「トロピック・サンダー 史上最低
の作戦」
評価★★★ 戦争映画製作をネタにしたパロディ
TROPIC THUNDER
2008
アメリカ 監督:ベン・スティラー
出演者:ベン・スティラー、ジャック・ブラック、ロバート・ダウニー・Jr、ブランドン・T・ジャクソンほか
107分 カラー
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戦争映画を製作しようとするクルーの顛末を描いたパロディ・コメディ戦争映画。「映画の中で映画を作る」というシチュエーションや、撮影だと思っていた
のがいつ間
にか本物の戦闘に巻き込まれていくといった意外性が楽しいが、何と言ってもフェイクシーンや著名作のパロディ、有名スターの裏出演など、映画の中に隠され
た秘密を探していくのが面白い。
コメディとは言うものの、戦闘シーンはそれなりにエグいし、後半部分は真面目な戦争映画かのような臨場感で、コメディであることを忘れて手に汗にぎっ
た。さらに、ふざけた会話やアクションの中に、ホロリと来るような人情話や友情も盛り込まれていて、単なるコメディとは言い切れない。そのため、見終わっ
た後の爽快感は何とも微妙。腹を抱えて笑えるほどのものではなく、むしろニヤリとするタイプか。
映画中の映画は、ベトナム戦争の英雄ジョン・フォーリーブ・テイバック軍曹の手記を映画化しようとしているのだが、ジャングルに迷い込んだあげく、タ
イ・ミャンマーの麻薬密造マフィアとの戦闘に巻き込まれてしまう。実際の銃撃戦のようなものはさほどないが、火薬を用いた爆破シーンなどは映画中の一つの
目玉でもあり、なかなかの迫力。ヘリではイロコイが実際に飛んでいるし、戦争映画的な迫力も十分持っている。
さて、本作の目玉の一つであるフェイクシーンとしては、映画の冒頭でいかにもCMといった風に偽映画予告がなされている。ここをしっかり見ておかないと
後で残念なことに。私の見た映画館でもここのシーンでお喋りをしている客もいたが、それだけリアルな?出来。
次に、本作は著名戦争映画のパロディシーンも多数盛り込まれているようだ。すぐにわかるのは「プラトーン」のシーン。「ランボー」「プライベート・ライ
アン」「地獄の黙示録」のシーンもあるが、私にはここまで。情報によればこのほか、「フォレスト・ガンプ」「フルメタル・ジャケット」「レインマン」
「M:I:III」「ナッティ・プロフェッサー」もあったようだ。もう一度見直してみないとわからないかも(汗)。あと、主役はアカデミー賞を狙っている
という設定なので、過去のアカデミー賞受賞者の情
報も知っていないと面白みも半減かも(私はあまり知らない・・・汗)。
登場人物の中に、カーク・ラザラスやアルパ・チーノなんてのもいて笑える。
また、出演者名に全く登場しないが、結構主要な役で大物ハリウッド・スターが5名もカメオ出演しているらしい。かなりの部分で超目立っているのは「トッ
プ・ガン」の彼。妙なノリでダンスまで披露してくれる。このほか「フォレスト・ガンプ」の彼も出ていたが、ほかの人は見たことあるけど、私はあまり良く知
らない
(汗)。
これらのシーンは、映画通や事情通の人ならかなり面白いのでは。私は
そのあたりがちょっと疎いもので、残念ながら完全には楽しめなかった。DVDで何度
も見て探してみるのも面白いのかも。そういう意味では、万人受けするような映画ではないかな。
全般に面白いことは面白いが、結構ショッキングなシーンもあるので、そういうのが苦手な人はやめておいた方がいいだろう。個人的には戦争映画のパクリに
もう一工夫あったら面白かったのにとも思った。
(カメオ出演者 ネタバレ注意)
プロデューサー役:トム・クルーズ、ラザレスの共演者:トビー・マグワイア、トム・ハ
ンクス、ジョン・ヴォイト、ショーン・ペンなど
興奮度★★★
沈痛度★★
