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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「リダクテッド 真実の価値  評価★★ イラク人少女レイプ事件のフェイクドキュメンタリー
Redacted!
2007  アメリカ・カナダ 監督:ブライアン・デ・パルマ
出演者:パトリック・キャロル、ロブ・デヴァニー、イジー・ディアズほか
90分 カラー 

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  イラク戦争の最中に実際に起こった、アメリカ軍兵士によるイラク人少女レイプ・殺人事件を題材にした、ドキュメンタリー調ドラマ。監督は同様にレイプ 事件を扱った「カジュアリテーィズ(1989)」のブライアン・デ・パルマで、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞したもの の、FOXニュースが上映ボイコットを呼びかけるなど、話題を呼んだ。ストーリーの核となる事件は実際に起こったこと だが、その前後の状況や細かい描写についてはフィクションとなっている。
 本作は、実際の映像を用いるのではなく、兵士自身が撮影したプライベートビデオやフランスやイラクのテレビニュース映像、監視カメラ、youtubeな どのインターネット動画といった風体をなすフェイク(疑似)映像によって構成されている。いかにもドキュメン タリーのようにも見えるのだが、全て作り上げられた映像で、あくまでフェイクドラマということなのだ。

 映画の元となる事件は、2006年3月にバグダッド南部のマハムディヤで起き、14歳のイラク人少女が米陸軍兵5人から性的暴行を受け、一家4人が殺害 されたものである。彼らは検問所で酒を飲み、カードをしながら犯行計画したとされ、本作もそれを踏襲している。なお、軍法会議により、主犯格の1人ポー ル・コルテス軍曹には禁固110年の有罪判決が下っている。また、イラクテロ勢力は報復のために捕らえた米兵の首を切断して殺害している。

 さて、フェイク(疑似)ドキュメンタリーという手法の効果だが、本物のドキュメンタリー映像に比べて、ショッキング性や生々しさが薄れる効果が発揮され ているようには感じた。より詳細な描写をしながらも、やはりフェイクなんだという意識が強く働く。解説や評論では「ドキュメン タリーを超えたリアルさ」などと書かれていたりするが、どう考えてもドキュメントを超えることはないと思う。視聴者は映像の全てをそのまま鵜呑みにしてい るのではなく、色々と考えながら見ているのだから。従って、あまりそのリアリティということに固執する意味はないと思われ、むしろ実際に起こった事件をド ラマ化して見やすくしたものと捉えた方が良いだろう。

 また、監督は原題にあるとおり「リダクテッド(編集済み)」を主テーマにあげており、本事件の顛末を含め、アメリカに都合の悪いものは公表・報道されな いということを指摘したいようだ。ベトナム戦争で米軍が学んだことは、反戦運動にならないよう報道規制をかけることなんだそうで、イラク戦争の真実の映像 がリダクテッド(編集済み)されており、監督はリダクテッドされた事実を、フェイクによって再現しよう というのだろうか。
 ただ、残念ながら本作からはそのリダクテッドについては、余り響いてくるものがなかった。余り突っ込みすぎると、アメリカ社会で問題になると判断したの だろうか、監督の意気込みの割には大人しめで、肩すかしを食らった感じ。そもそも、このイラク人少女レイプ・殺害事件については、映像こそ出てこないが、 結構報道もされているし、そんなにリダクテッドされている題材でもないような気はするのだが・・・。まあ、この題材を映画として取り上げたことには評価し たい。

 ストーリー的にはレイプに加担する兵がいる一方で、レイプを拒否する兵、傍観する兵といったバランス性、映像撮影に固執する兵が最後は自分が被写体に なってしまう悲劇など、設定自体はなかなか興味深い。だが、ドキュメンタリー調の欠点とも言える人格描写や契機づけの浅さが気になる。どうしても深く描写 しようとすると説明調になってしまうし、ドキュメンタリー風映像の中では描ききれない部分が多い。従って、犯罪を犯していく兵士や、それに加担するもの、 拒否するものの心情変化が心に響かない。犯罪に苦悩して告発する兵士の葛藤も思ったよりも伝わってこないのだ。それも一つの手法なのかも知れないが、映画 としての起承転結から言うと物足りなく、中途半端。

