「バトル・ライン 復讐のソ連兵・ナチス壊滅」
評価★★ バルバロッサ作戦に抵抗する国境警備隊
VALKYRIE
V IYUNE
41-GO/JUNE,1941
2008
ロシア 監督:アレクサンダー・フランスケヴィッチ
出演者:セルゲイ・ベズラコフ、アレクサンダー・フランスケヴィッチ、パブェウ・デロンク、マグダレーナ・グロスカ
ほか
206分(前後編2巻 全4話) カラー
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第二次世界大戦のドイツ軍によるソヴィエト侵攻「バルバロッサ作戦」を背景に、国境警備隊のソヴィエト軍士官の対ドイツ軍抗戦とポーランド人女性の悲恋
を描いたアクション系ヒューマンドラマ。ロシアのテレビムービーで、全4話で構成されてはいるが、全編を通した一つのストーリーとなっている。
バルバロッサ作戦はドイツによる1941年6月22日のソヴィエト越境に端を発したもので、開戦準備を怠っていたソヴィエト軍に対し、周到に準備された
ドイツ軍は圧倒的な兵力と装備で緒戦を勝ち進んでいく。厳しい冬が到来するまでの間、ドイツ軍は白ロシア、ソヴィエトを蹂躙する。本作は明確な地名が出て
いなかったようだが、元ポーランド人領地をソヴィエトが占領しており、ダムのある河川堤防の警備隊ということから、1939年にソヴィエトが占領したポー
ランド西部なのだろう。また、時系列が明瞭ではないが、雪が舞い始める時期までの数ヶ月間を描いているものと思われる。
同じくバルバロッサ緒戦あたりを描いた作品には「ソビエト侵攻 -バルバロッサ作戦1941-(2003露)」「レ
ニングラード攻防戦
(1974,1977ソ)」あたりが有名所。
作品は4話構成となっており、内容の濃さの割にはやや冗長な作りで、見終わった後の印象はどうもしっくりこない。一応中核となるストーリーはソヴィエト
軍士官とポーランド人女性との禁断の恋にあると思われるが、そこに開戦、ドイツ軍との戦闘、部下の死、ドイツ軍将校との決闘といったアクションシーンが加
えられ、それなりのイベントが盛り込まれてはいる。だが、どうもしっくり来ないのは、禁断の恋がストーリーの展開の中で必ずしもスムーズに入りこんでいな
いからだと思われる。中途半端な恋愛と同等以上に、全滅していく部下との友情、占領しているドイツ軍将校らとの確執といった側面が強く支配し、いつの間に
かテーマ性がぶれてしまっているのだ。4話構成の1話ごとにそれぞれのテーマを強く押し出して完結させていればそうは感じなかっただろうが、ダラダラと続
く4話構成はちょっと不完全燃焼。
また、残念だったのは後半になってからの尻すぼみ。徐々に盛り上がってくる期待感を見事に裏切ってくれた。アクションなのか、恋愛なのか、どこに力点を
置こうとしているのかわからない。イベント毎の細かい描写はそれなりに充実しているだけに、全体の構成に問題があるのだろう。描写の重点バランスや、シナ
リオのつなぎ方次第ではもう少し良い作品になったような気がする。
全体的には、アクションなどにかなりハリウッド映画的な要素も感じられるが、ロシア風フォークのような叙情的な音楽や自然風景、ベタベタの心情描写シー
ンなどはかつてのソヴィエ
ト記録映画的な雰囲気も感じられる。それが先に述べた冗長感を醸し出してははいるので、ロシア的な味と言えば言えなくもない。ただ、テレビムービーだけに
エキストラも兵器類もしょぼいのでスケール感はあまり感じられない。戦闘シーンも銃撃戦がメインで、もう少しドイツ軍の圧倒的武力が示されていれば、雰囲
気が変わったであろう。
ポーランド人女性ハンナ役は金髪美女。主役のソヴィエト軍士官イワンは国境警備隊所属のハンサム中尉で、肩章が緑色となっている。ロシア映画の主役はお
決まりの美男美女なのだ(笑)。このほか戦車隊少佐や空軍兵などの姿も見られる。
このほか、興味深いのは、ドイツ人やポーランド人の描き方。確かに、ドイツ兵は残忍ではあるが、その中にも苦悩や葛藤と言った人間らしさも覗かせてい
る。ポーランド人は領地を奪われたとしてソヴィエト兵を憎んでいる。最終的にはソヴィエト側に協力はするのだが、そう言った意味でロシアも多彩な描き方が
できるようになったのだと感銘を受けた。
全般にそこそこの出来で、決してつまらなくないが、まとまりに欠けた印象。歴史的事象としても余り突っ込まれているわけでもなく、アクションも尻すぼみ
だし、恋愛ものとしても・・・・。
興奮度★★
沈痛度★★★
爽快度★
感涙度★★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
(第1話) ソヴィエトの駅から国境警備隊中尉のイワン・ブロフが列車に乗ろうとして