爽快度★★★★
感涙度★
(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
なんとも寒い救世主スター映画「スコーチャー」シリーズの主演で、落ち目のアクショ
ンスター「タグ・スピードマン」。おならを売り物にした下品な芸風映画「ファッティーズ」のコメディアン「ジェフ・ポートノイ」。演技のために皮膚の色ま
で変えて挑むやりすぎ演技派俳優でオスカー賞を5度も受賞した「カーク・ラザレス」の3名の役者に加え、ヒップ・ホップスターですでに企業家としても成功
している成金黒人「アルパ・チーノ」、唯一のオーディション採用で真面目な新人「ケヴィン・サンダスキー」を加えた5名は、雇われ監督のデミアン・コック
バーンのもと戦争映画の製作に挑む。
映画は、伝説のベトナム戦での英雄「ジョン・フォーリーフ・テイバック」軍曹の手記「トロピック・サンダー」をもとにした伝記的映画で、両手を失ったテ
イバック軍曹もアドバイザーとして参加している。だが、爆破専門家のコディは無茶で派手な火薬使用に傾倒し、アカデミー賞すら狙おうとする役者たちを監督
がうまくまとめられないことから、たったの5日間で予算を使い切りそうになる。
本国のプロデューサーのレス・グロスマンは監督をしかりつけ、萎縮した監督はテイバック軍曹から一つの提案を受ける。それは、実際のジャングルに彼らを
放り込み、遠隔装置
による爆破を仕掛け、ジャングルに設置した無数のカメラで撮影しようと言うものだ。監督は5人をジャングルに連れて行き、ある地点まで行くよう告げるが、
なんと古い地雷を踏んで死んでしまう。さらに、本物の麻薬密売組織から銃撃を受けてしまう。
やるき満々のスピードマンは、銃撃はおろか監督が死んだことすら演出だと思いこみ、一行の指揮を執ろうとする。ラザレスはおかしいと感じるも仕方なくつ
いていく。だが、地図すら読めないスピードマンはジャングルに迷い込んでいく。ラザレスは役者作りのため軍に入隊したこともあるサンダスキーに地図を読ま
せたところ、まるで違った方角に来ており、隣国の国境線近くまできていた。スピードマンはまだ演出だと思いこみ、孤高の戦士として単独行動に出る。また、
ポートノイはヤク中でヤク切れの症状を起こし始める。
スピードマンは子供ながら麻薬密売組織のドンであるトランの組織に捕まってしまう。最初は、麻薬取締局かと疑われるが、「スコーチャー」シリーズから転
身を図った感動作「シンプル・ジャック」の役者だと知り、トランはスピードマンにシンプル・ジャックの演技をやらせるようになる。そして、持っていた携帯
電話から彼のマネージャーのリック・ペックにむけて身代金要求を図る。
マネージャーはプロデューサーに相談するが、プロデューサーは全く取り合わず、非情にも命よりも映画が売れることを選択する。さらにマネージャーを高額
で買収しようとさえする。
ラザレスら4人は、スピードマンが捕まった麻薬製造キャンプを見つける。そこには爆破主任のコディとテイバックも捕まっていた。テイバックは実は偽物
で、ベトナム戦争に行ったことすらなく、手の義手も偽物だった。
4人はスピードマン救出作戦を実行することに。中国人に化けたラザレスが気を引きつける間に、アルパ・チーノとサンダスキーが潜入し、コディらを救出。
しかし、スピードマンはすっかりシンプル・ジャックになりきっており、なかなか逃げようとしない。麻薬組織との銃撃戦の中、コディの爆破の助けを借りて、
ようやく付近にあったヘリに逃げ込む。しかし、スピードマンは知り合った幼い男の子のことを思い、自分はここに残ると言い出す。しかし、現実はそんなに甘
くない。麻薬組織に追われたスピードマンは危機一髪のところで逃げることができるのだった。
この映画でスピードマンは念願のアカデミー賞を受賞するのだった。
(2008/11/28) |