 映像としては、やはり不満が残った。本物のハンディビデオとフェイクでは撮り手から伝わってくるものが違いすぎる。本作のハンディビデオ映像は、余計な ものが排除されて綺麗す ぎる。監視カメラ映像も鮮明に音声が入っているのも不自然。
 登場する兵器類としては検問所に止まっているM1エイブラムス戦車や機銃装備のハンヴィーの姿が見える。銃撃シーンや仕掛け爆弾爆発シーンは結構リア ル。

 最後に、どうも合点がいかないことがある。本作には、とても憎むべき犯罪行為が描かれているのだが、その悲惨さや怒りというものを思ったよりも感じるこ とができなかったのは何故だろう。終盤になるにつれて白けていく自分があり、それは監督のフェイク映像遊びに飽きてきたのかもしれない。描写も細かく、手 の込んだ映像ではあったけれど、いささか映像遊びに走りすぎていたのかもしれない。題材が題材だけに普通のドラマ仕立てで作った方が、ずっと心に響くもの があったかもしれない。 

興奮度★★
沈痛度★★★★

爽快度★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 2006年4 月、イラクのサマラにあるアメ リカ陸軍駐屯地。E中隊所属のある分隊に属するメキシコ系サラサール上等兵は、映画学校に入学を夢見て、ハンディビデオでイラクの真実を撮ると張り切って いる。分隊の仲間には妻帯者で弁護士のマッコイ特技兵、本を愛するゲイブ上等兵、南部出身で気の荒い二人組フレーク上等兵とラッシュ特技兵がいる。
 彼らの任務は検問所で、それまでは戦闘らし い戦闘はなかったが、言葉の通じぬイラク人との接触は緊張を伴った。サラサールは取り留めもない映像を撮っていたが、イラクの真実を撮っているとは言い難 い現状にやや不満だった。
 ある日、検問所に制止をきかない自家用車が 突っ込んでくる。軍曹の命令でハンヴィ上にいたフレーク上等兵が銃撃を加える。車内には産気づいた妊婦とその兄が乗っていた。言葉の通じぬ彼らは病院に急 いでおり、検問所の通り方がわからなかったのだ。妊婦は胎児とともに死亡し、そのニュース映像がヨーロッパに流れる。基地に戻り、サラサールはカメラを回 してフレークに気分を問う。フレークは戸惑いながらも「思ったほどビビらなかった。魚をさばくようなもんだ」とうそぶく。マッコイはこの言動に怒りを表す が、軍曹の「命令に従っただけだ」というとりなしで場は収まる。
 6月になり、椅子などのゴミが置かれた場所 に不用意に近づいたラッシュを、スイート曹長がたしなめる。仕掛け爆弾に気をつけろと。だが、そのスイート曹長自身が爆弾の餌食となって戦死してしまう。 イラク人に憎悪の感情を強くするラッシュとフレーク。
 テロリスト容疑のイラク人家屋に捜索任務で 潜入する。泣きわめく家族をしり目に男を連行し、読めもしないアラビア語の手紙を押収する。その男の娘二人は通学路として検問所を通っていた。15歳の姉 に性的興味を抱いたラッシュは検問の度に体を触る。
 7月になり、酒を飲んでカード遊びをしてい ると、フレークが姉妹の家にレイプ(遠足)に行こうと言い出す。ラッシュはすぐに賛同し、サラサールもカメラに収めたい一心で同行する。ゲイブは拒否した が、マッコイは仲間の警護のためしぶしぶと付き合うことに。
 気がふれたように家に潜入するフレークと ラッシュ。マッコイは彼らを制止しようとするが、外に追い出されてしまう。フレークは騒いだ祖父と母親、妹を殺害し、15歳の姉をレイプした上で殺害す る。サラサールはその一部始終を撮影するのだった。起こった事態に苦悩するマッコイだったが、ラッシュにきつく口止めされる。
 家族を殺されたイラク人の父親はアメリカ兵 の仕業だと確信し、怒りを覚える。ある日、カメラで撮影中のサラサールがテロリストに拉致される。翌日サラサールは首を切られた姿で野原に放置されてい た。イラクのインターネットには少女レイプの報復として首を切断されるサラサールの姿が流される。
 米軍はこのことを認めようとしなかったが、 罪の意識にさいなまれたマッコイは匿名でネット上で告白。事件が明るみになり、分隊員は事情聴取を受けることに。マッコイは真実を話そうとするが、軍の上 官は臭いものに蓋をしたい雰囲気だ。フレークとラッシュは悪びれるわけでもなく、上官の聴取にも開き直る始末だった。

(2009/1/30)