない(笑)。だが、似ていないことで フィクションコメディとして楽しめる要因にもなった。
 また、エンドロールも興味深かった。演技か本当かわからないが、ドイツ人各年代にヒトラーやグリュンバウムを知っているかと街角インタビューするのだ。 若い子たちはヒトラーのことを意外に知らなかったりする。そう言えば、 日本でも「東条英機」知ってるかと聞いたら知らないかも知れない。

 ロケはドイツ国内で、ヒトラー官邸などは実在の古い建物を利用しているそうだ。中庭は現財務省だそうで、ハーケンクロイツの掲揚も許可されたのだとか。 廃墟の模型セットも製作されたようだが、合成CGの具合が今ひとつでスケール感は思ったほど感じられなかった。

 全般に楽しめたし、こういったジャンルの作品は余り多くないので新鮮だった。ただ、ヒトラーやナチスドイツが題材だったから、さほど思い入れることなく 楽しめたが、これが日本人監督で、例えば東条英機や天皇陛下を同様のブラックコメディ化していたら・・・評価はかなり変わっていただろう。そう言う意味で は、良くドイツで公開できたなという感想も。

興奮度★★★★
沈痛度★★★
爽快度★★★★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 1945年1月1日、ヒトラーの演説台の下 で一人の男が頭から血を流して顔を出す。ユダヤ人のアドルフ・グリュンバウムは5日間ヒトラーの側におり、この日もその真下にいたのだ。
 宣伝相ゲッベルスは最近のヒトラーの凋落ぶ りとしわがれ声に困惑し、かつての栄光を取り戻すため、かつてヒトラーのボイストレーナーを勤めたことのあるユダヤ人のグリュンバウムをザクスハウゼン強 制収容所から呼び寄せる。
 呼ばれたグリュンバウムはヒトラーの指導を いったんは断るが、ゲッベルスはヒトラーの怒りがちょうど良いのだとして、グリュンバウムの家族を収容所から呼び寄せることでヒトラーの指導を行うことに 同意させる。5日後にはパレードと演説が控えており、グリュンバウムは指導を始めるが、ボクシングでヒトラーを殴り倒してしまったりと何やら変な雲行きに なっていく。それを見ていたSS大将らはグリュンバウムを排除しようとするが、ゲッベルスは楽しんでいる。
 ゲッベルスらは廃墟のベルリンを見せないよ うにと、軍需相シュペーアの計画した建物カバーとパレードコース、式典を準備する。  次第にヒトラーはグリュンバウムを気に入ってきて、父親からの虐待などの辛い過去を話し始める。息子から臆病ものと言われたグリュンバウムはヒトラーを殴 り殺そうと思うが、その手を止める。
 グリュンバウムはゲッベルスにザクスハウゼ ン収容所の解放を求める。しかし、ゲッベルスはそれを拒否し、家族共々収容所に送還する。だが、ヒトラーはグリュンバウムを待ち望んでおり、ゲッベルスは 仕方なくグリュンバウムを引き戻す。グリュンバウムは解放された友人からの電話を確認するが、実際は銃に脅されており、解放はされていなかった。
 グリュンバウムはヒトラーにベルリンが廃墟 になっていることを明かす。だが、ヒトラーは驚くこともなく、グリュンバウムに信頼を寄せるのだった。その姿を見たヒムラーは心配するが、ゲッベルスは想 定内だというのだった。実は、演説の際に爆弾を仕掛け、ユダヤ人のせいにしてヒトラー共々抹殺しようというのだ。このことを聞いたシュペーアはヒトラーに 密告する。
 その晩、ヒトラーは眠れずにそっとグリュン バウムの部屋を訪ねる。驚くグリュンバウム夫妻だが、ヒトラーを間に入れて練るのだった。だが、妻はヒトラーを殺そうと枕を押しつける。ヒトラー一人を殺 しても変わらないと、グリュンバウムはそれを止める。
 1月1日となり、パレードと演説の準備には いる。ヒトラーは整髪に行くが、そこで髭を落とされて激怒。そのため声が出なくなってしまう。そこでヒトラーのかわりに陰でグリュンバウムが演説をするこ ととなる。演題に上ったヒトラーは口ぱくで演技し、台の下でグリュンバウムが原稿を読み上げる。しかし、途中のユダヤ人差別あたりからグリュンバウムは読 むのをやめ、ヒトラーの生い立ちや秘密を暴露し始める。グリュンバウムは銃で撃たれて血だらけに。ヒトラーが退席した演題が爆発するのだった。

(2009/3/22)