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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「俺は、君のためにこそ死ににいく 評価★★★★ 知覧基地から飛び立って いった若き隊員たち
2007 東映  監督:新城卓 製作総指揮・脚本:石原慎太郎
出演者:
岸恵子、窪塚洋介、徳重聡、筒井道隆、伊武雅刀、戸田菜穂 ほ か
135分 カラー 

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  東京都知事石原慎太郎氏が製作総指揮・脚本を手がけた、知覧特攻基地の特攻おばさんこと富屋食堂の鳥濱トメさんの回顧録をもとに、陸軍特別攻撃隊を題材に した ヒューマンドラマ。石原氏はトメさんとは旧交が深く、ずっと映画化したいと考えていたそうだが、トメさんの語った逸話の多くはすでに幾多の書籍として公開 さ れている。本作を構成するエピソードの多くもその逸話をモチーフにしており、史実をもとにしたフィクションとなっている。
 知覧にはトメさんの尽力により「知覧特攻平和会館」が所在し、知覧から飛び立った436名をあわせて1,035柱が祀られている。会館には多くの隊員の 遺品や遺書が展示され、20歳そこそこで散った隊員の想いが涙を誘う。戦後60年以上も経過して、特攻基地でも最も有名とも言える知覧の映画が製作された ことは、石原氏嫌いの私でも感謝せざるを得ない。特攻を題材にした映画はこれまでにも数多く制作されているが、陸軍ものは意外に少ない。戦前の記録映画だ が「陸軍特別攻撃隊(1945)」「日 本ニュース 第241號(1945 日 本映画社)」があるほか、戦後では「あゝ決戦航空隊(1974東映)」がある程度。海軍零戦特攻の影に隠れて今ひとつ知名度が低かったところであり、陸軍 の特攻もあったのだということを世に再認識させることが出来たと言える。ちなみに、本作では約5,000万円かけて2機の陸軍一式戦闘機「隼」三型を制作 しており、特攻機の中心は一式戦隼として描かれているが、実際には一式戦のほか三式戦飛燕、四式戦疾風といった戦闘機のほか二式双襲撃機、九九式襲撃機、 九九式双軽爆、四式重 爆、百式重爆といった爆撃機も特攻している。さらに、後期になると機体が足りずに九七式戦闘機、二式高等練習機、九九式高等練習機といった型落ちや練習機 での特攻も行われた。
 
  さて、見る前から大方のエピソードがわかっており、感涙物であることは間違いないと踏んでの視聴であったが、間違いなく映画の9分目(2時間程度)まで は文句なしのストーリーと映像で95点。エピソードは、史実から人物や場面を改変してあるが、ほぼ実話通りの感動ストーリーに仕上がっていた。ちなみに、 三度の出撃でも帰還する妻持ちの田端少尉(筒井)の逸話は川崎少尉、朝鮮人士官の金山少尉(前川)は光山少尉、トメに残りの人生をあげると言いホタルに なって帰ってくる河合軍曹(中村)は勝又少尉と宮川軍曹がモデルとなっている。ただ、石原氏の著作とはいえ、人物名や設定を改変するのはかなり疑問で、実 名、史実通りの描き方でも十分だったのではないか。特攻映画は死に直面する心境の表現がクライマックスであり、最も難しいところである。本作は重たくなり すぎない程度にうまく表現できていたと思う。本当の隊員の気持ちなど到底計り知れない所であろうが、死とは何か、決死とはどういうことかを考えさせる契機 にはなったであろう。
 なお、私が特に涙したシーンをあげると、知覧町民の鶴田(石橋)が特攻機に向かって土下座するシーン、 弟の呼びかけに板東少尉(窪塚)が後ろ姿の阿波踊りで答えるシーンだった。これに限らず、わかっていながら涙するシーンは数多い。
 映像はややテレビドラマ的な雰囲気のする箇所もあったが、多分これはカット割りが多すぎるため。もっとロングシーンを多用していれば映画らしくなったと 思うが、まあ許せる範疇。戦闘シーンは復元した隼と米軍艦艇以外はCGと特撮によるものらしいが、これが実に素晴らしい。空中での飛行シーン、特攻機の コックピットからの視点シーン、そして特攻シーンと、ハリウッドを含む全ての作品中でも最も出来が良いと感じた。特に飛行シーンの微振動や米艦突入シーン は本物と見まがうほど。また、コックピット内からの視点は、これまでにはありえなかった斬新な試み。私個人的にはずっと見てみたかった視点であり、これだ けでも十分満足。
 役者では、トメさん役の岸恵子、特攻隊員役の窪塚洋介をはじめ、出過ぎず大人しすぎずの演技で、全体にバランスの取れた大人の雰囲気。特に窪塚は多くを 喋らせなかったのが良かったのか、背中で演じる名演技。欲を言えば、岸恵子はちょっと女優すぎで、もう少し俗っ気のある役者の方が実感があったのでは。ミ ス キャストかなと感じたのは中西少尉役の徳重聡と関大尉役の的場浩二で、演技が不自然なのがちょっと残念。特に徳重の方は重要な役割だったので、いくら 「21 世紀の裕次郎」とはいえ力不足だったのでは。これでマイナス5点なのだ。なお、田端少尉の恋人役には戸田菜穂だったが、こういう悲壮な薄幸役はまさに適 役。でも、はまりすぎ ていていたたまれなくなるのが欠点か(笑)。

