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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「チェ 39歳別れの手紙  評価★★★☆ 革命家チェ・ゲバラの半生記後半(ボリビア革命闘争)
CHE part2:The Argentine
2008
  スペイン・フランス・アメリカ 監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演者:ベニチオ・デル・トロ、フランカ・ポテンサ、ルー・ダイアモンド・フィリップスほか
133分 カラー 

 
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 チェ・ゲバラの半生を描いたドキュメンタリードラマの後半第二部。本作ではキューバ革命を成功させたゲバラが、1965年にカストロのもとを離れたとこ ろから始まり、1966年のボリビア革命闘争を主題として描かれている。ご存じのとおり、ゲバラはボリビア武力闘争の途中1967年に処刑され39歳の人 生を閉じることとなるが、そのため第一部の華々しく勇敢なアクション性に比べ、この第二部は陰鬱とした絶望感のヒューマンドラマとなっている。
 監督はこの第二部をメインに作ろうとしたらしいが、わずか11カ月のボリビア闘争だけではゲバラを描き切ることができなかったらしく、第一部の製作と なったという。確かにこの第二部のゲバラは第一部のゲバラとはまるで異なり、崇高な理想像が次第に鳴りを潜め、苦悩と焦燥がありありとあらわされている。 髭もボウボウになっているが、第一部と比較されることによってその変化が見て取れるのだ。

 ボリビアでのゲバラの活動は彼の著書「ゲバラ日記」に記されており、本作もそれに忠実に制作されたという。ボリビアの貧民・農民のために武力闘争を立ち 上げたにも関わらず、共闘するはずだったボリビア共産党の支援もソヴィエトもキューバのカストロからさえも満足な支援を得られなかった。現地の農民に対し て革命の意義を説得し、協力を得ようと試みるも、反対に裏切り、密告を受ける始末だった。農民からの協力を得られないゲバラらは食糧弾薬に事欠き、次第に 仲間同士の結束すら失っていくのだ。最後まで希望と理想を捨てなかったゲバラだが、一説には終盤期には非協力な農民からの略奪、離反容疑の同士処刑という 厳しい行動に出たとも言われている。革命が思い通りに進まない苛立ちがあったのだろう。
 本作では、ゲバラ日記に忠実だったためか、終盤の苛立ちや過激な行動についてはあまり触れられていない。身も心もボロボロだったはずのゲバラがかなり元 気なまま最期を迎える。真実はどうだったのかわからないが、「革 命戦士ゲバラ!(1969米)」では顔つきも精神的にも極限に達したゲバラが描かれており、この方がリアルに感じられた。

 また、ボリビア農民との接点や農民の感情があまり描かれず、何故ゲバラの理想が農民に受け入れられなかったのかということが、あやふやなまま終わってし まったのが残念だ。このあたりは、第一部でも第二部でも描かれなかったが、キューバ革命成立後にゲバラが指導したキューバの農業政策を抜きには語れないだ ろう。
 ゲバラは農業改革機構工業部長にも就任し、高い意識を持った農民育成に情熱を傾け、自らも土日には農場に出かけてボランティア活動をしたという。このパ フォーマンスが、たとえそれが本心からのものであったとしても、彼はその限界 を感じていたはずだと思う。いくら自身が農場に出かけたところで、農民の士気は思ったほどあがらなかったはずだし、生産性も向上しない。それは、何と言っ ても彼が「戦う農民」ではなくて、あくまで「戦う革命家」だったからだ。真の理想的革命家を標榜するのであれば、彼自身が生産の核となる農民になるのが筋 だ。農民にとって彼はいつまでも天上の人でしかない。
 革命という反体制活動は人間にとって(男女問わず)、アドレナリンが噴出する麻薬のような存在だ。生きていること、自己の存在を実感する最適の手法であ り、自己陶酔の最たるものだ。だが、陶酔できるのはあくまで指導者だけであって、それ以下のもの(兵や農民など)はさほどそれを感じることはないだろう。 むし ろ、日々の生活や家族のことを想えば、現実的な功利が優先するのが人間の性だ。決してリーダーになることのない農民や兵にとって、指導者は超えることが 出来ない最初の敵となっていくのだ。
 結局、チェ・ゲバラが最も悩み、彼を死に追いやった原因はここにあると言えるのであって、革命活動、共産主義体制において、指導者とそれ以外のものが決 して交わることがないという内部崩壊の構図を見て取ることが出来る。革命の核は農民であり、各個が指導者となるのが理想である。だが、指導者ばかりで生産 性があがるわけもなし、農民ばかりで将来性が開けることもない。結局、指導者と農民は主と従の関係にならざるを得ず、対立した指導者を放遂してもまた新た な指導者と対立していくのは共産主義の歴史が物語っている。
 チェ・ゲバラは適正なる指導者に活路を見いだしたわけだが、次第に革命の矛盾に苛まれていく。彼自身気づいていたはずであるが、戦う農民の代わり はいくらでもいるが、戦う革命家(自身)の代わりはいないという矛盾である。共産主義において個に依存することは、本来公平性に反することであり、それが 腐敗や不公平につながっていく。自身が農民によって評価され、淘汰されるべき存在でありながら、それを受け入れなかった。彼の最大の失敗はそこにあり、星 の数ほどの共産主義者が陥った人間の性でもある。
 このあたりを表すシーンが少なかったのが、あやふやなイメージとなった原因ではないかと思うのだ。ボリビアの農民たちはゲバラの理想など理解もしていな かたし、必要とも感じていなかった。映像を通して見れば、愚かな農民たちに見えるが、彼らにとってゲバラは単なる犯罪者でしかなかったのではないだろう か。

