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かぽんの戦争映画
一方的評論
 
「戦場でワルツを  評価★★★★ レバノン侵攻の記憶を辿るアニメーション作
WALTZ WITH BASHIR
2008
  イスラエル 監督:アリ・フォルマン
出演者:ボアズ・レイン・バスキーラ、オーリ・シヴァン ほか
90分 カラー
 
 
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 1982年のイスラエルによるレバノン侵攻を題材に、作戦に参加したアリ監督の実体験をもとに、PTSD(戦争後遺症)の記憶障害から戦友らへの取材を 通して記憶を取り戻していく様子を描くドキュメンタリー作品。ドキュメンタリー作品とはいえ、全編のほぼ全てがアニメーションによるという異色作で、 2009年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた注目作でもある。
 戦闘からまだ日も浅く、実写による映画も可能であったろうが、あえてアニメーションという手法を取ることによって、作品にこれまでにはない異様な空間と 抒情を呼び起こしている。実写では実在のリアル感が前面に出るのに対し、アニメーションでは幻想や架空の映像を作り出すことができ、登場人物の演技では演 出 できない心の奥底までを描写することができるようだ。内容的にはかなり直球のドキュメンタリーなのだが、正直空想ファンタジーを見ているかのような錯覚に 陥る。再現することが困難な戦争系のドキュメンタリーを制作する手法としては、まさに目から鱗が落ちるような成功作と言えるだろう。まあ、こんなんばかり だと 困っちゃうけど(笑)。

 1982年のレバノン侵攻はイスラエル北のレバノン南部に潜伏するPLO(パレスチナ解放機構)の排除を目的にイスラエル軍がレバノンに侵攻したもの で、本作ではそこで起きたサブラ・シャティーラの虐殺に焦点をあてて描いている。サブラ・シャティーラの虐殺はレバノン国内のキリスト教マロン派のファラ ンヘ党によるパレスチナ難民(イスラム教徒)虐殺事件で、イスラエル軍の傍観のもと行われ、国内外に大きな波紋を投げかけるとともに、イスラエル兵にとっ ても大きなトラウマになったようだ。

 主人公であり監督のアリは、レバノン侵攻作戦に従軍した記憶を失っており、このサブラ・シャティーラの虐殺の断片的記憶が甦ってきたのを期に、自身が加 担したのかどうか、事件の真相はどうだったのかを紐解いていくのだ。
 制作にあたり、4年間にわたる取材を行ったということで、本作ではアリの戦友や知人など8人の証言者が登場する。うち6名は実声による出演もしており、 アリと同行した戦友や虐殺を目撃した兵など、自身の過去を贖罪するかのように告白していく。ただし、そこにはイスラエル人としての贖罪という意味合いは薄 く、政治的・宗教的問題を正面から取り上げる企図はないようで、個々人の罪の意識と戦争への疑念を解放していくものでしかない。アラブ側からは批判的な声 もあがってはいるようだが、監督自身が言っているように、あくまでアリという個人の過去の記憶を取り戻していく物語として描かれている。従って、戦争ド キュメンタリーとして戦争の意義や背景、反戦メッセージというものを期待して見ると、若干歯切れの悪さや物足りなさを感じてしまうが、物語として見た場合 は良くできているし、一兵士のミクロ的心理という側面ではかなり秀逸な出来だと言えるだろう。特に、PTSDがどのような要因で発症し、個々人がどのよう にそれを捉え、対処しているのかという描写はかなり生々しく伝わってくる。戦争後遺症を扱った映画は数多くあるが、かなりミクロ的視点で描いた作品の部類 にはいるだろう。
 なお、ラストシーンのみに虐殺現場で悲嘆にくれる女性たちの実写映像を盛り込んでおり、幻想的な流れの中で進んできたストーリーから一瞬にして現実に引 き戻すという、大きな効果を生んだことも特筆すべき点である。 

 アニメーションではあるが、戦闘シーンはなかなか秀逸。装甲兵員輸送車やメルカバ戦車、ヘリコプターなどはリアルに描かれているし、兵員輸送車上からの 銃撃シーンや、市街地銃撃戦シーンはアニメーションにしては良くできている。また、登場人物の一人は髪の毛をふさふさに再現しての描写だそうだが(笑)、 そういったことができるのもアニメーションの醍醐味だろう。