いる。ある歩兵は占い師に死ぬと言われるが、イワンはそれをなぐさめ
る。そのイワンの姿を見てポーランド人女性のハンナが近寄ろうとするが、イワンはそれを制止する。実は、イワン中尉はポーランド人女性と交際しているとい
う噂によるスパイ容疑で取り調べを受けていたのだ。列車での帰路途中、警官を人質にしたポーランド人レジスタンスの襲撃を受ける。イワンの機転で難を逃れ
るが、あの歩兵は死亡してしまう。
国境警備隊の基地に戻り、ポーランド人の妻を持つ警備隊の隊長(少佐)はイワンに気を付けるよう忠告するが、イワン中尉はハンナと水車小屋で密会する。
ハンナの祖父ベリスキー・ヴォイツェフは領地を奪われハンナの両親を殺害したソヴィエト兵を憎んでおり、交際を認めていなかった。また、部下のリュリャク
はイワン中尉がハンナとつきあっているのを知っており、嫌みを言う。彼が密告者でもあったのだ。
水車小屋で密会中に緊急召集がかかる。ドイツ軍が対岸に集結を始めたのだ。堤防で陣を構えるイワンらの前でついにドイツ軍がボートで渡河を始める。機銃
で応戦するも多勢に無勢であり、イワン中尉は生き残ったルスタムとミハシ軍曹を連れて退却することに。
(第2話) 基地に戻った3人だが、すでにドイツ軍の攻撃で陣地は壊滅していた。新たに堤防に陣を構えたドイツ軍のオットー大尉のもとに、兄のカメラマン
ギュンターがやってくる。前線の記録映画を作ろうというのだ。3人はドイツ軍の本拠地に接近するが、軍用犬に追いかけられて逃げる。途中で、死亡したドゥ
ダレフ曹長の死体を見かける。陣地についた3人のもとにドイツ軍が接近してくる。死体の間で死んだふりをする3人。カメラマンのギュンターは転がる死体に
大喜びして撮影するが、オットー大尉はあまりいい顔をしない。
ルスタムは死んだふりをしながらも、恋心を寄せていた隊長の娘の死体を見て逆上。気が触れたように踊りまくり、ドイツ兵に射殺されてしまう。オットー大
尉はほかにも生き残りがいないか確かめさせ、危機一髪のところでイワン中尉とミハシ軍曹はそこから脱出を図る。イワン中尉らはドイツ軍の通信線を切る妨害
工作を行い、ドイツ兵から兵器や食料を奪う。しかし、初めて人を殺したミハシは錯乱状態に。イワンはそれをなだめるのだった。
イワン中尉はハンナの所に忍び込むが、祖父ヴォイツェフに見つかってしまい追い返される。その帰路にドイツ兵に見つかり、イワン中尉は捕虜になってしま
う。ヴォイツェフは訪ねてきたドイツ軍オットー大尉に土地を返還してくれるものだと信じ込んで、堤防修理の協力に応じる。
(第3話) ギュンターは白兵戦のシーンが足りないとして、オットー大尉に頼み込み、ソヴィエト軍捕虜同士を戦わせる。イワン中尉は密告者のリュリャクに
殺されそうになっているところに、陰で潜んでいたミハシの銃弾が助ける。その隙にイワン中尉は逃げ出すが、その際にギュンターを刺して殺害する。だが、ミ
ハシをはじめ他のソヴィエト兵は皆殺されてしまう。
怒り狂ったオットー大尉はウルフ上級曹長に命じてイワン中尉を追跡するが、ドゥダレフ曹長の死体をイワン中尉と誤認して戻る。イワン中尉は水車小屋でハ
ンナと再会。ここを離れず、ハンナを誰にも渡さないと強く抱きしめる。
イワン中尉は単身でドイツ軍車列を攻撃。オットー大尉は周辺を捜索させ、イワンの立てた国境碑(墓碑?)を見つけて引き倒す。ハンナは祖父とともにオッ
トー大尉に招待されるが、兄を殺されていらだつオットー大尉はハンナだけを招き入れる。身の危険を感じたハンナだったが、この場はなんとか帰ることが出来
る。イワン中尉は寒空の中、死んだミハシの亡霊に出会い、励まされる。
(第4話) イワン中尉はダムに潜入して爆破。オットー大尉は視察に来た将軍に堤防の修理を完成させるよう命じられ、イワンの捜索を強化する。イワンは追
いつめられて崖から飛び降り、足を怪我する。それをハンナの使用人ヤチカが見つけ、ハンナとともに手当を施す。ハンナは祖父ヴォイツェフにイワンを匿うこ
とをお願いし、祖父もようやくそれを認める。オットー大尉はハンナの村に捜索に来るが、ヴォイツェフらは間一髪のところでイワンを村の外に連れ出す。しか
し、ハンナがイワンと通じていることを悟ったオットーはついにイワンを追いつめる。イワンを捕らえたオットーは祖父ヴォイツェフ氏を殺害し、イワンのいる
小屋に火をつけさせる。ハンナは兵のなぐさみものとして連行される。燃え尽きた小屋の地下室で難を逃れたイワンはハンナを救出するために、ドイツ軍車両を
奪い司令部に潜入し、オットー大尉と対決する。なんとかハンナを助け出したイワンだったが、背中に銃弾を受けており、ハンナの腕の中で息絶えるのだった。
(2008/12/22) |
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