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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
敵こそ、我が友 〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜  評価★★★☆ 元SS中尉クラウス・バルビーの数奇な人生
MY ENEMY'S ENEMY/MON MEILLEUR ENNEMI
2007
  フランス 監督:ケヴィン・マクドナルド
出演者:クラウス・バルビー ほか
90分 カラー
 
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 第二次世界大戦において、その残酷性から「リヨンの屠殺人」と称された元ドイツ親衛隊中尉クラウス・バルビーの数奇な人生を追ったドキュメンタリー。バ ルビーはたかだかSS中尉という階級ながら、当時のヴィシー政権下のリヨン市の保安を任される立場で、フランスレジスタンスの壊滅を任務とした。その中で レジスタンスの全国抵抗評議会議長だったジャン・ムーランを拷問死させたことで一躍有名となり、孤児院の44人のユダヤ人の子供を収容所送りにして死に至 らしめたことでも知られる。
 だが、レジスタンスを殺害したり、ユダヤ人の婦女子を収容所送りにしただけならばもっと多くの数を死に至らしめたドイツ軍将校は多い。クラウス・バル ビーが取り上げられる理由は、バルビーの持つ特異な人格と特技にあると言える。バルビーは熱烈な国家社会主義者であり、たとえヒトラーが指導者でなかった としても国家社会主義を邁進したであろう。それがゆえに戦後、第四帝国の建設の野望に駆り立てられていくのだ。そして、バルビーは拷問・尋問のプロであっ た。その手口は冷酷で残忍なものであったが、情報を引き出す手段として有効で効果的であったのだ。その特技は戦後もアメリカ情報部の欲するところとなり、 その後の数奇な人生を形成していく。

 数々の罪を犯したクラウス・バルビーは、1972年にボリビアで生活している所を発見され、1984年に終身刑が言い渡されるまで、戦犯として捕えられ ることはなかった。最終的には1991年にフランスで獄死するのだが、彼が戦犯にならずに生き延びた理由とそれまでの生活には謎が多い。本作はその謎に焦 点を合わせたものであり、そこにはアメリカ陸軍情報部(CIC)、バチカン右派、ナチス残党による秘密結社の存在が示唆される。
 本作の原題は「敵の敵は味方」という意味であり、それが本作の本質である。アメリカは戦後、対ソヴィエト対策として強い反共政策を取っていくのだが、か つてソヴィエトの敵であったドイツナチスは対ソヴィエト共産党の情報と対応策に長けていることに着目し、敵の敵を味方に利用しようとしたというのだ。バル ビーは戦犯になることなくCICに雇用保護され、フランスからの引き渡し要求に際しては、バチカン右派の手引きで南米に逃げ込む。本作では元CIC職員、 バルビーの通訳、バルビーに拷問を受けたレジスタンスをはじめ、歴史学者等の証言や発言によってそれを示していく。
 南米のボリビアに移住したバルビーはアルトマンと名を変えて生活するが、次第にナチス残党と連絡を取ってボリビアで第四帝国の建設に意欲を燃やしてい く。意外にもボリビアでのチェ・ゲバラ殺害計画にも関与したとの話もあり、ボリビア軍事革命政権の陰の指導者でもあったようだ。映画「チェ  39歳別れの手紙(2008)」の中でボリビア政府軍とCIAの関与が描かれていたが、さらに元ナチスのバルビーが絡んでいたとは実に 興味深いものがある。

 ナチスハンターによって逮捕されたバルビーは終身刑を言い渡されるのだが、本作では意外にもバルビーの弁護を務めるベトナム系フランス人弁護士や父親の 人間性を信じる娘の映像が多用されている。一見、極悪人戦犯バルビーがアメリカ庇護による長い潜伏の後逮捕されてめでたしめでたし、と認識されがちな流れ の中、実は公平な視点と大衆の正義への懐疑も描かれているのだ。弁護人は戦後間もないニュルンベルグ裁判で、デーニッツなどの戦犯ですら終身刑にならな かったのに、大衆の激情によってバルビーが終身刑となるのは先達の法を超えたと批判し、44人の孤児を収容所送りにするよう提案したのはフランス政府だっ たと告発する。また、バルビーは「レジスタンスは尊敬している」「戦時は私を必要としたのに、裁かれるのは私一人だ」と述べるのだ。
 バルビーの犯した罪は消えることはないが、バルビーを告発するその陰にはフランス人民の責任や利用したアメリカ政府の責任の隠ぺいが見え隠れする。バル ビーを罰したところで、根本の問題は何も解決されない。一人の狂信者が消え去ったところで、狂気の大衆から次の狂信者が生まれてくるのだ。そしてそれを利 用し、捨てる歴史が繰り返される。

 ドキュメンタリー作品としては、証言者が多数登場し、前半部分はかなり単調で飽きやすい。だが、後半からは単なる勧善懲悪作品ではないことがわかり、非 常に興味深くなった。監督はケヴィン・マクドナルドで「ブ ラック・セプ テンバー 五輪テロの真実 (1999)」という佳作も手がけており、公平な視点で核心をついていくドキュメンタリーが得意な監督のようだ。ドキュメンタリーでは ないが、「ラ ストキング・オブ・スコットラン ド(2006)」も良い作品だったし、なかなか期待できる監督だ。
 クラウス・バルビーに興味がなかったらかなり面白くない作品だろうが、ドキュメンタリーとしては王道を行く良作だった。

興奮度★★★
沈痛度★★★★

爽快度★
感涙度★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

なし

(2009/05/31)