 とはいえ、ほとんど描かれることのなかったボリビア革命闘争を堪能できたのは良かった。キューバ人指導層とボリビア人兵士との微妙な温度差も良く描かれ ていたし、ボリビア政府軍に追い詰められていく過程も詳細に描かれていた。ただ、登場人物がたくさんいるので、名前と顔が一致しないことが多々ある。タニ ア、ミゲル、ホアキン、ウイリー以外は思い出せない(汗)。ラストの処刑シーンは、どうやって処刑されたか諸説あるので、本作はオーソドックスにマリオ・ テラン軍曹の銃撃という形で仕上げられている。その際のゲバラ目線は意表をつかれた。戦闘シーンでは銃撃戦シーンがメインとなっているが、まあまあの出来 かな。余談だが、エンドロールは無音でやたら長い。どこで席をたっていいのかわからなかった(笑)。

 全体に本作は、ゲバラの美しい部分に焦点をあてすぎた感はある。ゲバラの著書に忠実に描けば当然そうなるのだろうが、果たしてそれで良かったのかなとい う思いはある。もう少し、ゲバラの真実に触れてみたかった気はするが、それは望みすぎだろうか。


 

興奮度★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

  1965年10月3日、キューバ共産党の 発足式典に閣僚チェ・ゲバラの姿も名前もなかった。共産党書記長に就任したフィデル・カストロは聴衆の前で静かにゲバラからの手手紙を朗読する。
 ゲバラは、キューバへの愛情をあらわしながらも、キューバでやるべきことはやったとして、地位も市民権も放棄し、新たな革命の地を求めて去って行ったの だ。ゲバラはアフリカのコンゴ革命に参加したのち、1966年にキューバに一時帰国する。そこで、妻のアレイダや4人の子どもと再会し、最後の別れとな る。
 1966年11月3日、米州機構の特使のラモンと偽ったゲバラはボリビアに入国する。ボリビア人の兵士を訓練するため、かつての戦友たちもキューバから やってくる。準備計画は順調のように見えたが、協力するはずだったボリビア共産党第一書記のマリオ・モンヘは武力闘争への懐疑と外国人指導者に対する不信 感から、ゲバラへの協力を断ったうえ、妨害活動まで始める。
 共産党や農民からの支持も得られず、ゲバラらは空腹と貧困にあえぎながらも、ゲリラ活動を開始する。都市部との連絡係りだったタニアは、フランス人活動 家レジス・ドブレやアルゼンチン活動家を連れてくる。ゲバラはドブレにサルトルやラッセルといった著名な人物に支援を要請するよう頼む。しかし、ドブレは 岐路途中にボリビア政府軍に捕まってしまう。このことでボリビア政府は非難されるが、ゲリラ組織の指導者がゲバラであることがばれてしまう。さらに、ボリ ビアのバリエントス大統領はゲリラ掃討のためにアメリカCIAの支援を受けることとなり、特殊部隊の訓練と爆撃機の支援を得る。
 このことにより、ゲバラのゲリラ隊は苦戦を余儀なくされる。シグロ・ペインテ鉱山の労働者がストを起こし、ゲバラは共闘を目論むが、労働者たちは無残に 殺されてしまう。そして、別動していたホアキンやタニアの隊が、農民の裏切りにより待ち伏せ攻撃で全滅してしまう。
 病人や負傷者を抱え、ゲバラたちは山中をさまよい、ボリビア政府軍はCIAの指導のもと、特殊部隊で包囲網を狭めてくる。ある村で待ち伏せ攻撃を受け、 ミゲルが戦死。
 さらに、1967年10月18日、ロ渓谷でゲバラたちは追い詰められ、脚を撃たれたゲバラは捕まってしまう。イゲラ村に移送されたゲバラは、ボリビア軍 大佐の質問につばを吐く。仲間の遺体を同室に投げ込まれたりもするが、警備に立った軍曹はゲバラに若干の親しみを感じ煙草を与える。
 翌日、ボリビア軍大尉は司令本部から処刑の「パピ600」の命令を受領する。戻ってきた大佐はゲバラの処刑を、進んで申し出たマリオ・テラン軍曹に命じ る。隣室ではウイリーが処刑される。軍曹は躊躇するが、ゲバラは軍曹にしっかりと撃てと言い、軍曹は3発の銃弾をゲバラに撃ち込む。


(2009/02/1)