戦争映画の一方的評論
 
「地獄の戦場 評価★★★ 日本軍のロケット砲に苦しむ海兵隊
HALLS OF MONTEZUMA
 1950 アメリカ 監督:ルイス・マイルストン
出演:リチャード・ウィドマーク、ウォルター・ジャック・パランス、ロバート・ワグナーほか
113分 カラー

 太平洋戦争での南方の島の攻略戦を描いた映画。島の名称や時期ははっきりと描かれていないが、日本軍がロケット砲(墳進砲と思われる)を 用いている事から、1945年2月の硫黄島決戦が題材になっていると思われる。
 映画は、島の攻略戦に参加した、ある海兵隊の小隊の出来事を描いたものである。日本軍のロケット砲に苦しむ中隊長の命令で、小隊長以下がロケット砲の在 処を探るという物だが、小隊長以下の心情の動きや苦悩を作戦遂行を通して巧妙に描いている。監督のルイス・マイルストンは「西部戦線異状なし」 の名監督。その厭戦的な人間描写は本作でも健在だが、ストーリーの全体バランスから見るとちょっと格落ちの感あり。特に、日本兵が相手だけに、日本軍の描 写のひどさを見てしまうと違和感が強すぎるのだ。
 主演は小隊長役のリチャード・ウィドマークだが、あまり存在感がない。むしろ古参軍曹役の映画「攻撃」でも異彩を放っていたジャック・パランスの方がずっ と目立っている。配役バランスという点でも今ひとつの感。若者役の役者達にしても、もう少し自己主張があってもよかったのでは。
 ちょっと変わっていた点では、冒頭のほうで「心の声」を多用している。あまり、戦争映画では見慣れない手法だが、何故か後半以降は一切出てこない。何の ためにこの手法を用いたのかは謎だ。

 登場する兵器類は、実写と記録映像、両者の合成が混じっているが、実写に関しては1950年頃の現役海兵隊の協力を得ているだけあって、 本物がたくさん出てくる。戦車はM4A3と思われるシャーマン 中戦車が多数登場し、海兵隊仕様の水中走行用排気ダクト付きもある。火炎放射器を搭載したシャーマンも出てくるが、こちらは戦時中の記録映像と思われる。 上陸戦シーンに は、駆逐艦?、上陸強襲艦とLVT3水陸両用兵員輸送車が出てくる。駆逐艦?は「282」の記号が見える。LVT3は1950年制式なので、第二次大戦時 にはないのだが、戦後間もない時期故、違和感はな い。
 航空機ではコルセアによるロケット弾、爆弾投下シーンが実写っぽい。着弾して丘陵に火の手があがるシーンはなかなか大がかりだ。記録映像としては、ヘル キャット及びアベンジャーが見える。尾翼マーキングからCV-10ヨークタウン搭載機であることがわかる。
 また、日本軍兵器としてロケット砲(九八式臼砲又は墳進砲)があることになっているが、映像としては一度も登場しない。ちなみに、九八式臼砲については 「激動の昭和史 沖縄決戦」でレプリ カだが登場している。

 
興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★
感涙度★


(以下 あらすじ ネタバレ注意)

 アメリカ海兵隊は、日本軍の立てこもるある島の攻略戦に着手した。ギルフィラン中佐率いるB中隊の小隊長アンダーソン少尉は、もともとは高校教師であ り、小隊の部下の中に多くの教え子がいる。その一人コンロイは転校生でどもり癖があり、人一倍面倒を見てやった子である 。しかし、ガダルカナルの戦い等を経て、44人の教え子のうち生き残っているのは、コフマン、コンロイら7人だけだ。
 いよいよ上陸用舟艇に乗船して出撃するにあたり、コンロイが臆病風に吹かれ始めた。しかし、アンダーソンは恐怖に勝てと諭すのだった。しかし、そのアン ダーソンとて、恐怖の余り偏頭痛を起こし、衛生伍長からもらった薬に頼るのだった。
 上陸はさほどの抵抗を受けなかった。日本兵は待避壕などに隠れて待ちかまえていたのだ。上陸を果たして近付いてくる海兵隊員に、日本軍の機関銃が一斉に 火を噴く。次々に倒れる海兵隊員。コフマンも戦死する。加えて、日本軍のロケット砲が激しく、シャーマン戦車であっても苦戦を強いられるのだった。海兵隊 はロケット砲のありそうな箇所を砲撃するも、ロケット砲は鳴りを潜めないのだった。
 日本軍のロケット砲に苦しめられ、中佐は日本兵の捕虜を取り、ロケット砲の発射基地を探る事にする。ある日本兵から洞窟にいる日本軍将校らが投降した がっているとの情報により、通訳のジョンソン軍曹を伴って、アンダーソン少尉の小隊が洞窟に出向く。
 アンダーソン少尉は罠かも知れぬと、洞窟に慎重に接近するが、そのとおり日本軍将校の銃撃で1名が負傷する。しかし、日本軍将校を倒した後、兵卒2名は 投降を希望した。息のあったマキノ大尉ら3名の日本軍捕虜を連れて帰路につくが、途中で日本の狙撃兵に出会う。坊やと呼ばれる若者は、狙撃兵を格闘の末倒 すが、気が動転して「日本兵捕虜を皆殺しにする」と騒ぎ始める。それを制止したピジョン軍曹の銃が暴発して坊やは死亡する。また、これまでアンダーソン少 尉を助けてきた衛生伍長も戦死する。
 2名の死者を出しながら帰隊し、捕虜の尋問が始まる。一向にロケット砲の在処がわからず、その上、マキノ大尉は自刃した。また、尋問の途中でノムラとい う兵卒が実はマツオダ少佐であることが判明。しかも、明治大学野球部の名選手だったという。しかし、マツオダ少佐も口は割らない。
 途方にくれる中隊だが、坊やの遺品の中から日本兵から奪ったロケット陣地を示すと思われる地図が出てくる。地形図と照合するがなかなか場所が確定できな い。その時、通訳のジョンソン軍曹がマキノ大尉の言葉を思い出す。「日本人は逆転の発想だ。」丘の後方だとばかり思っていた陣地が、前方にあるのではない かと考え、地図と照合すると一致する場所がわかった。
 しかし、その間のロケット砲撃によりコンロイが戦死。ショックを隠せないアンダーソン少尉だったが、衛生伍長の遺言を聞き、再び戦う意志を持つ。
 海兵隊は日本陣地に向けて総攻撃をかける。上空にはコルセア戦闘機によるロケット陣地攻撃がなされ、間一髪でロケット砲からの攻撃を回避できたのであっ た。

 (2005/06/01)

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