 これで終わりでも良かったのだが、映画はまだ終わらなかった。確かに、これで終わったら従来の特攻映画と内容的にはなんら代わり映えしないという風にも 取れる。石原氏は残り20分に戦後の逸話を持ってくることで一線を画したようだ。トメさんは戦後もずっと知覧特攻隊員の慰霊に尽くしてきており、戦後は心 ない平和主義者や転向組から、戦争加担者として罵声を浴びせられたことも知られている。本作ではそうしたエピソードも交えつつ、トメさんが特攻隊員の慰霊 に尽くす様が描かれた。さすが、石原氏だけのことはある、特攻は悲惨で愚かなものだっただけでは終わらせない。そう言えば本作は「トメさん物語」だったん だな、と改めて実感させられた・・・・・・・のも束の間だった。あれ、あれ、あれ・・・・。中西少尉(徳重)と板東少尉(窪塚)の戦後エピソードは何なの だ。どちらもなんとなく参考にしたのかなと思う逸話も知らないではないが、史実に沿っているのだろうか。もし、そうだとしても話のストーリーとしては突飛 すぎるし、せっかくの感動が一気に薄れていくのを感じた。近年の戦争邦画はどれもこうした現代シーンを挿入する傾向にあるようだが、私個人的には非常に嫌 いである。多分、そこまで説明しないと意図が伝わらないということなのだろうが、余韻を持たせて視聴者にもっと考えさせる(想像させる)手法が日本映画ら しくて好きなのだが。 どうにかならないのだろうか。加えて、大西中将の逸話もあそこで生々しい映像は不必要だったのではと思う。映像なしの伝聞という形の方が責任を取るとい う、より印象的なものになったような気がするのだが。とにかく、最後の20分はかなり質の悪い蛇足だったといえ、トメさんの回顧シーンだけで十分だったの でないかと思う。これで一気に採点は80点に。余りにもったいない。

 主題歌はB’zの「永遠の翼」。事前に聞いた時はあまりにミスマッチと感じたが、実際の使用はオープニングにイントロと、あとはエンディングロールのみ で、映画に干渉しないよう上手に組み合わせてあった。意外と気にならないし、妙に耳に残った。悪くないかも。

 登場する兵器類としては、航空機では先にも書いたが実物大の隼2機が復元されているほか、CGで飛燕が飛んでいたが、余り活躍がなかった のは残念。隼の実機は架空の第47振武隊と第71振武隊をイメージしたマーキングを施してある。このほか1/10スケールの模型も製作したらしい。アメリ カ軍ではヘルキャット戦闘機やB-24リベレーターがCG若しくはミニチュアで登場。艦船ではフィリピン海軍が所有する元米軍駆逐艦や掃海艇を撮影に用い ている。駆逐艦はキャノン型駆逐艦アサートン(ラジャー・フマボン)で、なんと一時は日本の 海自護衛艦「はつひ」を名乗っていたこともある艦だ。掃海艇はレーヴン/オーク級掃海艇ヴィジランス(ケサ ン)。これらは実際に3.5インチ砲や機銃を発射させて撮影しており、リアル感は当然だ。また、米空母はスケール1/25の模型を用いている。

  最後の20分を除けばかなり出来の良い映画だった言える。石原氏にしては癖のないオーソドックスな仕上がりで、我々日本人が忘れてはならない精神と博愛の 心を伝える歴史的な作品にもなり得るものだ。特攻に散った若者の決して単純ではない葛藤と決意。銃後に残された家族の悲しみと忍耐。そして、最後の20分 で言おうとしていた戦後マスコミ・進歩人の無責任豹変ぶり。平時の我々には想像も付かない決断と苦しみが、いつどんな形で我々の生活に降りかかるか知れな い。その時にパニックにならずに冷静な判断が下せるのか。我々はそのためにも、先人の残してくれた功罪をしっかりと心に刻んでおく必要があるのだろうとつ くづく思った。
 一部で右翼映画とか戦争賛美という批判も見られるが、そういう企図はないに等しく、公正な視点で描かれていると言える。美化しているとすれば、特攻隊員 とトメさんの容姿ぐらいのものだろう。この映画を通して、特攻隊員が後世に言い残したかった無念を汲み取ることができないのならば、右翼左翼・平和主義云 々以前に人としての心を失っているとしか思えない。思想や主義主張などはいくらでも変えることが出来る。しかし、変えられないのは生への欲求であり希望な のだ。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★★
感涙度★★★★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)



(2007/05/12)