 異色作とは言え、映画としては良くできており、十分に堪能できた。ただ、アニメーションのためにやや幻想的な色合い が強く、ドキュメンタリー的としてのリアル感が薄いという点が難点と言えば難点か。内容的には個人回想的で焦点を絞ったものであったことを考えると、実写 ではかなりショボイ作品になった可能性があり、内容の薄さから星3つくらいのところかもしれないが、アニ メーションを利用することで膨らみのある雰囲気になり、 戦争モノにアニメーション技法を活用した斬新さに星4つ(笑)。
  

興奮度★★★★
沈痛度★★★★

爽快度★★
感涙度★★

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(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 2006年の冬。イスラエルの映画監督アリ のもとへ20数年前の戦友ボアズが訪ねてくる。かつてのレバノン侵攻作戦の折番犬を26匹殺害したトラウマで毎夜犬に襲われる夢を見るというのだ。話を聞 くアリにはレバノン侵攻時の記憶がまるでないことに気づく。だが、話し終わったとき、アリに3人の戦友と共に海から上陸し、ベイルート西部でパレスチナ難 民キャンプから泣き叫んで逃げてくる女たちに遭遇した記憶が甦ってくる。アリはサブラ・シャティーラの虐殺に自身が加担したのではないかという疑念を抱き 始め、失われた記憶を取り戻そうと、戦友であり自身の精神科医であるオーリを訪ねる。オーリは記憶は作り上げられることもあるとしながらも、記憶に出てき た戦友のカルミを訪ねることを勧める。
 カルミはオランダで成功し、広大な土地を所 有していた。カルミは多くを語ろうとしなかったが、その中で初任務の際に司令船に乗せられ裸の女に抱かれる幻想の中、上陸した地点で無実の家族の乗ったベ ンツを蜂の巣にした記憶を話す。だが、アリの記憶のシーンには覚えがないと言う。
 次に、レバノン侵攻に従軍した兵からの情報 を得ることで記憶を辿ろうとする。戦車隊員だったロニーはほのぼのとした進軍の最中に突然の敵からの攻撃を受けていた。戦車は破壊され、逃げ出した他の乗 員は射殺され、彼だけが取り残された。暗い海を泳ぎ味方陣地にたどり着いたロニーだったが、仲間を見殺しにした罪悪感に苛まれ、遺族に会うのも墓参りもで きなくなっていた。だが、そこにもアリの記憶に繋がる物はなかった。
 マーシャルアーツの達人フレンケルは匂いで 自分の居場所を知らせるため、強い香水パチョリをつけた男で、アリとともに進軍した戦友だが、彼はロケット砲を構えた少年を銃撃したことを話す。その場に アリもいたはずだと言うが、アリには記憶がない。PTSDの専門家ソロモンは自己防衛のために記憶を消しているのだという。
 徐々に記憶を取り戻してきたアリは、市街戦 で著名なジャーナリストのイシャイが隠れもせず堂々と歩く姿を思い出す。さらに、膠着状態に痺れを切らしたフランケルが機関銃を手にワルツを踊るように銃 撃していた姿を思い出す。だが、あの海の記憶には繋がらない。オーリは、アリの両親がアウシュヴィッツにいたことを指摘し、虐殺に対する恐怖からアリが記 憶を消しているのではないかと言う。
 その虐殺現場にいた戦車指揮官だったハラジ から話を聞くことに。ハラジはキャンプを見下ろす地点の護衛にいたが、そこでキャンプに進軍するファラヘ党兵の姿を目撃していた。さらに、部下からキャン プ内でファラヘ党員が婦女子を虐殺しているとの報告を受け、司令部に報告するが、ハラジ自身がその現場を直接見たわけではなく、司令部は知っているとだけ の回答で黙殺する。また、一方記者のイシャイもまたイスラエル軍の幹部から虐殺の情報を得て、国防大臣シャロンに電話するが、まともな反応は得られなかっ たと言う。イシャイは難民キャンプに直接出向くが、その時にようやくイスラエル軍将軍が現場に到着しファラヘ党員に殺害を止めるよう指示する。キャンプ内 に入ったイシャイは折り重なる男や女子供の遺体を発見する。
 ようやくアリの記憶が甦ってくる。アリ自身 はキャンプの後方に所属していたが、あの日アリは虐殺現場で悲嘆に暮れる女性たちの姿を目撃していたのだった。

(2010/03/15)